苦悶
今回は琴音ターンです。
悩んで悩んで悩みまくってます。
へぇー、知らなかったなぁー、結季にはー、好きな人がいるんだー…………はははー………
………
………………………なんて。
笑おうとしても、笑いきれないよな、これは。
知りたくなんてなかった。
窓を閉めた後、泣き出しそうになって手の甲を目に当てて自業自得、と呟いた。
そうだ。僕があの時結季の見ていた掲示板が恋愛掲示板だと分かった時点で、どうして別の話題に移そうとしなかったのか。僕のこの口なら、話題を逸らすことも難くはなかっただろう。
僕は、結季に知ってほしかったのだろうか。
君のことが好きなんだ、と。
冗談じゃなくて。
何かの間違いでもなくて。
中学校の時から、ずっと、大好きなんだよ――と。
言ったら少しは楽になるんだろうか。
楽になるために告白するわけではないのに……でも、結季にこの思いが伝われば………。あの時みたいに曖昧なままどこかに立ち去ってしまうなんてもうしたくない。
僕は逃げたんだ。
自分から告白しておいて、怖いからという理由で僕は答えを受け取るのを拒んだ。
結季は、僕のことが嫌いなのだろうか。
逃げた僕を、情けないと罵るのだろうか。
僕はこんなに辛いのに……彼は、僕のことをただの腐れ縁、友人としか思っていないだろう。それでいいはずなのに、今のこの状況を変えたいと思ってる僕も確かに存在していて、僕は僕のしたいことがなんなのか全く分からない。
「でも………やっぱり、ちゃんと伝えたいよ、結季ぃ………」
もういっそのこと今この瞬間伝えてしまおうか、とも思う。相手の部屋の窓まで約三十センチ。手を伸ばせば届く距離で、窓を叩くのは容易い。
腕を伸ばして、ベッドに転がったまま窓を開けようと鍵に手を伸ばした。
――――怖い。
振られたら――それこそ僕はもう終わってしまう。
空虚。空っぽ。何もなくて、ただ、真っ白――或いは、真っ黒。
そしたらきっと僕は結季を憎んでしまうだろう。
好きすぎて憎んでしまう。
ずっと一緒にいてくれないと、いやだ。
「…………これが巷で流行りのヤンデレ、というやつなのか……?」
ひとりごちるも、答えてくれる人はどこにも存在しない。
僕にはもう何もなくなってしまったみたいで、鳥肌が立った。
誰かと………いや、誰かじゃ嫌だ。結季と話したい。この思いを伝えるためではなく……なんとかして気持ちを紛らわせるために。
好きだという気持ちを紛らわせるために、好きな人と世間話をしようとしている。
大した皮肉だよな、と自嘲。
伸ばしかけた手を鍵までとどかせ、窓をがらりと開ける。
そして僕は絶句した。
「やあ……うん、奇遇だ……ね」
結季がいた。
といっても向こうの部屋の窓から覗いていただけなのだけれど………
彼の手は今さっき窓を開けたような場所にはなかった。
つまりどういうことかというと、
ずっと窓を開けて――――――僕の部屋を見ていたということだ。
どうして、どうして。
ずっと僕の部屋を見つめていたんだい?
言いたいことがあったのか?
生まれた時からの仲なんだぞ、言いたいことがあるなら言ってよ。
君は一体何を考えているんだい?
どういうことなのか、僕には何もわからないよ、結季――――――――――――
0.5歩くらいは前進しましたかね。
気付かないんですよねえ、こいつら。
お互いに鈍いんでしょうか。
それともお互いにさとすぎて奥の奥まで考えようとしてしまうのか。
私にもわからん………