第五話!迷コンビ!
「……冒険に出ようかな」
食卓で、皆のスープを飲む手が止まる。視線はアレン一人に注がれた。
「げほっ、アレン、何を言い出すんだ、ごほっごほっ」
アレンの祖父はスープにむせながら涙目になっている。
「何言ってんだ。前俺のことバカにしてたっつーのに」
ジャンは目を白黒させている。
マリーとジャンの父親はきょとんとしてアレンを眺めるだけだ。
日頃冷静沈着で、考えなしには発言しないアレンなだけに、意外な言葉だったのである。
「……ごめん、何でもない」
アレンは表情を変えずに訂正する。しかし、皆、アレンの謎めいた気配を感じ取っていた。
薄暗く細い路地裏で、紙くずを放り投げる。
「ダス ペトリ ジャーナ」
炎が空中に燃え上がり、紙くずは、一瞬で炭となる。アレンは、その消し炭を手に取る。
「……はぁ。50回目でやっと燃えた」
まだ、安定させることもできず、魔力も弱い。天候を変えることができたのはあの一度きりだ。確かめてみてわかったのはそれだけである。
だが、微力でも魔法がつかえることは確かだった。
やはり、俺は魔法民族の血が入っている。
でも、剣の民族でもある。腰のさやにある、祖父にもらった短剣をひとなでし、考えを巡らせる。
「アレン、こんなとこで何やってんだよ!」
「ジャン」
アレンは、手にしていた消し炭を急いで床に落とし、踏み潰して粉々にする。
「何でもない」
ジャンはアレンの顔を覗き込む。
「お前、変だぞ?学校でも上の空だし。第一冒険に出ようなんてさー」
「……馬鹿らしいよな。何の得策もないのに」
アレンは暗い表情で俯く。
「やっぱり変だ。何かあったら言ってみろ!!」
さすがに、言えない。自分でさえ16年間知らずに過ごしてきたことだし、魔法民族を特に敵対視するジャンの前では。
「……なんとなく冒険したくなってさ」
後ろめたさを感じながら、アレンはごまかし笑いをする。それに気づかず、ジャンは笑い出す。
「やっぱりお前も?朝食の時は驚いたけど、そう思うよなー。頭で考えてても体がうずうずするよな!!冒険に出たいって!!」
アレンは、ほっと胸を撫で下ろす。
「だよな」
「じゃ、武器揃えないと!!外には獣がいっぱいいるんだって本で読んだし!」
「本気かよ」
眉をひそめるアレンを見て、ジャンは口をあんぐり開ける。
「本気じゃなかったらなんなんだ?」
「いやただの若気の至りじゃないの」
「じじいくせー!!」
ジャンは臭い臭いと手を払って、真剣な表情になる。
「まずは親の許可だな!」
「……本気かよ」
アレンは、ジャンの考えのなさに半分驚きながら、半分その実行力に圧倒されるのであった。
考えすぎ&考えなさすぎ。そんなコンビで突き進みます。親の反対をもろともせず、冒険に出ることは叶うのか!?冒険にはどんな困難が待っているのか!?そもそも冒険に出たとしても、国境の壁を越えられるのか!?待て次号!!ですね。