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To Dream  作者: 三井
第5章【怖かったもの】
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03 光は、見つかりましたか

 捨てられた。


 そう環が理解したのは、母親が帰ってこなくなってから1ヶ月が過ぎた頃だった。

 前兆はあった。父親が帰ってこなくなってから、環を眺める母親の目に「邪魔」という文字が浮かんでいたのだ。

 でも小学生の環が生き残るためには、見ないふりをするしかなかった。


 捨てられて、環が一人になると、善人面の大人たちが現れ、どこかの施設へ放り込まれた。

 良い人ぶったそいつらは、ああしろ、こうしろ。アレは駄目、コレも駄目と、指図ばかりしてきた。

 だから環は中学に入った頃から、自由を求めるように夜の街へ繰り出した。

 喧嘩と補導を重ねるうちに、施設の奴らも母親と同じものに変わっていった。


 でもそんな時。

 暗い路地裏で、1人の男にぶつかった。

 いつも通り喧嘩を吹っかけたが、男は真っ直ぐに環を見て「居場所がねぇならうちに来い」と笑った。

 その男は、ある会社の若頭|《社長》だった。


 詳しい方法はわからないが、若はすぐに施設から環を引き取ってくれた。

 「バカは生きていけねぇ」と高校にも行かされた。数え切れないほど謹慎処分になったが、その度に若に説教をされて、どうにか3年間で高校を卒業した。


 それからは若の下で、先生と呼ばれる奴に言われた通り取り立てに行ったり、若い女が好きそうな中年親父に「いい店がある」と声をかけたりした。

 テレビでみる世界よりも、生温い仕事だったが、


──違法な事には絶対に手を出すな。


 それが会社のルールで、若の口癖だった。

 ただ一般人にはそんなことは関係なく、環たちはゴミと同じように見られた。


 ゴミみたく捨てられた環にとっては、今さら過ぎて気にならなかった。

 だが若は、違った。

 特に、別れた奥さんと娘に、悪影響が出ていないかを──ひどく気にしていた。


 そんなある日。

 仕事を終え、事務所で若からの連絡を待っていたときのことだぅた。


「おい知ってっか?この子、若の娘さんなんだぜ」


 上司が暇つぶしに点けたテレビを指差し、得意げに笑う。


「娘って……この、7番のガキが……若の?」


 画面に映っているのは、どこにでもいそうな普通の女の子。

 キラキラと歌い、楽しそうに踊っている姿は、こんな薄暗い会社の人間の娘だとは思えなかった。


「ああ、わっかんねぇよな〜。でもオレ、応援してんだぜ?昔、若が写真落としたことあってよ」


 上司のちぐはぐな説明を聞き流しながら、環はポケットからスマホを取り出した。


 アイドルオーディション番組。

 日頃テレビを見ない環でも知っている、視聴者の人気投票でデビューが決まる番組だった。

 デビューできるのは10人中6人で、最終投票までの期間は残り2週間弱。


 若の娘の人気は──7位。


 頑張れば逆転できる位置にいたが、それは下位の奴らも同じ。

 娘がデビューできればきっと若は喜ぶし、その手伝いをした奴もきっと褒めて、近くに置いてくれるだろう。幹部候補にだってなれるかもしれない……。


 環は──若の娘を確実にデビューできる方法を探し始めた。


「つっても……やっぱ、無理だよな〜」


 テレビ業界にコネはない。

 数千票を動かせるような金もない。

 何も持たない環にできることなんて、あるはずがなかった。

 そう思って、諦めようとしたとき──

  

「"ユメアメ"って知ってる?」


 会社が用心棒をしている喫茶店で、環は奇妙な噂話を耳にした。

 胡散臭い。どう考えても、都市伝説みたいな話だ。

 それなのに。

 気がついたときには、環は噂のプラネタリウムの前に立っていた……。

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