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第22章 勇者覚醒
世界が、
静まった。
音が、
遠ざかる。
ザグロスの笑い声も、
兵士の叫びも、
聞こえない。
あるのは、
自分の鼓動だけ。
ドクン。
ドクン。
剣を、
握る。
模倣しない。
誰にも、
ならない。
俺は――
俺だ。
◆
胸の奥が、
開く。
光が、
溢れる。
だが、
眩しくない。
温かい。
優しい。
同時に、
圧倒的。
身体が、
軽い。
痛みが、
消える。
疲労も、
ない。
魔力が、
尽きない。
理解する。
これが――
勇者覚醒。
◆
ザグロスが、
目を見開く。
「何だ……
その力は……」
俺は、
前に出る。
一歩。
ただそれだけで、
空気が揺れる。
剣を振る。
一閃。
ザグロスの腕が、
飛ぶ。
悲鳴すら、
上げられない。
二歩目。
胴を、
断つ。
巨体が、
崩れ落ちる。
静寂。
◆
光が、
ゆっくり消える。
俺は、
立っている。
息は、
乱れていない。
カインが、
近づく。
じっと、
俺を見る。
そして。
笑う。
「お前は、
勇者だ」
胸が、
熱くなる。
頷く。
◆
その日。
王都中に、
知らせが走る。
魔王軍幹部、
討伐。
勇者ルート、
覚醒。
影武者の名は、
歴史から消えた。
だが。
俺は、
忘れない。
影だった日々を。
あの日々が、
俺を作った。




