表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ボッカ監督の異世界インフラ革命 〜古代遺跡を修理していたら物流が大陸を支配しました〜  作者: コケグマ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/41

枯れ谷のバイパス手術、そして再起動の鼓動

先輩ゴーレム、いよいよ本番だ。まずはそのデカい腕で、あの崩落した岩盤をどかしてくれ。ガッシュ、テオ! お前らは俺が指示した位置に『ガイド(杭)』を打て。そこに先輩が岩を積んでいくんだ!」


ボッカの鋭い号令が地下回廊に響く。再起動したゴーレム・ユニット04が、低い駆動音と共に巨大な腕を伸ばした。


人間数人がかりでもビクともしない数トンの岩石が、まるで積み木のように軽々と持ち上げられ、ボッカが指定したラインへ正確に置かれていく。


「す、げえ……! 親方、本当に石の壁ができあがってくぜ……!」


「感心してる暇があったら手を動かせ! 岩の隙間に小さい石を叩き込め。隙間を埋めねえと、荷重が一点に集中して崩れるぞ。これを『裏込め(うらごめ)』って言うんだ。地味だが、壁の寿命を決めるのはこれだ!」


若者たちは、ゴーレムの旋回範囲に注意しながら、砕いた石を夢中で隙間に詰め込んでいく。自分たちが詰めた小石が、巨大な岩をガッチリと固定していく手応えに、二人の顔に「現場の職人」としての熱が宿り始めた。


しかし、ボッカの目は依然として厳しい。ロジが投影する3Dマップが、不吉な警告色を放っていたからだ。


『マスター、問題が発生しました。新しく配管を繋ぎ直す予定の区画……地層の空洞化が進んでおり、このままではゴーレムの自重で床が抜ける恐れがあります』


「……チッ。繋ぐだけならカプセルで一発だが、基礎が腐ってちゃ、一月も持たずにまた破裂するな。……ガッシュ、テオ! 手を止めろ。先に『地盤』を固めるぞ」


「地盤を……? 魔法でパッと固めるんじゃないんですか?」


テオが不思議そうに首を傾げた。彼らにとって、ボッカの持つ「カプセル」は何でも解決する全能の魔法に見えていた。


魔法カプセルをそんな無駄遣いできるか。……ロジ、地表の子供たちが集めてた『特定の草』と『青い筋の入った石』、配合比率を出せ」


『了解。地盤改良用の骨材データを構成します。……ですがマスター、子供たちが集めた分だけでは、広大な床下の空洞を埋めるには到底足りません。あと300リットル分の充填材が必要です』


「足りねえなら現場で『作る』のが監督の仕事だ。ロジ、周囲のスキャン感度を上げろ。この枯れ谷にあるもんで、代わりになる素材を見つけ出せ」


『……解析中。マスター、朗報です。回廊の隅にある「白い砂」は高純度の珪砂です。さらに、足元に散らばっている「魔導結晶の微細な欠片」……これを混ぜ合わせることで、子供たちの素材を「核」とした爆発的な増量と硬化が期待できます』


「ガッシュ! その白い砂をかき集めてこい。テオ! お前はそこら中に落ちてる結晶の粒を拾い集めろ!」


「えっ、呪いの結晶を混ぜるんですか!?」

「呪いじゃねえ、こいつは最高の『早強剤(早く固める薬)』だ。子供たちが集めた草の繊維が網の目――鉄筋の代わりになり、砂と結晶が入り込んで内側からカチカチに固まる。……名付けて『枯れ谷式・超速硬化プラグ』だ!」


ボッカはそう言いながら、カプセルを起動させた。給油ノズルで負荷がかかっていた1個目のカプセルから、重厚な石製の「巨大なすり鉢」を生成する。


「テオ! 結晶を鉢にぶち込め。先輩! お前のそのデカい指で、こいつを粉になるまで押し潰せ!」


『了解。加圧作業を開始します』


ゴーレムが巨大な指をすり鉢の中へ差し込み、岩をも砕く握力で結晶を磨り潰し始めた。ギギギ、メキメキッ! という凄まじい音と共に、硬い結晶が瞬く間に微細な粉末へと変わっていく。


「これが『重機』の力だ。ガッシュ、ボーッとするな! 砂を混ぜろ!」


若者たちはボッカの気迫に押され、夢中で素材を投入していった。ボッカはそれらをシャベルでかき混ぜ、仕上げにカプセルからロジ特製の「結合樹脂」を流し込んだ。


シュゥゥゥ……ッ!!


1個目のカプセルが役目を終え、パリンと音を立てて砕け散る。だが、空洞を埋める「特製スープ」は完成した。


「よし、注入開始! 先輩、ドリルの回転を上げろ! 奥まで叩き込め!」


ゴーレムが振動を与えながら、地中の空洞へ混合物を流し込んでいく。結晶粉末が残留マナに反応して熱を発し、砂と繊維を瞬時に一体化させていく。


『……地中空洞の充填率、98%を突破。地盤強度が古代の設計基準値を150%上回りました。マスター、これならゴーレムが跳ねても床は抜けませんよ』


「……。――ふぅ。子供たちの頑張りを無駄にしねえで済んだな」


投影されたマップが、赤から鮮やかな「安全」の緑色に塗り潰される。


「待たせたな。……先輩、いよいよ本工事だ。あのバイパス管を抱えろ。1200年間止まっていたこの世界の『血流』を、今から俺たちが繋ぎ直す!」


ボッカは腰のホルダーに残った、最後の一つ――新品のカプセルを手に取った。


これを使い切れば、次のチャージまで魔法は一切使えない。だが、ボッカの迷いはなかった。


「ロジ、大型構造生成――『バイパス継手ジョイント』、展開!」


ボッカがカプセルを振り下ろすと、真っ白な光の中から、古代のデザインを完璧に再現した巨大な円筒形のパーツが出現した。


『大型構造生成、完了。……これをもって、現保有カプセルはすべて損壊。再構成完了まで残り18時間……いえ、現場補正により約6時間となります』


「安心しろ。あとは俺たちの手の出番だ。ガッシュ、テオ! 継手のボルトを締めろ! 対角線順に、少しずつだ。一箇所だけ締めれば、パッキンが歪んでまた漏れ出すぞ!」


「はいっ!」


二人は巨大なレンチを握りしめ、ボッカの号令に合わせてボルトを締め上げていく。カチッ、カチッ、と金属が噛み合う音が回廊に響く。すべてのボルトが規定のトルクで締まった瞬間、UIに「完全密閉」のサインが灯った。


「……。――よし、全員下がれ。これから1200年ぶりに、この配管に『熱』が通る」


ボッカは二人をゴーレムの背後に退避させると、自ら巨大な手動ハンドルに手をかけた。成功すれば村にエネルギーが戻り、失敗すれば、この回廊ごと吹き飛ぶかもしれない。


「ガッシュ、テオ。しっかり見ておけよ。……これが、仕事が形になる瞬間だ」 


ボッカが全身の力を込めて、ハンドルを回した。


ゴガガガガッ!!


配管の奥から、地鳴りのような唸り音が聞こえてくる。猛烈な圧力と熱を帯びたマナの奔流が、1200年の沈黙を破り、ボッカたちが繋いだ「新しい道」へと流れ込んできた。

それは、辺境の村が「物流の要塞」へと変貌を遂げるための、最初の、そして最大の拍動だった。

本編をお読みいただきありがとうございます!

地盤改良からバイパス接続まで、現場監督ボッカのリソース管理と若者たちの成長を詰め込みました。

カプセルの残弾をゼロにしてまで成し遂げたこの工事。地上に戻った彼らを待っているのは、一体どんな光景でしょうか?

次回、第18話。村が湯気に包まれます。


【作者からのお願い】

『面白い』『続きが気になる』と思われましたら、是非ブックマーク登録をお願いします。

また、↓に☆がありますのでこれをタップいただけると評価ポイントが入ります。

本作を評価していただけるととても励みになりますので、嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ