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ボッカ監督の異世界インフラ革命 〜古代遺跡を修理していたら物流が大陸を支配しました〜  作者: コケグマ


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大動脈(トンネル)更生工事:不法投棄物(モンスター)の分別

「……よし、テオ! 親方が戻ってくるまでに、この浴場を最高の状態にしてやろうぜ!」


ガッシュが力強く拳を握ると、テオも弾かれたように立ち上がった。あの日、泥だらけで自分たちを救ってくれた親方の背中を追いかけるために。二人は授かったマルチツールを手に、やる気いっぱいに浴場の改良へと駆け出した。


一方、村の端。朝日に照らされたボッカは、新生した「先輩(ゴーレム04)」の傍らに立ち、その巨大な脚部ハッチを開いて調整を行っていた。


「ロジ、各部トルク、マナ伝達率の最終確認。……シンクロ率、30%で固定。俺の意識を全部持っていかれるなよ」


『了解です、マスター。……「マナ・シンクロ」起動。これより、あなたの感覚と04の挙動をリンクさせます』


次の瞬間、ボッカの脊髄に熱い電流が走った。視界が急激に広がり、自分の足が地面を掴む感触、左肩の合金が軋む音、そして指先が風を切る感覚までもが、実感を伴って伝わってくる。


「……すげえな。重機を操縦してるんじゃねえ。……俺が『重機そのもの』になった気分だぜ」


ボッカは「先輩」の巨大な拳を握り、開き、そして力強く地面を叩いた。


ドォォォォン……ッ!!


かつての鈍重さは微塵もない。雷鳴のような駆動音と共に、新生・先輩が立ち上がる。


「よし、本着工だ! ターゲットは地下トンネル! 1200年分の不法投棄物を、一掃するぞ!!」


ボッカと先輩は、再び地下へと続くハッチを潜り、あの巨大なトンネルへと足を踏み入れた。昨日スキャンした通り、そこには「廃棄ゴーレム」や「魔導のオリ」から生まれた魔物たちが、文字通りの『産業廃棄物』として積み重なっている。


「ロジ、スキャナー展開。……まずは、崩落の危険がある『クラック(ひび割れ)』を特定しろ」


『了解。……前方30メートル、天井部の支保工しほこうが劣化。……その陰に、大型の「廃材喰らい(ジャンク・イーター)」が3体潜伏中。……排除を推奨します』


「排除じゃねえ。……『撤去』だ。先輩、出番だぜ!」


ボッカの意志を受け、先輩が猛然とダッシュした。かつてのゴーレムならあり得ない加速。巨体が空気を切り裂き、魔物の懐へ飛び込む。


「まずは、お前からだ!」


ボッカが空手で「正拳突き」を放つ動作をすると、先輩の巨大な鋼鉄の拳が、魔物の硬い装甲を紙細工のようにぶち抜いた。さらに、左肩の形状記憶合金がしなやかに唸り、返しの裏拳で残りの2体を一掃する。

だが、ボッカの狙いは「倒すこと」そのものではない。


「ロジ、カプセル一個使用! 『超硬質コンクリート・プラグ』を生成! あの天井のヒビにぶち込め!」

先輩の手のひらから、カプセルの光を纏った高強度の充填材が放たれる。魔物を粉砕した直後の勢いを利用し、ボッカは崩落しかけていた天井の急所へ、正確に補強材を叩き込んだ。


シュガァァァァ!


と、魔法の建材が隙間に入り込み、一瞬で硬化する。バラバラと落ちていたガレキが止まり、不気味な軋み音を立てていたトンネルが、劇的な静寂を取り戻した。


「……よし、スパン1の補強完了。次はあそこの土砂の山だ。……先輩、バケット・モード。一気に外へ放り出すぞ!」


ボッカの動きに呼応し、先輩の指先が複雑に変形、巨大な「排土バケット」を形成する。1200年間、誰も手を付けられなかった「地下の大動脈」が、職人の技術と、蘇った伝説の重機によって、猛烈なスピードで『更生リノベーション』されていく。


「見てろよ、ガッシュ、テオ。……これが、世界を『直す』プロの仕事ってやつだ」


独りごちたボッカの視線の先で、新生・先輩の放つ青白い光が、1200年ぶりの「開通」へ向けて力強く闇を切り拓いていた。


数時間の猛烈な作業の末、トンネルを塞いでいた「産廃」と「土砂」は一掃され、構造的な不安要素であった天井のクラックもカプセルによる補強で沈黙した。


「……ロジ。空気質、およびマナ濃度。……ガキ共を降ろしても安全か?」


『スキャン完了。……有害な障気は完全に排出されました。構造的安定性、98%。……。――マスター、彼らを呼ぶのであれば、今が最適の「教育タイミング」です』


「よし。……あいつら、風呂掃除(改装)に夢中だろうが、一回呼びに行ってこっちも手伝わせるか」


ボッカは一度「先輩」を待機モードに切り替えると、地上へと続く長い階段を駆け上がった。

広場では、ガッシュとテオが汗だくになりながら浴場の点検を終えたところだった。


「おら、ガキ共! 風呂掃除は終わったか? 終わったなら次の現場だ。道具持ってついてこい!」


親方の声に、二人は顔を見合わせた。

「えっ、もうトンネルの掃除が終わったんですかい!?」

「いいから来い。……自分の目で見た方が早い」


半信半疑のまま、二人は昨日も足を踏み入れた「あのトンネル」へと降りていった。しかし、一歩足を踏み入れた瞬間、二人はその場で絶句した。

昨日までガレキが積み上がり、不気味な魔物の気配に満ちていた「死の穴」が、今は先輩の照明に照らされ、真っ直ぐな、そして強固な「道」へと変貌していたからだ。


「……うそだろ。昨日と全然違うじゃねぇか……」

「師匠……これ、本当に僕たちが昨日見たあのトンネルなんすか?」


「見惚れてる暇があるなら手を動かせ。……重機でできるのは『荒仕事』までだ。ここからは人間の手がいる」

ボッカは先輩の足元に置いたコンテナから、新しい「道具」を二人に渡した。カプセルで出力した、高輝度の「路面マーカー(測量杭)」と、壁面の汚れを焼き落とす「小型魔導バーナー」だ。


「ガッシュ。お前は壁のすすを焼き落として、隠れてる『維持管理用の文字マーキング』を読み取れ。テオ。お前はマーカーを等間隔で打ち込んで、未来の『物流のライン』を引け。……これが終わらなきゃ、ここはただの穴だ。『道』にするのは、お前らだ」


「……『道』にするのは、俺たち……」


二人の瞳に、宿題を終えたばかりの子供の顔ではなく、現場を任された「職人の卵」としての鋭い色が宿った。昨日見た絶望の光景が、親方の手によって「希望の現場」に変わったことを肌で感じたからこそ、その言葉が重く響く。


「「はい!!」」


ボッカは二人の作業を見守りながら、自らは先輩のコックピットに再び腰を下ろした。

1200年前の「大動脈」が、今、三人の鼓動を乗せて再び脈打ち始めていた。


ボッカが地面に足をつけて指揮を執ることで、より「現場のリアリティ」が増しました。

先輩は「乗り物」ではなく、ボッカの意志を体現する「巨大な相棒」。この二人三脚(と二人の弟子)で、トンネルの最深部へと挑みます。


次回、第26話「開通の産声:トンネルを抜けた先の『光』」


ついにトンネルの向こう側、未知の領域へと到達します。

どうぞ、ご安全に!

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