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9話 すごく似合ってるよ……その服……

 俺たちはしばらくショッピングモール「モオン」の中を歩き、服屋である、「サニクロ」に到着した。

「これがサニクロ! 大きいね!」


 中川さんはモオンの中に入っているサニクロの店舗のでかさにあっけに取られてるようだった。


「ささ、入ろ! 入ろ!!」


 月野さんが中川さんを押して一緒に「サニクロ」に入って行った。

 俺もその後を、ゆっくりと追いかける。


 彼女たちは、「サニクロ」のレディースコーナーへと足を運んで行った。


 俺は、とりあえず「サニクロ」の入り口らへんに目立つようにマネキンに飾られてる服を眺めたりしていた。

 とりあえず、服のことは月野さんに任せれば大丈夫か。


「ちょっと、俺、ここの上の階にある本屋に行ってくるから、終わったら、またサニクロに戻ってくるよ」


 俺は二人がいるところまで足を運んで本屋に行くことを伝えた。


 なにせ、俺は服とかに無頓着だし、今この状況で、俺のやれる事なんてないしな、それに月野さんがいるなら安心だ。

 俺は小さく頷いてから本屋に向かって歩き出そうとした。


「ちょっと待ちたまえ! 山田くん!!」


 俺は月野さんに引き止められて彼女の方を振り向く。どうしたんだ? 月野さんは一体。


「どうしたの? 月野さん……」

「どうしたのじゃないよ! もしそれで、山田くんとはぐれちゃったらどうするの! 店内放送で山田くんを呼ぶはめになるよ」  


 いやいや、そんな大袈裟な。

 店内放送ってあの迷子のやつでしょ、あれって小さい子以外もアナウンスしてくれるの?


「という事で、OINE《オイン》!! 交換しよう!!」


 そう言って彼女はスマホをこちら側に向けてくる。

 OINEとは、気軽にメッセージや、電話が出来る、とても便利なアプリである。


「あっ、そうだね、じゃあ! 交換しようか、OINE……」


 俺はもじもじしながら答えた。

 何せ俺は、家族以外の異性とOINE含め。連絡先を交換するのは初めてなのだ、

 ちなみに、 橋本先輩とは、バイト先が一緒だが、特に連絡先は交換していない。


「どうしたの? 山田くん? そんなもじもじして?」

「えっ? いや。その、俺……女の子と連絡先交換するの初めてだから、緊張しちゃって……」

「えっ!? そうなの? じゃあ!つまり、わたしが山田くんの初めての女って事か〜〜」


 ちょっと、月野さん言い方……。


「そうだ! そうだ! 中川さんも、OINE! 交換しない?」

「えっ? 私は……」


 そうだ、彼女のスマホは、いわばこの世界では、使い物にならない。

 ここは、俺が彼女をフォローするべき。


「ごめんね、今、私のスマホ壊れちゃってて、使えないんだ、せっかく提案して来たのにごめんね」

「そうなんだ! スマホ使えないって結構不便じゃない? もしなんか困ったことがあったらいつでも言ってね! あと、スマホ直ったら、また交換しよ」

「うん!」


 月野さんにそう言われ、中川さんは少し困ったように頷く。

 しかし、どうするものか……。

 何か中川さんのスマホの件に関してはなにか対策する必要があるな。

 それから、服の事は月野さんに任せて俺は、上の階に上がり本屋に行った。


 ここのモオンの本屋は家から徒歩で行ける距離であり、結構来ている。

 俺はもうこの本屋の事に関しては、漫画やラノベに至って、各レーベル事に、誰かに、これは何処にあるかなんて聞かれても軽々答えられら気がする。

 まず、俺は今追ってる、漫画の新刊がないか、漫画の新刊コーナーの所に足を運んだ。


 これ、発売してたんだ。

 俺が今、手に持ってるのは、「ぼくの友達は眩しすぎるほど可愛い」という作品で


 何者でもない主人公が、共通のゲームを通じて、学校一の美少女と出会い、今までの日常が煌びやかなものへと変わって行く、いわゆる……ラブコメ作品である。


 俺はこの作品を単行本一巻から追っている。

 ちなみに今、手に持っているのは単行本三巻である。


 俺はこの漫画を買うことを即決して、手に持つ。

 それから、ライトノベルコーナーへと向かい、作品を色々見て回る。


「転生したらラブコメ漫画の主人公でした」


 ……転生したらか。

 俺はこのラノベのタイトルを見て、思う。

 この世界? いや、この現状をこのラノベに例えるなら、中川さんが転生者ってことなのか?

 俺はそんな事を考えていた。


 すると、ポケットにしまっていた、スマホが鳴る。


 俺はポケットからスマホを出した。

 スマホの通知センターからは、OINE(しずくさんからのメッセージ)と表示されている。


 俺はそれをタップして、画面に表示させる。


 (しずく)  見てみて! これ可愛いでしょ!


 そのメッセージと共に下にある一つの写真が添付されていた。


 そこには、とてもおしゃれな服を着た中川さんが試着室から姿を覗かせてる写真だった。

 中川さんは元々可愛くてスタイルがいいことから今送られてきた写真はまるでモデルの写真集の一枚を切り取ってそこに貼っつけたような写真という印象だった。

 

 その右下では、月野さんがカメラ目線でピースをしている。

 俺は思わず、スマホの画面越しの中川さんに見惚れてしまった。


 (しずく)  どうだった? 可愛いでしょ! 鈴音とわたし!!


 どうやらOINEの文面を見る限り、さっきまで中川さん呼だったのに今は鈴音呼びに変わっている事から服屋さんでなんやかんやあり鈴音呼びに変わったのだろうか?

 とにかく中川さんにこの世界で、親しい人が出来るのは喜ばしい事だ。


 (かいと) すごく似合ってるよ、その服。


 俺は可愛いとストレートに言うのは流石に恥ずかしいというか何というか、なので、無難に似合ってる、そう送った。


(しずく) そういえば! 山田くん! もうすぐ「サニクロ」での買い物、終わるよ!!


 そうメッセージが来たので、俺は買うと決めた本を持って、レジに並んで、買い物を済ませ、サニクロに向かう。


 俺がサニクロに着くと、彼女。中川さんが、レジに並んでもうすぐ会計という所だった。

 月野さんはレジの外で、中川さんの事を見守ってる。


 そして、彼女にレジの会計の順番が回って来た。

 俺は中川さんが心配だったため、レジの方に近づく。


「お支払いは、現金ですか、それとも、電子マネーや、クレジット払いですか?」


 そう、中川さんにレジの人が聞いた。

 一方——中川さんとは言うと、首をポカンとさせ、思いっきりハテナな表情を浮かべている。


「電子マネー? クレジット払い? クレジットってそもそもなんですか? 食べ物ですか?」


 そう店員さんに聞き始めた。

 それを聞いて、店員さんを始め、後ろに並んでいるお客さんなどみんな唖然とした様子をしている。

 やばいよこの状況は……。


 レジの向こうで待機している月野さんに至っては、腹を抱えて大笑いしている。

 俺は顔に大量の冷や汗をかき、レジに走って向かい、中川さんのフォローに向かう。


「あっ!現金で!! よろしくおねがいします!!」


 俺はとびっきり焦って、店員さんにそう告げた。


「あ、はい、じゃあ、税込で会計六千二四六円になります。」

「ほら、中川さん財布、財布だして」

「あっ! えと、えと」

 彼女、中川さんは、慣れない手つきで、財布から料金を支払いする。


「はい! 七〇〇〇円、ちょうだいいたします。お釣り……七五四円です……」


「ありがとうございます。」


 そう言って、彼女は店員さんからお金を受け取り、洋服を受け取って、店の外に出た。


 サニクロに出ると、腹を抱えて、月野さんが俺たちの後ろから出て来た。


「鈴音、あんた! お笑い芸人目指したら? 山田くんとコンビくんで」


 そう言って、また吹き出す。

 いくらなんでも、笑いすぎだろ、まあ、月野さんは中川さんがこの世界の人間ってこと知らないからな。さすがにギャクだと思われても無理はないか。


「ごめんね、山田くん、迷惑かけちゃったよね」

「いやいや、全然、それよりも、中川さんが無事でよかったよ!!!」


 俺は、中川さんをそう言ってなだめた。

 なによりも、無事に洋服が買えてよかった。

 そうひと安心して、安堵する俺だった。

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