02 また、その質問?
「蒼夜は卒業したらさ、どうすんの?」
本格的な就職活動が始まる少し前。
大学の食堂で向かいに座る友人に、蒼夜は軽く問いかけられた。
「俺は……適当に就職して働く。かな」
「なんだよそれ。蒼夜はさ、何でもできるんだからもっとこう……。夢とか無いわけ?」
「ゆめ、ね……」
夢なんてない。
そう言うと大抵相手は、同情したように眉を下げる。別に、夢がなくても生きていけるのに。無いことが可哀想だと、残念だと、言いたげに……。
しかし小学生の頃からその顔を見ている蒼夜は、もう慣れている。
「そう言う太陽は卒業後、どうするわけ?」
「おれ?おれはもちろん──」
明るい顔で、聞いてもいない将来設計まで語る友人に蒼夜は適当に相槌をうつ。
「はいはい。それは楽しそうで何よりだな」
「おい!ちゃんと聞いてんのか?」
「聞いてるよ。でもさ、確か……俺より成績悪かったよな?」
昔は羨ましくて見られなかった顔も、今の蒼夜は直視でき、無意識の攻撃も上手く交わせるようになっていた……。
──将来の夢はなに?
幼い頃から何度も同じことを聞かた。
答えは違えど、みんな、当然のように夢を語る。だが蒼夜は小学生の時から答えられなくなり、嘘をつくようになった。
要領がいいのか蒼夜は、どんなことでも基本的にこなすことができた。
「さすが蒼夜ちゃん!すぐにできて、凄いわ〜」
「これは将来が楽しみですね!」
周りの子供たちよりも早くできた蒼夜を、大人たちは褒めた。その言葉と態度が本当に嬉しくて……。
──もっと上手になるんだ!
懸命に努力を重ねる蒼夜。
だが……実らなかった。
──あれ?
日に日に他の子に追い抜かれる蒼夜に、声をかける大人は、いなくなった。
そして──蒼夜は憧れも夢も見られなくなった。
けれど大人たちは問いかける。夢はなんだと、何に憧れているのかと。だから蒼夜はその度に歯を食いしばって、うつむくしかなかった。
そんな蒼夜だったが、時と共に成長し、学んだ。
──プロ選手になりたい。
他の子に合わせればいいのだと。
スポーツ選手に、人気の、話題の〇〇に……なることが夢だと偽れば、攻撃は終わる。
周りが普通に夢を見ているのに、見られない自分はおかしいのかもしれない。
その息苦しさも、特別な夢なんて無くていい。普通に生活できればいいと──心を欺けばいいのだ。




