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To Dream  作者: 三井
第5章【怖かったもの】
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02 進むしかありませんね

 男に脅迫された翌日。

 蒼夜と白兎は、とあるテレビ局を訪れていた。


 本来"ユメアメ"を回収する─導く─相手に関わるのは『導き手』である蒼夜のみ。『鍵人』(研修生)である白兎は接触しないのだが、昨日の件もあり、今回は同行してもらうことになった。


「蒼夜さん……。本当に、やるんすか?」

「それが、ご希望ですから」


 坂之上さかのうえ美咲(みさき)

 男が指定した彼女は、とあるアイドルオーディションの参加者だった。


 そのオーディションは、ここ最近流行っている、視聴者投票によりデビューできるかが決まるもので、既に最終審査段階だった。

 美咲の夢はもちろん、合格してデビューすること。そして現在の人気順位は──6位。


 約2週間後にデビューできる、最後の1人だ。


「それでは、行きましょうか」

「……はいっす」


 蒼夜と白兎は本部に用意してもらった、とある雑誌社の社員証を首から下げる。顔を見合わせてから、小さく頷き、足を進めた……。


 同時刻。

 都内某所のある雑居ビルの一室。


「お疲れ〜っす」

「おい(たまき)!テメェ昨日の夜どこ行ってやがった!?」


 津金つがね環は職場の事務所に顔を出していた。

 もちろん、机に足を放り投げ、ガンを飛ばしてくるうるさい上司に会うためではない。


「別に。……って今日も、いないんすね」

「テメェ耳付いてんのか?単独行動すんなって、何度言えばわかんだ!?」

「相変わらず支離滅裂かよ……。えーっと、スンマセンした。以後気をつけま〜す」


 この界隈では上下関係は絶対だ。だから馬鹿な上司でも、少しでも、僅かでも、塵程度でも、敬わらなければならない。


「わかればいーんだよ、わかれば」

「はいはい……。で、若は?」


 事務所には煙草(ヤニ)の臭いが充満していたが、環と組んでいる上司しかいなかった。

 既に昼過ぎのため、みな外で仕事中なのだろう。


──クソ真面目な奴ら。


 そう思うが、環自身も午前中に1件仕事を済ましているので、だいぶ染まっている。


「知らねぇー。……あ。でもさっき電話あったわ。次の件もオマエに任せるとよ」

「……それだけ?」

「あぁ!?他になんかあんのか?」

「いや、別に……」


 環がここで働くようになった頃。仕事を完了させる度に若《社長》は事務所で出迎えてくれ、その後は毎回、食事にも連れて行ってくれた。

 それ以外にも、今組んでいる上司とは別の意味で、うるさいほど声をかけてくれたが……。


「男なら……境遇を嘆くな、自分で抜け出せ」

「あ?なにごちゃごちゃ言ってんだ。言いてぇことあんなら、はっきり言え」

「なんでもねぇっすよ……。資料確認したら、すぐ出るんで、お願いしあーす」


 力の入った手を隠すようにポケットへ突っ込み、環は来客用ソファに腰を下ろす。

 小さく息を吐いた。


「……うっし!」


 ローテーブルの上の封筒を開き、中身を確認する。スマホに送られてきた情報と、一つ一つ照らし合わせながら。

 ノルマ以外に1件でも、追加報告できる内容を確保するために。

 成功すれば高評価間違いなしの案件を抱えていても、環は自分の昇進を他人に委ねられるほど、生ぬるい日々を生きていないから……。


 環が噂のプラネタリウムで男たちに接触して約2週間後。

 ──とあるアイドルオーディションの、合格者発表の日。


「とにかく、中に入れ」


 午後20時。

 環は男たちを、プラネタリウム付近の人通りのない廃ビルに呼び出した。

 男2人が黙って中に入った後、環は周囲に人影が無いことを確かめてから、ドアの鍵を閉める。


「で……海と山。どっち?」


 ドアに寄りかかながら、環は長身の男を睨みつける。

 その隣にいる高校生らしいガキは、前回同様フードを被ってうつ向いている。


「そうですね……。個人的にはどちらも好きですが、今回はご遠慮させていただきます」

「ないから。オマエらに拒否権はねぇ。んなこと……わかってんだろ?」

「本来なら、そうなんでしょうね」


 廃ビルの一室に閉じ込められた状況でも、善人面で笑う男に環は少しだけ気味悪さを感じるが、すぐに苛立ちが塗り替える。


「本来もクソもねぇ。どう──責任取るか。って、聞いてんの」

「責任……。申し訳ございませんが、もう少し詳しくご説明していただけますか?」

「オマエ、馬鹿にしてんのか?……"ユメアメ"!回収できなかったんだろ?その責任を、どーするんですかって聞いてんだよっ!」


 溢れる感情に身を任せ、環は背にしたドアを乱暴に蹴った。

 鈍い音が部屋に響き、ガキは肩を震わせたが、長身の男は目を見開くだけ。

 その余裕そうな姿は、さらに環の感情を逆撫でる。


「あのさ!この状況、わかってんの?」

「もちろん理解しております。ですが若干……認識に齟齬があるようです」

「ッチ……。──クソッ!!」


 環はもう一度勢いよくドアを蹴り、長身の男を睨みつける。


──なんなんだよ!!


 目を逸らすことなくこちらを見る長身の男。その瞳には"あの言葉"ではなく、しっかりと自分が映っている……。

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