82話 私……海人とだったらキスでも嫌じゃないよ
「それじゃあ、放課後……一旦大塚からもらった脚本を読んだらするから……劇に出る人は残ってくれ……」
授業中……チャイムが鳴る直前で北原が劇のメンバーに対してそう呼びかけた。
今日は涼風先輩の助っ人……いけそうにないかもな……
俺はそう思い、涼風先輩にOINEをする。
涼風先輩とは文化祭実行委員の手伝いをする時にOINE交換をしていた。
(かいと) すいません、涼風先輩、俺実は文化祭の劇に出ることになって、それで今日の放課後それの打ち合わせがあるので、手伝いに行けそうにないかも知れません……
そう送ると数分後……
(たくや) 了解だ!! 俺お前のクラスの劇、見に行くからな! 頑張れよ! 海人!!
そうメッセージが来た……俺は涼風先輩にエールを送られて嬉しくなった。
そして放課後……
「よーし! 全員揃ったな!! さっき劇に出るメンバー全員分の脚本を先生に頼んで、印刷してホッチキス止めしてもらった!! だから今からお前らに配るわ!!」
そう言って北原は俺たちに脚本を配る。
俺は北原から脚本を受け取ると、パラパラページをめくって話の大筋を見た。
なるほど、これはイチサカの最終章である魔王と勇者の最終決戦の話を劇にしたのか……
俺は大まかな大筋を見た。
そして、俺は脚本の最後……すなわち劇の終着点を見た。
勇者は魔王を倒す際、重傷を負った……
そして、その場に倒れ込んだ……仲間たち……マナが回復魔法を使うが、効果がない。
「おい! 起きろ! サカナギ!!」
「あなたはまだ! こんなところで終わってわダメよ!!」
勇者の仲間である、バリナタとセーナが倒れ込んでいるサカナギにそう言い放つ。
「だめよ! 私が絶対回復させてみせる!」
「サカナギよ! お前は魔王を倒して、世界を救うって言ってたじゃないかよ! 世界を救ったのに、お前がいないんじゃそんなのあんまりだろ! 起きろ!!」
マナとテラがそう言って叫ぶ。
すると、イチゴ姫が勇者の元にやって来る……
「どいて、ワタシがサカナギを治す!」
イチゴ姫がそういうと勇者の横にいたマナがイチゴ姫に場所を譲り、イチゴ姫は勇者の横にやって来た。
「ワタシ……あなたがいないとダメ……だから起きて……また楽しい冒険譚をワタシに聞かせてちょうだい……」
イチゴ姫はそういうと、勇者に口付けをする。
イチゴ姫の能力は……口付けした相手のどんな怪我でも治す……魔法の口付けだった。
そして、その口付けで勇者の怪我は治り、勇者は目を覚ました。
こうして、世界は勇者サカナギによって救われた。
「……え……」
俺は脚本最後に書いてある口付けという単語に焦って脚本を勢いよく閉じる。
俺が大塚さんの顔を見ると、大塚さんはこちらを見てにやけている。
あの、口付けのくだりも劇でやるのか……
俺は耳から顔まで真っ赤に赤くなる。
だって……イチゴ姫は中川さんだから……
もちろん、ほんとに口付けするわけではないけど……なんか恥ずかしい
「それじゃあ! 各自! 今日中に一通り脚本に目を通してくれ! 明日から本格的に練習始まるからよ! あと文化祭まで二週間切ってるからな!」
北原はなんだか嬉しそうに俺たちに言ってくる。
それから、俺たちはしばらく脚本を読んでから学校を下校した。
「文化祭の劇楽しみだね!!」
帰り道、俺の隣を歩いている中川さんが俺にそう言ってくる。
ほんとに中川さんがいつもの様子に戻ってよかった……
「そうだね……中川さんあの漫画読んでくれたんだ!」
「うん! イチゴ姫可愛かったよね! 私面白くて最終巻まで一気見してしまった! エヘヘ」
「そうなんだ……」
中川さんはそう言って爽やかな笑顔を馴染ませる。
「あの、脚本すごいね! ちゃんと漫画を再現されてた!!」
「うん! ほんとだよね!」
あれを完璧に脚本にしてくるあたり大塚さんはとてもすごいのかもしれない……
「それで……脚本の最後の方にさ……その……口付けって書いてあったけど……あれって、私と海人が……キスするってこと?」
「え? あ! 違う違うー!! あれは! 確かに漫画だとそうだけど、流石に劇ではフリだけよ!」
俺は焦ってそう言った。
中川さんがそんな事を言うから、俺は彼女の唇をうっかり見てしまって、赤面する。
「そうなんだ! ……でも、私……海人とだったらキスもしてもいいよ……」
すると、中川さんは俺向かって何かを言った。
「うん? 何か言った?」
俺はさっきの彼女のそうなんだ! までしか聞こえておらず、彼女に聞き返す。
「うぅ〜〜、海人のバカ〜〜」
俺が聞き返すと、彼女はそう言って手で顔を隠しめちゃくちゃ恥ずかしそうにしていた。
どうしたんだ? 中川さんは……
まあ……何はともあれ彼女が元の調子に戻って本当によかった……
俺は彼女の横でそう思った。




