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第4章 地獄の訓練


訓練場は、

ギルドの裏手にあった。


土が踏み固められ、

所々に血の染みが残る。


ここで、

何人もの冒険者が

限界を越えてきた。


俺は、

その中央に立たされていた。


「まず、

 基礎体力」


カインが言う。


「走れ」


「……どれくらい?」


「倒れるまで」


冗談だと、

思いたかった。



走る。


走る。


走る。


息が切れる。


肺が焼ける。


足が、

言うことをきかない。


「止まるな」


カインの声が、

遠くから聞こえる。


俺は、

転んだ。


顔から、

地面に突っ込む。


「……もう、

 無理です」


「まだだ」


容赦がない。


立ち上がろうとして、

足が震える。


それでも、

立つ。


「俺は……

 影武者ですから」


自分に、

言い聞かせる。



次は、

剣の訓練。


木剣を渡される。


「構えろ」


カインが、

目の前に立つ。


圧が、

違う。


立っているだけで、

押し潰されそうだ。


「模倣を使え」


「……はい」


意識を集中する。


カインを見る。


剣の握り。

足の位置。

重心。


スキルが、

反応する。


体が、

勝手に動いた。


だが――


遅い。


軽い。


カインの木剣が、

俺の腹に当たる。


「ぐっ……!」


吹き飛ばされる。


背中から、

地面に落ちる。


「これが、

 レベル1だ」


カインは、

淡々と言う。


「何でも模倣できる」


「だが、

 弱い」


悔しい。


歯を、

食いしばる。



訓練は、

休みなく続いた。


走る。


振る。


受け身。


魔力操作。


夜になっても、

終わらない。


俺は、

何度も倒れた。


そのたびに、

ミレアが回復魔法をかける。


「ありがとう、

 ございます」


「礼は、

 強くなってから」


優しいけど、

厳しい。


ドルグは、

無言で立っている。


倒れるたび、

無言で俺を起こす。


それだけだ。



三日目。


体が、

動かない。


起き上がれない。


「終わりにします……」


口から、

弱音が漏れる。


カインは、

俺の前に立つ。


「逃げるか?」


「……」


「最底辺に、

 戻るか?」


胸が、

痛い。


「戻りません」


声は、

小さい。


「なら、

 立て」


俺は、

震える腕で、

地面を押す。


立つ。


それだけで、

視界が揺れる。


「よし」


カインは、

初めて褒めた。


たった、

それだけ。


なのに。


胸が、

熱くなった。



その夜。


宿の部屋で、

俺はベッドに倒れ込む。


全身が、

痛い。


でも。


不思議と、

嫌じゃない。


今までの痛みは、

無意味だった。


でも今の痛みは、

前に進んでいる証だ。


俺は、

天井を見つめる。


「強くなりたい」


初めて、

はっきりと思った。


影武者として。


そして、

いつかは――


俺自身として。


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