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To Dream  作者: 三井
第5章【怖かったもの】
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01 手の平で踊りましょう

 夜空に星が輝きだした頃。


「なあ!ちょっと、いい?」


 事務所から出てきた蒼夜と白兎に、派手な花柄のシャツを着た、耳にいくつも穴を空けた若い男が声をかけた。


「──っ!」


 男に気づいた白兎は慌てたようにパーカーのフードを被る。

 一方蒼夜は、そんな白兎を男から隠すように一歩前に出た。


「構いませんよ。どうか、されましたか?」

「話がある。だから付いて来い」


 男はそう言うと、少し先の道路に停められた黒い車へと視線を投げた。

 蒼夜もその先を見るが、窓ガラスは濃く加工されており、車内の様子は窺えない。 


「すみません。急いでおりますので、ここでお話いただけますか?」

「あっそう。別にオレはここでもいいけど、困るのはオマエらだぜ?」

「……どういうことでしょうか?」

「"ユメアメ"。……で、どっち?」


 それ以上説明するつもりがないのか、男は気だるそうに蒼夜を見る。

 その瞳は濁っており、男の考えはわからなかった。


「同行、させていただきます。ですが彼は学生なので──」

「だから?ってかガキとか関係ない。そっちのチビにも関係ある話だし」

「……わ、わかったっす。オ、オレも……行くっす」


 白兎の返答に満足したのか、男は車へと歩いていく。

 その後に続く蒼夜と白兎。白兎は相変わらずフードを被ったまま、うつ向いている。


「大丈夫。俺に任せろ」


 蒼夜はぽん、と白兎の頭に手を置く。

 その隣で白兎は小さく頷き、蒼夜のジャケットの裾を、ぎゅっと掴んだ……。


「オマエは後ろ。チビは前だ。……ほら、さっさと乗れ」

「……わかりました」


 4列シートの車内には、誰もいなかった。

 不安そうな白兎と別に座るのは避けたかったが、男の態度から希望は通らないと判断し、蒼夜は3列目、白兎は2列目の座席に進む。


「そんな警戒すんなよ。いい子にしてりゃあすぐ済む。……だからさ?無駄な抵抗とか反抗、すんなよ」


 2人が乗り込んだ後、男は白兎の隣に座り、車のドアを閉めた。

 終始うつ向いている白兎をジロッと見たが、すぐに体をずらし、斜め後ろの蒼夜に顔を向ける。


「んじゃさっそく……。"ユメアメ"を売れ。金はいくらでも出す」

「……すみません。なんのことでしょうか」


 "ユメアメ"に関して通行人に聞かれるわけにはいかないため、蒼夜は仕方なく男に付いてきた。

 だが取り引きを迫ってきたからと言って、安易に話すわけにはいかない。


「はぁ……。だから、そう言うのいらねんだよ。てかこの状況。わかんだろ?」


 男は蒼夜から、縮こまっている白兎に視線を移した。

 その瞳は変わらず濁っているが、少しだけ苛立ちの色が加わり、これ以上刺激するのは危険だと感じさせる。


「失礼しました。"ユメアメ"をご希望とのこと、承知いたしました。すぐに本部に戻り、ご準備させていただきます」

「よろしく。でも"ユメアメ"は……コイツのじゃなきゃいらねぇ」


 男はポケットから取り出したスマホの画面を何度かタップし、蒼夜へ突きつける。


「……恐れ入りますが、彼女とのご関係をお伺いしてもよろしいでしょうか?」


 画面に映っていたのは1人の女の子だった。

 ラフな服装で、どこかのスタジオでダンスレッスンでもしているようなその姿は、危ない男と関わりがあるようには思えない。


「オマエには関係ない。オマエたちは、ただコイツから"ユメアメ"を回収すればいいだけ。……簡単だろ?」

「ですが──」

「2週間!あと2週間以内に回収して、持って来い。出来なかったら……海か山か。決めとけ」


 スマホをしまった男は、白兎の肩に手を置いた。

 瞬間肩を震わせた白兎に口元を緩めてから、蒼夜に「ばらばらもあったわ」と告げた。

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