第6章 罪悪感と誇り
宿に戻った瞬間、
俺はベッドに崩れ落ちた。
体が、
言うことをきかない。
指先まで、
じんじんと痛む。
それでも。
目を閉じると、
あの瞬間が蘇る。
剣を振った感触。
オークが倒れた光景。
――俺が、
倒した。
胸が、
熱くなる。
だが同時に、
冷たい感覚も広がった。
「勇者様!」
人々の歓声。
その声は、
俺に向けられたものじゃない。
カインに向けられている。
俺は、
嘘の中にいる。
◆
夜。
部屋の扉が、
静かに開く。
カインだった。
「起きてるか」
「はい」
俺は、
体を起こす。
「初任務、
どうだった」
少し考える。
「……怖かったです」
「でも、
嬉しかったです」
「でも……」
言葉が、
詰まる。
カインは、
続きを待つ。
「俺は、
勇者じゃないのに」
「勇者のふりをして、
褒められて」
「それが、
苦しいです」
正直な気持ちだった。
カインは、
ベッドの横に座る。
「お前は、
戦った」
「命を賭けた」
「それは、
本物だ」
「名前が何であれ、
やった事実は
変わらない」
俺は、
俯く。
「でも……」
「誇れ」
短い言葉。
強い声。
「お前は、
影武者として、
最初の仕事を
やり遂げた」
胸が、
ぎゅっとなる。
◆
カインは、
少し間を置いて言う。
「お前の模倣、
前より良くなってる」
「え?」
「動きが、
滑らかだ」
「レベルは、
まだ上がってない」
「でも、
近い」
希望。
その言葉が、
胸に灯る。
「模倣レベル2になれば、
強さが上がる」
「実用圏内だ」
俺は、
拳を握る。
「……もっと、
頑張ります」
カインは、
小さく笑った。
◆
その後、
ミレアが来た。
「傷、
見せて」
回復魔法が、
静かに広がる。
「ルート」
「はい」
「罪悪感を持てるのは、
優しい証拠」
「でも、
自分を責めすぎないで」
「あなたは、
前に進んでる」
言葉が、
胸に染みる。
◆
翌朝。
俺は、
訓練場に立っていた。
昨日より、
少しだけ姿勢が良い。
剣を握る手が、
少しだけ強い。
「強くなる」
小さく呟く。
影武者として。
そしていつか、
俺自身として。




