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日本基督教団創立感謝大会に於ける富田統理の第一声

日本基督教団の錦の御旗は、当時も現在も、教会合同なのである。

教会の使命は伝道報国 口語訳


今日は、普段日本で「新教、プロテスタント」と呼ばれている34の教派が集まって、新たに「日本基督教団」という一つの団体を作ったことを感謝するための集まりです。


今まで存在していたそれぞれの教派は、信仰や神学、組織運営などについて、強い信念や理由があって別々に存在していました。そして、それぞれが長い歴史と伝統を持っていました。しかし、教派が分かれている状態は、キリスト教本来の姿ではありません。「主は一人、信仰は一つ、洗礼は一つ、すべての人の父である神は一つである」という教えがある以上、教会も一つであるべきなのです。


日本における30以上の教派は、去年の10月中旬に、一つになろうという思いを抱き、決意して準備を始めました。これには、当時の非常時における要請もありましたが、キリスト教本来の性質、真理のために一つになろうとしたのです。


この動きは、教会本来の精神に合致するものであり、これまで教会の先輩たちが払ってきた努力もあり、過去8ヶ月間の準備期間を経て、ついに現実のものとなりました。


この出来事は、世界の教会の歴史を見ても非常に珍しいことです。近世の欧米の教会の歴史は、分裂の歴史であり、決して誇れるものではありません。不完全ではありますが、8ヶ月の準備期間で一つの教団にまとまったことは、世界に誇れることです。この素晴らしい事業を成し遂げられたのは、神の力によるものです。このことを思うとき、日本の教会は、より大きな使命を自覚しなければなりません。


本来の福音は一貫したものであり、結局は伝道という一つの目的に帰着します。キリストの最後の命令は、「全世界に福音を伝えなさい」ということであり、これは教会に課せられた、どんな時代でも変わらない事業です。今日、この事業が衰退している時に、合同した30万人の信徒は一つになって伝道活動に立ち上がるべきです。これが、日本人でありキリスト教徒である私たちのなすべきことであり、日本の国と天皇陛下に忠誠を尽くす道です。


まさに、教会の自己犠牲的な奉仕は伝道です。伝道を通して国に貢献することが、教会の使命です。今回の合同を機に、伝道活動が盛んになるよう奮起しなければなりません。神の言葉で国民を導くことに、身を捧げて奉仕しなければならないと思います。


原文

「日本基督教団」が新しく創立を見た記念すべき日、六月二十五日午後七時から、東京神田一橋共立講堂に於て創立感謝大会が開催せられた。昨夏以来、教界内外の視聴を蒐めた合同問題の成果を広く社会に宣言する意義ある集会であるだけに甚だ盛会、信徒のみならず、基督教に関心を有する一般人をも多数集めてさしもの大講堂も超満員、入場者三千を超えたであらうと言はれる。


大会は創立大会にて満場一致を以て選挙せられたる阿部総会議長の司会の下に開始され、額賀鹿之助氏の指揮に従ひ国歌斉唱、宮城遥拝、感運黙祷の国民儀礼を厳粛に執行、木岡英二郎氏の奏楽、聖歌唱和会衆一同、野口末彦氏の聖書朗読、釘宮辰生氏の祈祷、青山学院合唱隊の讃美歌合唱等あつて、新任日本基督教団統理富田満氏の式辞があつた。新教団の統率者として重大なる責任を負ふ富田統理の江湖に向つて挙ぐる第一声である。


本日は普通我国にて新教と唱へらるる、三十四箇の教派が合同し新たに「日本基督教団」と称する一箇の教団が創立されたことに対する感謝の会合である。今日存する教派とは信仰、神学、 政治その他の点から強い理由があつて存したものであり、長い歴史伝統を有するのであるが、教派的分立とは基督教本来のものではなく、主一つ、信仰一つ、バブテスマ一つ、凡ての者の父なる神が一つである以上、教会も一つであるべきである。


我国に於ける三十余の各派は昨年十月中旬、一つにならんとの幻を見、決意し準備を始めた。一は非常時局的要求でもあったが、基督教本来の性質、真理の為めに合同せんとしたのである。 これが教会本有の精神と合致しそれまでに払はれた教界の先輩の努力もあり、過去八ヶ月の準備時代を経て玆に事実となつて実現せられたのである。


此の事は世界の教会の歴史に於ても稀有の事に属する。近世の欧米教会の歴史は一に分裂の歴史であつて、決して光栄の歴史ではない。完全ではないが八ヶ月の準備を以て一箇教団にまとまつたことは世界への誇りである。此の光栄ある事業を成させ給ふたのは神である。此のことを思ふて日本教会は加重されたる使命を自覚せねばならぬ。本来の福音は一貫せるもの、要するに伝道なる一事に帰する、キリスト最後の御命令は全世界に福音を宣べ伝へよであつて、これは教会に課せられたるもの、 如何なる時代にありても変らざる事業である。今日、此の事業の萎微して居る時、合同した三十万信徒は一団となつて伝道戦線に立つべきである。これが日本国民にして基督教徒たるわれらのなすべきところ、国に忠、君に忠なる道である。

実に教会の滅私奉公は伝道である。伝道報国が教会の使命である。今回、合同が成りたる機会に伝道が盛に行はれるやう奮起せねばならぬ。神の言で国民を導くことに捨身となつて奉公せねばならぬと思ふ。


次いで同志社大学総長牧野虎次氏が立ち、日本への新教伝道開始以来、全教会の合同と独立とのために努力し、今日の合同達成に備へられたる多数の先覚者の名を挙げてその貢献を讃へその尽力に感謝せられた。


祝辞は松岡外相(松山常次郎氏代読)阿原宗教局長、木辺仏教会長、渡辺神道各派聯合会長の諸氏に依つて述べられ、何れも単なる儀礼的祝辞に止まらざるもの、教界人にとり傾聴に値するものがあった。


斯くて感謝献金をなし、額賀鹿之助氏の感謝祈祷あり、千葉勇五郎氏の祝辞を受けて午後十時盛会裡に此の記念すべき集会を閉ぢた。


松岡外相祝辞


基督教が日本文化史上に極めて貴重なる役割を分担し、物心両面に於て顕著なる貢献をなし、以て今日に及びましたことは、善く世人の知る所であります。


神を敬ひ、人を愛する聖教の本旨は、固より天地の公道に通ずるものであります。従って我が八紘一宇の大義、御歴代聖天子の御垂訓をも良く調和し得るものなること更めて申すまでもありません。此の度、各位が、時局の重大に鑑み、関係諸教派、諸団体を打つて一丸となし、益々国是の向ふ所に従ひつつ専ら教義の徹底に精進せんが為「日本基督教団」を結成せられ、 目出度玆に創立感謝大会を開催さるに至りましたことは真に御同慶の至であります。世界は今や未曽有の変局に当面し、世道人心の向上改善は弥々各位の御発奮と御協力とに俟つもの多きを感ぜしむる際、本大会の席上に於て心からなる御祝ひの言葉を申述ぶる機会に接しましたことは、私の深く本懐に存する所であります。


茲に謹んで、各位の上に聖霊の加護を祈り、今後の御奮闘に対して、多大の希望を繋ぐ次第であります。


一言御祝辞と致します。


外務大臣 松岡洋右


(昭和一六年七月二四日『基督教世界』第二九八九号)


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