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完璧令嬢は暇つぶしに運命の番を愛でることにした  作者: サトウミ


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30/36

30.最新刊

数ヶ月後。

今日はいよいよ、『麗しのご令嬢様』の最新刊が発売される。

人気ロマンス小説の原作と漫画版が同時出版されるとあって、わざわざ侍女に買って来させるご令嬢も少なくなかった。


今日も相変わらず、授業の合間に私とケイティを重ねて見る令嬢達の眼差しを感じた。

だけど今日に限っては嫌ではない。

令嬢達の視線がルイにも向かっているところを察するに、彼女達はもう『麗しのご令嬢様』を読んだのだろう。

令嬢達の視線を感じたルイは、頬を赤くさせる。


「あら、どうしたの?」


彼が照れてる理由は知っているが、彼が可愛いからつい意地悪な質問をしてしまう。


「だって……キャサリン様は、恥ずかしくはないのですか?」

「全然。マリアだって言ってたでしょ? 『人と人との営みは私達人類が繁栄するために必要な行為』だって」

「確かに、そうですが」

「それにあの程度で恥ずかしがっていたら、本番は恥ずかしすぎて悶絶するんじゃないかしら?」


「ほ、本番っ?!」

ルイの裏返った声が響きわたる。


「あらあら。貴方、可愛いらしい声が出せるのね?」

恥じらうルイの愛らしい姿に、私の頬はつい緩くなってしまう。


ウブなルイを揶揄いながらも、この日の授業は粛々と過ぎていき、とうとう放課後になった。


今日は漫画愛好会の活動があるため、私は会室へと立ち寄る。

すると『麗しのご令嬢様』の漫画と小説を持った、マリアとエドナが駆け寄った。


『キャシーちゃん! 大変、大変!』

「キャサリン様、どうしましょう?! ルキウス王子が! いえ、それより新キャラが!」


彼女達も先に漫画を読んでたみたいね。

二人とも言いたいことは同じだと思うし、言語翻訳の魔法でお互いに喋っている内容が分かるようにしてあげよう。


「どうだった? 麗しのご令嬢様の新刊は?」

「それが急展開なのですよ! なんと、ルキウス王子が西の魔王に連れ去られちゃったんです! しかも異世界の勇者・ルーイが現れて、ケイティと一緒に魔王を倒しに行くことになったんですよ!」

「しかもその新キャラのルーイが、クロスくんにそっくりなの! しかもケイティといい感じだし。まさかここに来てメインヒーローが交代するなんて、あり得るの?!」


ほぼ同時に話しかけてきた二人に対し「落ち着いて」と冷静になるように諭す。


「二人が最新刊の展開に驚いたのは分かったわ。それで、二人はこの展開を気に入ったの?」

「はい! これはこれでアリだと思います。ケイティとルーイの恋模様も、読んでいて心がキュンキュンします」

「それに急展開ではあるけれど、ちゃんと伏線が張られていたから、案外すんなり受け入れられるんだよね。ケイティが東の魔王を倒したり、ルキウス王子が勇者降臨に備えていたりしたのも、今思えば伏線だったんだろうな」


いいや違う。

フィッシャー夫人にそんな意図はなかったが、私が逆にそれらが伏線になるよう利用した。

おかげでルイがモデルの勇者を登場させやすかったわ。

何はともあれ、既存のファンでも受け入れてもらえるような内容で安心した。

せっかくシナリオを修正しても、ファンが離れては意味がないものね。


二人とそんな話で盛り上がっていると、突如会室の扉が勢いよく開かれた。

入ってきたのはルシアン殿下だ。

殿下は普段と変わらない温和な表情をしているが、その目元は少し強張っている。


「失礼。エドナ・ロビンソン子爵令嬢。君に話がある」

「は、はい! どのようなご用件でしょうか?」

「今日発売の『麗しのご令嬢様』について聞きたいんだ。今回の内容は急展開すぎる。一体、誰が考えたんだい?」

「誰が、ですか? 勿論、作者様だと思われます」

「そんな馬鹿な…! 仮に作者が考えたのだとしても、編集者が了承するとは思えない。例えば『麗しのご令嬢様』の担当編集者が変わったり……なんてことはなかったかな?」

「すみませんが、そのような話は聞いたことがありません。そもそも、私は作者様や編集者が誰か存じません。お力になれず、申し訳ありません」


深々と頭を下げるエドナを見て、ルシアン殿下は彼女の言葉が本心だと察したようだ。

当てが外れたからか、組んでいる腕の指をトントンと揺らしていて苛立ちを隠せていない。


「そっか。ただ、この内容で読者は納得するのかな? ケイティとルキウス王子が結ばれるのを、読者のみんなは望んでいるんじゃないかな?」

「確かに、ルシアン殿下の仰る通りでございます」

「せっかく宮廷画家が手伝っているんだし、人気が失速……なんてことに、ならなければいいけど」


あたかも困っているかのように振る舞っているが、エドナをそれとなく脅しているのは明白だ。

『もし今の展開で人気が落ちたら協力しない』と言っているようなものだ。


「も、申し訳ありませんでした! この件は父に相談し、評判が悪ければ物語を修正するよう尽力致します」


エドナは顔を青ざめて、殿下の意図を汲み取る。

その様子に、殿下の怒りは収まったのか、強張っていた表情が柔らかくなった。

相変わらず小賢しいお方ね。


その後。

数週間が経過したが、エドナからは改訂や出版停止の話は聞いていない。

それどころか今回の展開は読者に大変好評らしく、重版出来なのだとか。

他人から見てもケイティ(わたし)ルキウス王子(ルシアン殿下)よりもルーイ(ルイ)の方がお似合いなのだろう。

『麗しのご令嬢様』の最新刊は学院内でも瞬く間に話題となり、私とルイは道ゆく女子生徒達から『ケイティとルーイだわ』と陰で噂された。


時折、その噂を耳にしたルシアン殿下が顔を歪めている姿を見かけた。


だけどルシアン殿下のくだらない企みは、それで終わりではなかった。

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