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第6章 罪悪感と誇り


宿に戻った瞬間、

俺はベッドに崩れ落ちた。


体が、

言うことをきかない。


指先まで、

じんじんと痛む。


それでも。


目を閉じると、

あの瞬間が蘇る。


剣を振った感触。

オークが倒れた光景。


――俺が、

倒した。


胸が、

熱くなる。


だが同時に、

冷たい感覚も広がった。


「勇者様!」


人々の歓声。


その声は、

俺に向けられたものじゃない。


カインに向けられている。


俺は、

嘘の中にいる。



夜。


部屋の扉が、

静かに開く。


カインだった。


「起きてるか」


「はい」


俺は、

体を起こす。


「初任務、

 どうだった」


少し考える。


「……怖かったです」


「でも、

 嬉しかったです」


「でも……」


言葉が、

詰まる。


カインは、

続きを待つ。


「俺は、

 勇者じゃないのに」


「勇者のふりをして、

 褒められて」


「それが、

 苦しいです」


正直な気持ちだった。


カインは、

ベッドの横に座る。


「お前は、

 戦った」


「命を賭けた」


「それは、

 本物だ」


「名前が何であれ、

 やった事実は

 変わらない」


俺は、

俯く。


「でも……」


「誇れ」


短い言葉。


強い声。


「お前は、

 影武者として、

 最初の仕事を

 やり遂げた」


胸が、

ぎゅっとなる。



カインは、

少し間を置いて言う。


「お前の模倣、

 前より良くなってる」


「え?」


「動きが、

 滑らかだ」


「レベルは、

 まだ上がってない」


「でも、

 近い」


希望。


その言葉が、

胸に灯る。


「模倣レベル2になれば、

 強さが上がる」


「実用圏内だ」


俺は、

拳を握る。


「……もっと、

 頑張ります」


カインは、

小さく笑った。



その後、

ミレアが来た。


「傷、

 見せて」


回復魔法が、

静かに広がる。


「ルート」


「はい」


「罪悪感を持てるのは、

 優しい証拠」


「でも、

 自分を責めすぎないで」


「あなたは、

 前に進んでる」


言葉が、

胸に染みる。



翌朝。


俺は、

訓練場に立っていた。


昨日より、

少しだけ姿勢が良い。


剣を握る手が、

少しだけ強い。


「強くなる」


小さく呟く。


影武者として。


そしていつか、

俺自身として。


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