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ボッカ監督の異世界インフラ革命 〜古代遺跡を修理していたら物流が大陸を支配しました〜  作者: コケグマ


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職人の誓い、鉄の連帯

中継拠点の防衛ハッチの向こう側から響いていた守護機兵の悲鳴が、ぷつりと途絶えた。

代わりに取り残されたのは、深淵の脈動が空気を震わせる不気味な低音と、拠点の古びた換気扇が回る乾いた音だけだった。


「……。ロジ、報告をまとめろ。現状はどうなってる」


ボッカの問いに、ロジのホログラムが空間に複数のウィンドウを展開した。


「……。報告。地上および中層管理区画への定期連絡は完了しました。プラント全域のマナ循環率、平時の二パーセント以下。最下層に位置する『心臓』が全エネルギーを強奪しています。……。このままではあと七十二時間で、地上の居住区を含むすべてのインフラが沈黙します」


「三日、か。……思ったより短けえな」


ボッカが吐き捨てた言葉に、テオとガッシュが肩を跳ねさせた。


「三日……!? 師匠、そんなの無理っスよ! あんな化け物がいる場所、あと三日でどうにかするなんて……っ。僕たちには、むりっすよぉ……」


テオが震える手で端末を抱きしめ、叫ぶように言う。ガッシュもまた、ハンマーを握りしめたまま、ガタガタと震える膝を必死に抑えつけていた。


「……。あのムカデ野郎だって逃げ出すような場所なんだ……正直、怖くて逃げ出したいぜ。けど、けどよ、俺たちは親方を支えるって決めたんだ。……。こんな、ガタガタ震えてる俺でも、親方の役に立てるのか? 足手まといにならない方法が、何かあるのかよ……!」


ガッシュの瞳には、剥き出しの恐怖と、それを上回ろうとする必死な忠誠心が混ざり合っていた。

ボッカはゆっくりと二人に近づき、その視線の高さに合わせるように腰を落とした。


「……。テオ、ガッシュ。よく聞け。……。怖いのは当たり前だ。あんなもん、俺だって見たくねえ」


ボッカの意外な言葉に、二人が顔を上げる。


「だけどよ。……。あそこにあるのは『詰まり』だ。原因がわかってて、道具がある。なら、通すのが職人の仕事だ。……。いいか、俺一人じゃあ、あいつをブチ抜く馬力は出せねえ」


ボッカは二人の肩に、大きな、油に汚れた手を置いた。


「テオ。お前の計算とロジの知識がなきゃ、俺は暗闇の中で迷子だ。ガッシュ。お前の若さと、その震えを抑えて振るうハンマーがなきゃ、俺のアームだけじゃあ、あの硬い殻は割れねえ。……。俺に任せておけ。お前らの命は、俺が絶対に預かってやる。その代わり、俺に力を貸せ。……。これは『工事』だ。三人でやるんだよ」


ボッカの静かだが力強い言葉が、凍りついた二人の心に熱を注ぎ込む。


「……。師匠。……。僕の計算、必要っスか?」


「ああ。コンマ一ミリの誤差も許さねえ現場になる」


「親方……。俺のハンマー、役に立つか? ……。……やってやる、やってやるぜ! 親方を支えるって言ったのは、俺なんだからよッ!」


ガッシュが鼻をすすり、震える手でハンマーの柄を力一杯叩いた。テオもまた、眼鏡を押し上げ、レンズの奥に灯った小さな光をボッカに向けた。


「……。よし。ロジ、作業分担を指示しろ。……。今からこの拠点を『現場事務所』に変える」


「了解しました、マスター。……。テオ、貴方は私と同期し、下層の構造解析と、先輩のエネルギー効率を最適化するパスを構築してください。……。ガッシュ、貴方はマスターと共に、先輩の物理装甲の強化と、高硬度岩盤貫通用の超硬ビットの研磨・換装を開始。……。制限時間は四十八時間。残りの二十四時間を、突入と解体に充てます」


「合点だ、親方! 見てな、最高にピカピカにしてやるからよッ!」


ガッシュが声を荒らげ、資材置き場へと走り出した。


「ロジさん、僕もやるっス! システムのオーバーロード対策、僕が組んでみせるっス!」


テオもまた、ロジのホログラムの隣で必死に指を動かし始める。

恐怖を気合で塗りつぶしたガッシュの背中と、懸命に画面にかじりつくテオの横顔。ボッカはその光景を静かに見つめた後、最後の一発のカプセルをランプに透かして、その奥に眠るマナの光を睨んだ。


暗闇の底で脈打つ「心臓」。それを止めるための、命懸けの突入準備が始まった。


「……。ロジ。……。全員、生かして帰す。……。その上で現場を完璧に仕上げて、上の街で震えてる連中を心底安心させてやる。……。それがこの現場の、第一条件だ」


「肯定。マスター。……。最高の竣工しゅんこう報告を街へ届けましょう。……。作業、開始します」


火花が激しく散り、鉄を叩く重厚な音が拠点内に響き渡る。

ただ生き残るためではない。完璧なインフラを復旧させ、人々に光を戻すために。

三人と一体の、深淵への挑戦が、ここに幕を開けた。

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