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ボッカ監督の異世界インフラ革命 〜古代遺跡を修理していたら物流が大陸を支配しました〜  作者: コケグマ


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22/40

職人の食卓、親父の背中

広場に置かれた大鍋から、銀嶺茸の芳醇な香りと岩清水蟹の濃厚な出汁の匂いが立ち上る。


「師匠、見てください! いただいたマルチツールの『スライサー』、キノコの薄切りも一瞬だったっスよ!」


「蟹の殻剥きも、このペンチがありゃあ楽勝だぜ、親方!」


ガッシュとテオが、ボッカから贈られた道具を誇らしげに使いこなし、村人たちと大皿を囲む。ボッカは村の老婆から手渡された木杯の酒を煽り、キノコを口に運んだ。


「……ふん。道具に使われなきゃ、まずは合格だ」

賑やかな宴の中、ふとした拍子に家族の話題になった。


「お前ら、親はどうした。こんなに筋がいいんだ、どっかの職人の倅か?」

ボッカの何気ない問いに、二人の手が止まった。


「……数年前の飢饉のときだぜ」

ガッシュが視線を落とす。

「村を襲った魔物の群れから、俺たちを逃がそうとして……。それきりだ」


「僕の親も、同じ時だったっス……。だから、この村のみんなが家族みたいなもんなんスよ」


テオが寂しげに笑う。村人たちがそっと二人の肩に手を置く。

ボッカは黙って酒を飲み干した。ロジから共有された1200年前の工事記録にも、災害で身寄りをなくした職人たちの膨大なデータがあった。いつの時代も、現場を襲う理不尽は変わらない。

ボッカは空になった木杯を置き、二人の頭に大きな掌を乗せた。

「……そうか。現場じゃあな、親がいねえ奴は珍しくねえ。だが、独りで現場に立つのはまだ早い。……俺がテメエらの『現場の親父』になってやる」


「親方……」

「師匠……」


「その代わり、現場の親父は口うるさいぞ。安全をおろそかにしたり、道具を泣かせるような真似をしたら、その日は飯抜きだ。……いいな、自分の身体と道具を大事にできねえ奴は、一人前とは呼ばねえ。……分かったか!」

「「はいっ!! 」」


二人の返事が、夜の空に力強く響いた。ボッカは不器用な愛を厳しさに隠し、立ち上がった。


「よし、飯はここまでだ。お前ら、今日はしっかり風呂に入って温まってこい。筋肉の疲れを明日に残すのは二流のやることだぞ」


ボッカの言葉に、ガッシュとテオは「はい!」と元気よく答え、新しいマルチツールを大切に抱えて銭湯へと向かった。親方から「家族」として、そして「弟子」として認められた喜びが、二人の背中から溢れている。


ボッカもまた、一人静かに湯船に浸かり、心地よい疲労感の中で明日の工程を頭に描いた。


宿に戻ったボッカは、薄暗いランプの光の下で、横になりながらロジを起動した。


「ロジ、明日の『先輩』の修理工程を整理するぞ。まずは胸部装甲の開放からだ……」


『了解しました、マスター。……。

第1工程:既存の劣化した制御基板の抽出。


第2工程:新品の魔導制御中枢への換装とマナ・パスの同期。


第3工程:地下で採取した合金を用いた関節部の補強。……現在のリソースで、成功率は98%と算出されます』


「残り2%は、俺の手加減次第ってことだな。……よし、明日は朝イチから一気に叩き込む。寝るぞ」

ボッカは短く息を吐くと、目を閉じた。ロジが周囲の警戒モードに移行し、ボッカは職人特有の、深く、密度の濃い眠りに落ちていった。

本編をお読みいただきありがとうございます!

今回は「現場の夜」をじっくりと描きました。

ボッカがガッシュとテオの過去を知り、不器用ながらも「現場の親父」として二人を包み込むシーン。ただの師弟関係を超え、一つの「家族チーム」としての絆が結ばれた瞬間です。

そして、眠りにつくボッカの傍らで淡々と工程を管理するロジ。

1200年前の記録を知るロジと、今を生きるボッカ。この二人の信頼関係も、明日の大仕事には欠かせません。


さあ!いよいよ次は、新品の基板を組み込み「先輩」が覚醒する第23話ですね。

朝日が昇るシーンから、一気に工事レストアを開始しましょうか!

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