第4章 地獄の訓練
訓練場は、
ギルドの裏手にあった。
土が踏み固められ、
所々に血の染みが残る。
ここで、
何人もの冒険者が
限界を越えてきた。
俺は、
その中央に立たされていた。
「まず、
基礎体力」
カインが言う。
「走れ」
「……どれくらい?」
「倒れるまで」
冗談だと、
思いたかった。
◆
走る。
走る。
走る。
息が切れる。
肺が焼ける。
足が、
言うことをきかない。
「止まるな」
カインの声が、
遠くから聞こえる。
俺は、
転んだ。
顔から、
地面に突っ込む。
「……もう、
無理です」
「まだだ」
容赦がない。
立ち上がろうとして、
足が震える。
それでも、
立つ。
「俺は……
影武者ですから」
自分に、
言い聞かせる。
◆
次は、
剣の訓練。
木剣を渡される。
「構えろ」
カインが、
目の前に立つ。
圧が、
違う。
立っているだけで、
押し潰されそうだ。
「模倣を使え」
「……はい」
意識を集中する。
カインを見る。
剣の握り。
足の位置。
重心。
スキルが、
反応する。
体が、
勝手に動いた。
だが――
遅い。
軽い。
カインの木剣が、
俺の腹に当たる。
「ぐっ……!」
吹き飛ばされる。
背中から、
地面に落ちる。
「これが、
レベル1だ」
カインは、
淡々と言う。
「何でも模倣できる」
「だが、
弱い」
悔しい。
歯を、
食いしばる。
◆
訓練は、
休みなく続いた。
走る。
振る。
受け身。
魔力操作。
夜になっても、
終わらない。
俺は、
何度も倒れた。
そのたびに、
ミレアが回復魔法をかける。
「ありがとう、
ございます」
「礼は、
強くなってから」
優しいけど、
厳しい。
ドルグは、
無言で立っている。
倒れるたび、
無言で俺を起こす。
それだけだ。
◆
三日目。
体が、
動かない。
起き上がれない。
「終わりにします……」
口から、
弱音が漏れる。
カインは、
俺の前に立つ。
「逃げるか?」
「……」
「最底辺に、
戻るか?」
胸が、
痛い。
「戻りません」
声は、
小さい。
「なら、
立て」
俺は、
震える腕で、
地面を押す。
立つ。
それだけで、
視界が揺れる。
「よし」
カインは、
初めて褒めた。
たった、
それだけ。
なのに。
胸が、
熱くなった。
◆
その夜。
宿の部屋で、
俺はベッドに倒れ込む。
全身が、
痛い。
でも。
不思議と、
嫌じゃない。
今までの痛みは、
無意味だった。
でも今の痛みは、
前に進んでいる証だ。
俺は、
天井を見つめる。
「強くなりたい」
初めて、
はっきりと思った。
影武者として。
そして、
いつかは――
俺自身として。




