新しい始まり・・・・・となるか?
琴音さんがひたすら恥ずかしがる話でございます。なんかすいません。
「おッ……おは……よう」
と言いつつ、僕は玄関から出てきた結季に声をかけた。僕がいることを認識したとたん顔を赤くさせる結季を見て、こっちもわずかに顔が赤くなる。恥ずかしい。ただひたすらに、恥ずかしい。高校生のくせして何を初な純情初恋ラブコメみたいな真似をしているんだ。
初恋という点だけ、間違っているわけではないのだけれど。
そう――――昨日の話。どうしても結季に想いを伝えたくて、けれど結季は僕が結季のことを好きだという、それすら忘れてしまっているだろうと思っていたから、とてもじゃないけど、言えなかった。
近いのに、遠すぎた。向こうからすれば、一番仲のいい女友達位にしか感じていないのだろうと、僕が一方的に、そう考えていた。結季は僕に対して「友達」というある種の行為を持っていたのだろうと思うし、それは僕だって分かっていた。お互いの思っている互いの距離が一致しないまま、過ごしてきたのだ。
と――――そう思っていた。
昨日までは。なぜか結季から告白されてしまう、昨日の夜までは。
嬉しくなかったと言ったら、それは明らかに嘘になる。僕は確かに嬉しかった。だから、ありがとう、なんて言ってしまったのだろう。
言ってよかった、と、今なら思えるけれど。
「琴音、どうした?」
ふと気がつくと、真剣な目でこちらを覗きこむ結季の顔が見える。
「いや……なんでもない。気にしないでくれ」
「そ、そうか……? ――――じゃ、行こうか」
「うん」
流石に、まだ、手を繋ぐ……とかは無理だ。とてもじゃないけど、無理だ。僕にはできっこない。高校生というだけあって、手を繋ぐどころか腕をくんで学校に来ている人も、いるといえばまぁいるけれど、それはあくまで恋人公認の場合のみだ。いきなり僕と結季が腕をくんで学校に来ようものなら、結季ファンが卒倒する。僕が彼女たちから何の接触(もちろんいい意味ではなく)がないのは、僕が結季に異性扱いされてこなかったからだ、と思う。
だから万が一にでも結季が手を繋ぎたいとかそういう類のことを言ってくるのであれば、僕は辞退しなければならない……のかもしれない。今後の平穏のために、そうしなくてはならないのだろう、と思っている。
ただし、せめて話すことくらいはいつもと違うことがいい。ベタ甘な会話をしたいわけではない、断じて。けれど、何だろう……いつも僕たちがしているのは大体とりとめもないくだらない会話だから、今日こそは、何か中身のある会話をしたいと思うのが道理ではないだろうか……?
「……今日は、静かだな」
「え!? あ、いや、まあ、だって、さ……。な、何言っていいかわからないだろう……。恋人らしい会話って、何だろう、ってずっと考えたんだけど」
「恋人らしい会話か……え? ていうか、琴音はクラスのみんなとかに恋人宣言したいのか?」
「ち、違う!! そ、そういう意味で言ったんじゃない! ただ、いつもと同じような会話ってどうなんだろうなとか思っただけで!」
「んー……じゃあ手でも繋ぐか」
来た――――――――――――!
え、ちょ、無理無理無理! 僕の恋愛偏差がどれくらいだと思ってるんだ! 君は様々な女の子にアタックされてきただろうから別段問題はないだろうけど、僕にとってはそれすら一大事なんだぞ! 天地を揺るがすほどの大事件なんだぞ!
と、何やら葛藤はあるものの。
嬉しいものはうれしく、恥ずかしながら―――――うん、と答えてしまうのである。
「え? 嘘! え? ていうか、え? いいの!?」
「結季から言ったんだろう!? 僕だって恥ずかしいんだよわかれよ!」
「わかるか! そんな平然とされて俺が理解できるとでも思っているのか!」
「平然としているのはどっちだ! 長々と考えていた僕が馬鹿みたいじゃないか!」
「あーもう、煩いなぁ!」
と言って――――結季は乱暴に、だけれど確かに、僕の手を握った。
「ッ!」
心臓が跳ね上がる。熱い。耐えきれないくらいに、体温が上昇していく。
これは―――――相当恥ずかしい。
だけど、やっぱり、思った通り、嬉しかった。
半年以上更新してません、ですって。
いやー、遅くなりました。
待っていて下さった人がいるのならば、お待たせいたしました。