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96話 劇と彼女の唇

「山田くん……おーい! 山田くん!」


「お!? 月野さん?」


「どうしたの? やっぱり緊張してるの?」


 現在俺たちは次、二年一組が始まるため体育館の裏のステージ裏に集まっている。

 どうやら俺が浮かない顔してボーとしていたから高野さんが心配して話しかけくれた。


 俺はさっきから吉沢さんの発した言葉の意味を繰り返し考えていた。

 それよりも吉沢さんは中川さんと同じゲームの世界の人間だったのか?

 それに巻き込んでしまってってあれはどういうことだ?


「まあ、緊張しないって言ったら嘘になっちゃうね……」


「きっと! 大丈夫だよ! ねえ、鈴音もそう思うよね!!」


「うん!! 海人なら大丈夫だよ! それに私たちもいるし! ついているから!」


「うん……ありがとう二人とも……」


 確かに今、緊張しているがさっきの吉沢さんの件が気になって実際緊張どころじゃないのだが……


「中川さんちょっといいかな?」


「ん? なに? 海人?」


「……いや、一緒にその頑張ろうって思って」


「うん! 頑張ろう海人一緒に!!」


 俺は中川さんにさっきの吉沢さんに伝えてくれと頼まれたことを伝えようとしたが中川さんに今教えて混乱させたくないと思い、伝えるのを今一旦やめる。


「あ! 山田! その服とても似合ってるな!」


 それから俺は劇に出るため服装を劇用の衣装に着替えた。

 俺の今着ている服は、サカナギが来ていた衣装にそっくりだった。

 文化祭の俺らの衣装係りの人には本当に頭が上がらない……


「うわ!!!」


「やっば!! おい見ろよあれ!」


「本当のお姫様みたーいやばい可愛い!!」


 俺の近くにいた人がある一人の生徒を見てそう感想を述べた。


 その人は中川さんだった。

 中川さんはいちご姫の役のため、赤いドレスを見にまとっていて、なんか雰囲気的に中川さんじゃないみたいな感覚に陥った。


「どう……海人このドレス似合ってる? 」

 

「うん……とっても……素敵だよ!」


 本当に素敵だ……どこかの姫みたいだ……


「みんな!! お待たせ!!」


 すると女騎士セーナ役の月野さんが戦闘服の衣装を見に纏い俺たちの前に姿を現した。


「鈴音! お姫様みたーい!!」


「ほんと? あ! 雫はなんか強そう!!」


「へへ! ワタシ女騎士だからね!」


「山田くんも似合ってるよ!」


「ありがとう……月野さんも似合ってるよ……」


 なんかみんなの着ている衣装を見ると、本当に完成度が高いな……


「おい! もうすぐ開演だぞ!!」


 魔王の衣装を見に纏っている北原が俺たちにそう呼びかける。


 俺はそれを聞いて固唾を飲む。


「お次は二年一組の劇……いちご姫と勇者サカナギとなります!」


 そうアナウンスがされるとすると俺は体育館ステージ上に向かう。劇を見にきている観客から溢れんばかりの拍手が起こる。

 俺は緊張しながらも観客の方を見ると人一倍目立つように俺に向かってピースしている涼風先輩が見えて、俺はにっこり笑う。横には如月先輩もいた。


「ある日ある日……この世界には一人の勇者がありました……」


 劇のモノローグをクラスメイトが語る。

 この劇の内容は、いちご姫のある特別な力に目をつけた魔王がいちご姫を攫い、いちご姫を勇者が取り戻すため、魔王との最終決戦に挑む、作中最終章の内容……


 この劇は俺が王様の前にひざまずくところから始まる。


「サカナギよ……お主の活躍のおかげで私たちの国ひいてはこの世界が安心に満ち溢れている。お主のおかげよ……」


「は! この世界が安心に満ち溢れているのなら私としても本望……これからもこの世界を平和にするため精進いたします。」


 俺は勇者役のため王様役の人にひざまづいてセリフを吐いた。


「大変です!! 王様! 勇者様!!」


「何事ごとだ?」


「いちご姫が……いちご姫が魔王に攫われました」


「なに!? それは誠か!?」


 こうして劇は展開され劇は終盤に訪れた。



「サカナギー! サカナギ!!」


 物語は終盤、魔王である北原を倒した後、勇者は魔王を倒す際に深傷を負ってしまう。

 俺は体育館ステージ上で倒れ込んだ。


 他の勇者パーティ役の人が俺のそばに集まって声をかける。


「どいて、私がサカナギを治す!」


 いちご姫役の中川さんが俺のところにやって来た。

 

「私……あなたがいないとダメ……だから起きて……また楽しい冒険譚をワタシに聞かせてちょうだい……」


 俺はさっきからドキドキが止まらなかった。

 だってこの後脚本には口づけ(ふり)が待っているから……

 たとえキスがふりだとしてもドキドキするものはドキドキしてしまう。


 俺は役柄目を瞑っているが中川さんが俺の顔を触る感覚がした。


 ついに来るのかキスシーン(ふり)が……

 俺はドキドキでこの場を逃げ出したい気分だったが本当に逃げ出してはダメなので俺は堪えた。


 もう終わったかな?

 中川さんに顔を触られてからしばらく経ったので俺は中川さんがもう俺に|《勇者》にキスするシーンは終わったと思っていた。


 そんな時だった……突如俺の唇に何か温かい感覚がはしった。

 

 なに!? この感覚……

 俺は見に覚えのない感覚に驚いてまだ目を開けてはいけないのに目を開けてしまった。


「……っ!?」


 俺は中川さんとキスをしていた……

 は!? は!? は!?!?

 俺は状況が理解できずその場で騒ぐわけにもいかず静かに阿鼻叫喚する。

 中川さんもしかしてふりの意味わかってない?

  

 そんなことは置いといて……俺は彼女とキスを……

 俺は劇の最中だったのでまた目を瞬時に閉じた。

 

「……あ……うぅ……」


 俺がさっき目を開けたことにより中川さんと超至近距離で目が合ったことにより、中川さんは俺から唇から自分の唇を離すととても恥ずかしそうにその場でうずくまった。


 ちょっと……セリフは……中川さん……

 俺は中川さんがその場で固まっているので心の中でそう思う。


「……あ、これでサカナギはもう大丈夫……」


 中川さんがその台詞を吐いたことにより、ようやく俺は目を開くことができた。

 まあ、さっき驚いて目を開いてしまったんだけど


 それから劇は終幕を迎えた。



 劇が終わりを告げると、俺たちは体育館ステージ裏に再度集まった。


「ねえ、鈴音見なかった?」


「え? 見てないけど……中川さんいないの?」


 月野さんは中川さんを探しているようだった、俺も中川さんがいないあたりを見渡すが、中川さんの姿は見えなかった。


「てか、演技っていうかなんというかすごかったね!」


「え? なにが?」


「だって、山田くんと鈴音! 本当にキスしてるみたいだったよ!」


「え? き……きき、キスね……」


 いや……本当にキスしちゃったんだけどな……

 周りは中川さんと俺が本当にキスしてしまったことに気づいていないのか……

 

 俺は唇を優しく触り顔を赤るめた。

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