古代の血液と、再起動の鼓動
三人は地下の備品倉庫から、ドロリとした「古代の油」を運び出し、沈黙するゴーレムの元へと戻ってきた。ボッカは腰のカプセルを確認し、ロジの投影画面を鋭く見つめる。
『生成カプセル状況:フルチャージ。……現在、2個の生成が可能です』
「……よし、弾数は戻ったな。だが、この先で何が起きるか分からねえ。無駄撃ちは厳禁だ」
ボッカは2個あるうちの1個を指差し、ロジに優先順位を叩き込む。
「ロジ、1個目は『小出し』で使うぞ。まずは給油用の精密ノズルだけ出せ。……でけえもん(本設)を作るのは、もう1個の予備が溜まってる時か、本当に手詰まりになった時だけだ」
『了解。……補助エネルギーにより「精密ノズル」を形成。1個目のカプセルに微細な負荷が発生しますが、大型生成能力は維持されます』
「……実質、1.5発分ってところか。上等だ。……よし、ガッシュ、テオ。ここからは一滴もこぼすなよ。この油はただの液体じゃねえ、こいつを1200年の眠りから叩き起こすための『命』だ」
ボッカはゴーレムの首筋にある「給油ポート」に細いノズルを差し込んだ。
「ガッシュ、お前はドラム缶のレバーを一定の速さで回せ。テオ、お前はノズルの付け根を支えて、漏れがないか指先で感じろ。……いいか、機械の喉を潤すんだ。焦って流し込めば、奥で気泡が噛んで関節が死ぬぞ」
「は、はい……っ!」
若者たちは、緊張で指先を震わせながらも、ボッカの指示通りに動いた。ドクッ……ドクッ……という重苦しい音と共に、粘度の高い油が巨体の内部へと吸い込まれていく。
潤滑油の充填を終えたボッカは、ゴーレムの胸部中央――重厚な装甲に守られた「制御核」の前に陣取った。
「ロジ、開け方は?」
『内部ロックされています。正規の認証コードが必要です』
「そんなもん知るか。……後で直してやるからな。先輩、ちょっと手荒にいくぜ」
ボッカはバールの先をハッチの継ぎ目に深く突き立て、渾身の力でこじ開けた。
パキィィンッ! と装甲が弾け、露わになった制御パネルに赤い警告文字が躍る。
『警告。10秒以内に認証がない場合、機体を完全凍結します。……残り5秒』
「……。――だったら、『論理』じゃなく『物理』で通すまでだ!」
ボッカはバールの柄で、パネルの隅にある「特定の端子」を正確に一打した。
「1200年も経てばハンダも浮く。そこを叩いて一瞬だけ『直結』させてやりゃあ、システムがバグる前に起動信号が届く!」
バチィィィィッ!!
火花が散ると同時に、赤い警告灯が鮮やかな琥珀色へと反転した。物理的衝撃による強制起動命令。それが通った瞬間、地鳴りのような重低音が響き、ゴーレムの瞳に穏やかな光が灯った。
『管理ゴーレム・ユニット04、再起動完了。……現管理者を「暫定・現場監督」として登録』
「……。――ふぅ。お疲れさん、先輩。手荒な真似して悪かったな。さっそく一仕事頼むぜ!」
本編をお読みいただきありがとうございます!
今回は「本工事」と「仮設工事」の違いについて少し触れました。
実際の現場でも、ずっと残るもの(本設)と、作業のために一時的に使うもの(仮設)では、かけるコストも強度も全く違います。
ボッカがカプセルの出力を使い分ける描写を入れることで、よりリソース管理のリアリティが増したかと思います。
さて、次回。村に熱が届く時、地上の村人たちはどんな反応を見せるのか。
「インフラ建設」がもたらす最初の奇跡、お楽しみに!
【作者からのお願い】
『面白い』『続きが気になる』と思われましたら、是非ブックマーク登録をお願いします。
また、↓に☆がありますのでこれをタップいただけると評価ポイントが入ります。
本作を評価していただけるととても励みになりますので、嬉しいです。




