第10章 影武者の現実
黒鎧獣を倒したあと、
俺は三日間、
まともに動けなかった。
全身が、
軋む。
指を動かすだけで、
悲鳴が上がる。
ミレアが、
何度も回復魔法をかける。
「無茶しすぎ」
その声は、
怒っているようで、
どこか震えていた。
「……すみません」
ベッドの上で、
そう答える。
カインは、
壁にもたれて立っていた。
「レベル3だ」
淡々と言う。
「短時間だが、
俺と同等」
「もう、
影武者じゃ済まない」
胸が、
ざわつく。
「どういう意味ですか」
カインは、
俺を見る。
「表に出る回数が増える」
「敵も、
勇者を本気で狙う」
「つまり」
「お前が、
狙われる」
言葉が、
重い。
今までの影武者は、
安全圏だった。
だが、
それが終わる。
◆
数日後。
次の依頼は、
王都近郊の砦防衛。
討伐対象は、
魔王軍の斥候部隊。
規模が、
違う。
「俺が出る」
カインが言う。
「中身は、
お前だ」
俺は、
頷く。
もう、
逃げない。
◆
戦場。
魔物の数は、
二十以上。
普通なら、
勇者パーティ総出だ。
だが前に立つのは、
俺一人。
模倣。
世界が、
切り替わる。
剣が、
走る。
魔物が、
倒れる。
だが、
消耗が激しい。
時間が、
足りない。
レベル3は、
短い。
最後の一体を倒した瞬間、
力が抜ける。
膝をつく。
その時。
遠くから、
拍手が聞こえた。
砦の兵士たちだ。
「勇者様……
すげぇ……」
胸が、
締めつけられる。
俺は、
勇者じゃない。
でも。
戦ったのは、
俺だ。
◆
夜。
カインと、
二人きりになる。
「怖いか」
「……はい」
正直に答える。
「でも」
言葉を続ける。
「やめたいとは、
思いません」
カインは、
少し笑った。
「それでいい」
「影武者は、
覚悟を持った瞬間に、
もう半分、
勇者だ」
胸が、
熱くなる。
影武者の現実は、
重い。
でも。
俺は、
立つ。




