第六話!いざ冒険へ!
カキィン!!カキィン!!
二つの剣が火花を散らしながら切り合う。力は均衡している。不意に、ジャンの片方の大腿に刃が向くが、素早く薙ぎ払われる。
ジャンはいつの間に父親とここまで戦えるようになったんだろう。アレンはただただ感心していた。
ギリギリギリ……
刃が十文字に合わさり、競り合う。二人の体が前後に反っている。これはただの力比べになるか。そう思った瞬間。
剣への力を抜いたジャンは、バランスを崩したジャンの父親の後ろに回り込み、刃を首元に当てた。
「勝負あり!」
マリーの声が競技場に響く。ジャンは、肩で息をしながら、剣を投げ出し地に座り込んだ。ジャンの父親は全身汗でびっしょりだ。
「俺も歳かな。子供に負けるようになるなんて」
そんな父親を見上げて、ジャンはにっと笑う。
「これで、冒険に出てもいいよな!!約束は守ってもらうぞ、父ちゃん」
「はぁ……俺を超えるなんて……まさか」
ジャンの父親は動揺しきっている。確かに、こんなあっさり負けるなんて、アレンも思いもよらなかった。ジャンの体格の良さと判断の速さが勝因か。それにしても、強い。アレンなどでは相手にすらならないだろう。
「ジャンには家にいてもらいたいなー。冒険なんて何のメリットもないし」
マリーは眉をハの字にしてしょんぼりしている。
「ちょっと旅に出てくるだけだって。金なくなったら戻ってくるよ」
ジャンはマリーの頭を撫でる。そう、ジャンとジャンの父親の間では1年限りの旅という約束だ。しかし、アレンは密かに期間を延ばしたいと願っていた。国境の越え方も分かっておらず、魔法も剣術も未熟なのに、なんて身勝手なのだろう。
でも、母親に会いたいという強い願いがそこにあった。
アレンの祖父も、最初は断固反対だった。しかし、祖父は自責の念に四六時中囚われてもいた。
(祖父が、アレンの母親が魔法民族だと知ったのも、アレンの父親が殺されたあとだ。
アレンの母親の不審さにわしが早く気づいていれば、アレンは……)
ある日の朝。
「これは、店に置いてあった剣だ。持っていけ」
祖父が差し出したそれは、前にジャンが欲しがっていた剣だ。
「いいのか、じいちゃん。俺が旅に出ても……!」
祖父は、アレンのことを見ながら、くしゃっとした笑顔をした。……いつもより悲しそうな顔で。
「アレンの願いは、わしのせいでもあるんだ。止めても仕方あるまい」
「じいちゃん……!!」
祖父はアレンを抱きしめた。
「無事でな……」
結構短い連載になるかもしれません。よろしくお願いいたします。
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