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ボッカ監督の異世界インフラ革命 〜古代遺跡を修理していたら物流が大陸を支配しました〜  作者: コケグマ


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再起動の咆哮(ほうこう)

朝靄あさもやが村を包む中、ボッカは宿舎の裏でカプセルホルダーを指先で弾いた。


昨夜の「上下水道完備」と「大浴場の設置」によって、村人の表情は劇的に明るくなった。その「幸福度の向上」がロジを通じてシステムにフィードバックされ、カプセルは一段階上のランクDへと昇格している。


『マスター。カプセル3個、フルチャージ完了。……ランクDへの昇格により、マナの出力密度が向上。……。――さらに、私の演算系を介した「マナ・シンクロ」の帯域が拡張されました。これにより、大型重機との感覚共有がよりスムーズになります』


「よし。……昨日はひび割れた一個で苦労したが、今日は『弾』に余裕があるな」


ボッカが伸びをしながら広場へ向かうと、そこには既にガッシュとテオ、そして数人の村人たちが集まっていた。


「おう、親方! おはようございまーっす!」

「見てください、師匠! 昨日の夜、みんなでこれを作ったっス!」


二人が誇らしげに指差したのは、浴場の周囲を囲う立派な「目隠しの垣根」だった。

昨夜、ボッカが宿で深い眠りについている間、一度は家に帰ったガッシュとテオだったが、「やっぱり、あのままじゃ女性たちが入りにくい」と思い立ち、村人たちに声をかけて即席の工事を行ったのだという。

ボッカは垣根に歩み寄り、その出来栄えをじっと検分した。


「……カプセルも使わず、あり合わせの木材と縄だけでこれか。……作りはまだ甘いし、縄の結びも素人仕事だがな」

ボッカは一度言葉を切ると、二人の顔を見てニッと笑った。


「だが、よくやった。……現場で一番大事なのは、言われたことだけやる『作業』じゃねえ。使う奴の立場になって考える『工夫』だ。……昨日の飯といい、この垣根といい、お前らはいい『職人』になり始めてるぜ」


「お、親方……! ありがてぇ、恩に着るぜ!」

「師匠……! ありがとうございますっス……!」


「……さて。村の心配がなくなったなら、本番といこうじゃねえか。ガッシュ、テオ! お前らはここでさらに浴場の使い勝手を良くする方法を考えておけ。……俺は『先輩』のところへ行く」


ボッカは二人のやる気を受け取ると、そのまま村の端、朝日を浴びて静止する「先輩(ゴーレム04)」の前へと足を向けた。

昨夜、地下から決死の思いで持ち帰ったコンテナを地面に下ろし、中から古代の特殊工具を整然と並べていく。朝の冷たい空気が、これから始まる「1200年目の心臓手術」への集中力を研ぎ澄ませていく。


「さて、ロジ。……先輩の『心臓』を入れ替えるぞ。シンクロ設定、最大」


『了解。……マナ・パス接続。……マスター、開始してください』


ボッカはまず、愛用のバールで先輩の胸部中央、ひどく歪んでいた外装ハッチを慎重にこじ開けた。


「……ひでえな。すすがこびりついて、マナの流路が詰まってやがる」


そこには、1200年前の「焦げた魔導回路」が凝固し、どす黒い塊となって中枢ユニットを覆っていた。ボッカは「マナ・テスター」を回路の端に当て、流路の生死を確認する。針は弱々しく振れるだけで、今にも止まりそうだ。


ボッカは精密ドライバーを手に取ると、外科医のような手つきでその「腫瘍」を切り離し始めた。


「ロジ、第4回路の電位を維持しろ。バックアップなしでここを切ると、先輩の記憶が飛ぶぞ」


『了解。……エネルギーを予備タンクからバイパス。……15秒間、安定します』

「十分だ!」


パチン、という乾いた音と共に、ドロドロに溶けた古い基板がパージ(除去)された。

次にボッカは、コンテナから黄金色に輝く新品の**【高密度制御基板メインボード】**を取り出した。


「カプセル、1個消費。……極細金線ナノ・ワイヤーを生成。素材は黒鉄木の炭素繊維で補強しろ」

カプセルの光から生まれたのは、髪の毛の十分の一ほども細い、黄金の導線だった。ボッカは拡大鏡を覗き込み、数千本に及ぶ回路の一本一本を、新基板の端子へと繋ぎ直していく。


「……ここだ。呼吸マナの波長を合わせろ。……よし、噛み合った」


ボッカの指先は、岩石ゴーレムを解体した時とは別人のように繊細だった。少しでも震えれば短絡ショートし、基板が灰になる。


さらに、地下で剥ぎ取ってきた「形状記憶合金」に関しても一切の妥協はなかった。


ボッカは先輩の左肩、摩耗して金属疲労を起こしていた関節部にその合金をあてがうと、小型の魔導トーチで加熱した。


「おらよ、1200年前のパーツだ。馴染んでこい!」


キンッ、キンッ、と特殊ハンマーで叩き込むと、合金はまるで意志を持っているかのように、先輩の肩の複雑な溝へと滑り込み、一体化していった。

仕上げは、頭部ユニットへの【高精度マナ・スキャナー】の直結だ。

ボッカが最後のコネクタをカチリとはめ込んだ瞬間、ロジを介した「先輩の全感覚」が、ボッカの脳内へと濁流のように流れ込んできた。


(……!!)


視覚だけではない。先輩の足裏が踏みしめる大地の振動、関節が受ける重力、大気中のマナの濃度。それらすべてが、ボッカ自身の肉体の感覚として「受肉」する。


「……ロジ、全システム同期完了! 1200年分の垢を、一気に吹き飛ばすぞ! 再起動リブート!」


ズゥゥゥゥゥゥン……ッ!!


その瞬間、先輩の全身の隙間から、澄み切った青白い光の奔流が溢れ出した。


「グォォォォォォ……ン!」


という駆動音が、地響きを伴う生命の咆哮のように響き渡る。

昨日までの「錆びついた機械」ではない。そこに立つのは、1200年の眠りから目覚め、現代の技術と職人の魂でレストアされた「伝説の重機」だった。

先輩は、かつてないほど滑らかに、まるで「意志」を持っているかのような動作で片膝をつくと、ボッカの前にその巨大な右拳を差し出した。


「……お待たせ、先輩。……いい顔になったじゃねえか」

ボッカはその大きな拳に、自分の拳をコツンと合わせた。


「よし、本着工だ! ターゲットは地下トンネル! 1200年分の不法投棄物を、一掃するぞ!!」

本編をお読みいただきありがとうございます!

今回は「修理」という名の「命の吹き込み」に全力を注ぎました。

焦げた回路を切り離し、数千本の線を繋ぎ直すボッカの指先。単なる作業ではなく、道具への愛と職人の意地が伝わっていれば幸いです。

そしてついに、ボッカと「シンクロ」した先輩が覚醒しました。

「腕を動かすように重機を操る」――この人機一体の力が、魔窟と化したトンネルをどう変えていくのか。


次回は弟子2人の目線でお話をお届けします!


重機土木の真骨頂はいつみれるのか!?

どうぞ、ご安全に!

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