第16章 勇者ルート誕生
朝の王都は、
静かだった。
いや。
静かすぎた。
通りに、
人が少ない。
窓の影から、
視線を感じる。
今日。
勇者が、
交代する。
その事実を、
皆が知っている。
◆
王城前広場。
兵士。
騎士団。
冒険者。
そして、
民衆。
多くの人が、
集まっていた。
壇上に、
王が立つ。
重い沈黙。
「本日より、
新たな勇者を
任命する」
ざわめき。
「名は、
ルート」
俺は、
一歩前に出る。
視線が、
突き刺さる。
期待。
不安。
疑念。
すべてが、
混ざっている。
「ルートは、
これまで影武者として
戦ってきた」
「勇者カインの力を
正しく受け継ぐ者だ」
カインが、
隣に立つ。
剣を抜き、
俺に差し出す。
「受け取れ」
手が、
少し震える。
だが、
剣を取る。
カインは、
小さく笑う。
「行け」
胸が、
熱くなる。
◆
その直後。
警鐘。
魔物の群れ。
早すぎる。
まるで、
待っていたかのようだ。
「勇者ルート、
出陣せよ!」
俺は、
剣を握る。
考えるな。
行け。
◆
城門前。
魔物は、
中型魔獣十数体。
以前なら、
震えていた。
今は。
怖い。
それでも、
足は止まらない。
模倣。
カインになる。
完全じゃない。
それでも、
十分だ。
剣を振る。
一体。
二体。
血が、
飛ぶ。
息が、
荒くなる。
痛みも、
ある。
それでも、
前へ。
最後の一体を、
斬り倒す。
静寂。
誰かが、
叫ぶ。
「勝った……」
膝が、
震える。
だが、
倒れない。
剣を、
地面に突き立てる。
俺は、
立っている。
◆
城門の上。
民衆の拍手。
最初は、
まばら。
やがて、
広がる。
胸が、
苦しい。
嬉しい。
怖い。
全部だ。
俺は、
心の中で言う。
影武者ルートは、
終わった。
勇者ルートが、
始まった。




