01 キラキラの夢ですね
「はぁ〜。ぜんっぜん、伸びない……」
都内にある、某有名カフェの近く。
動かないスマホの画面を、松村あいはじっと見つめていた。
お小遣いを切り詰めて、やっと買えた新作ドリンク。可愛くてキラキラのそれをインスタグラムに投稿すれば、いつもよりも多い"いいね"をもらえると思っていた。
しかし結果は変わらなかった。むしろ近所の野良猫の投稿の方が、伸びている。
「あ、これ、最新作だ!」
本日発売の新作コスメを手に入れたと、笑顔でインスタグラムに報告している綺麗な女性。
彼女は新作ドリンクはもちろん、コスメや高級ブランドに関する投稿が多く、あいが毎日欠かさずチェックしているインスタグラマーの1人だ。
「うわ……。わたしの……100倍以上だ」
毎日投稿しているのは同じなのに、いいね数もフォロワー数も桁違い。彼女のキラキラで楽しそうな表情を見ていると、なんだか自分の毎日が地味でつまらないように感じてしまう。
「こんな風に……。頑張っても、無理なのかな……」
あいは自分と彼女の投稿内容を比べては、ため息を漏らした。
「ため息をつくと、幸せが逃げてしまいますよ?」
スマホとにらめっこしていたあいは、白シャツに紺のジャケット姿の男に声をかけられた。
優しそうな顔立ちで、雰囲気イケメンに分類される男だが、あいにはこんな知り合いはいない。
「え……な、なんですか?」
「突然すみません。なにか悩んでいるようでしたので」
「あぁ、えっと……別に」
見知らぬ男相手に恐怖心はある。それでも、ビジュアルの良さから、あいは強く突き放すことができなかった。
「もしかして、夢のことで悩んでいるのではありませんか?」
「どうして──っ!いや、その……」
考えていた事を言い当てられ、あいは思わず反応してしまった。急いで取り繕うとするが、動揺は隠せず、目は泳いでしまう。
「やはりそうでしたか」
「ち、違います!わたしは、ただ──」
「あなたの夢、叶えて差し上げますよ?」
「……え?」
「ご安心ください。お代は結構ですから」
目を丸くするあいに、男は完璧な笑顔を返す。
年上の男に微笑まれ、あいの鼓動は速まっていく。それは春を期待してのことなのか、それとも──
「……ど、どういうことですか?」
理由を明らかにする前に、あいは口を開いた。頭で考えるよりも先に、心が動いてしまったから。




