第9章 レベル3への壁
模倣レベル2は、
確かに強い。
だが。
限界も、
はっきりしていた。
◆
砂漠地帯での任務。
相手は、
上位魔獣・
黒鎧獣。
全身を、
黒い外殻で覆った魔獣。
通常の剣撃は、
ほとんど通らない。
「真正面は無理だ」
カインの声。
「隙を作る」
俺は、
頷く。
模倣。
カインの動きで、
走る。
斬る。
弾かれる。
火花が散る。
衝撃で、
腕が痺れる。
強い。
今までとは、
次元が違う。
黒鎧獣の尾が、
横薙ぎに来る。
避けきれない。
吹き飛ばされる。
砂に、
叩きつけられる。
「ぐっ……!」
立ち上がろうとするが、
体が言うことをきかない。
カインが、
前に出ようとする。
その瞬間。
俺の胸に、
焦りが走る。
このままじゃ、
また頼るだけだ。
影のまま終わる。
嫌だ。
「俺が……
やります!」
叫ぶ。
カインが、
止まる。
「行け」
短い一言。
◆
俺は、
立ち上がる。
模倣。
全力で、
模倣。
だが――
足りない。
動きは似ている。
でも、
重さが違う。
威力が違う。
刃が、
外殻を割れない。
「くそ……!」
歯を食いしばる。
その時、
頭をよぎる。
レベル3。
短時間だけ、
本人と同等の強さ。
そこに、
届きたい。
だが。
どうやって。
◆
黒鎧獣が、
大きく吠える。
口の奥が、
赤く光る。
ブレスだ。
避ければ、
町に被害が出る。
俺は、
前に出た。
「来い!」
怖い。
死ぬかもしれない。
それでも。
逃げないと、
決めた。
ブレスが、
放たれる。
熱風。
俺は、
真正面から
突っ込んだ。
視界が、
白くなる。
意識が、
遠のく。
その瞬間。
胸の奥で、
何かが
砕けた。
――模倣レベル3に
到達しました。
世界が、
変わる。
カインの動きが、
完全に分かる。
重さ。
速さ。
力。
同じだ。
「いける……!」
◆
時間は、
短い。
分かる。
一撃で決める。
踏み込み。
全力。
剣が、
黒い外殻を
貫く。
核心。
黒鎧獣は、
動きを止めた。
崩れ落ちる。
◆
俺は、
膝をつく。
全身が、
悲鳴を上げている。
カインが、
駆け寄る。
「よくやった」
俺は、
笑った。
初めて、
心から。
影武者でも。
俺は、
前に進んでいる。




