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80話 海人なんか嫌い…………好き (中川鈴音)

 私はあの後……真っ直ぐ海人の家に帰らず、特にどこかに行こうとは考えずとりあえずどこかに無我夢中で走った。

 

「……はぁ、はあ……ここ……」


 私が走った先に見えたのはとある一つの河川敷だった。

 ここは……私が海人と出会ったあの道に行く前に訪れていた河川敷……

 もう……私はこの世界に来てから、四ヶ月経つのか……

 私は河川敷にある川に反射する夕日の光を見ながらそう思った。


 それから私はとりあえず河川敷に腰を下ろした。

  

「余計なお世話だ! バカやろう!!」


 私はさっきが教室を出た時、雫が叫んだ言葉を思い出す。

 雫……私が何を考えてるかわかっちゃったか……

 海人だって私がいきなりそんな態度をとりはじめてきっと困惑してるに違いない……


 私は……

 すると、私の目から涙が流れ出した……私の目から出た雫は静かに下の芝生に落ちていく……


 好きな人を諦めるのはこんなに辛いことだったのか……

 私は自分から溢れる、溢れんばかりの涙を見てそう思う。


 しばらく経つと、私はその場から立ち上がり、私の今の家……海人の家へと向かった。


 私は覚悟を決めながら歩いた。

 

 結局……海人が文化祭関係の仕事から家に帰っても私と海人は会話を一切しなかった。

 ともいうより……私が彼を避けていたから……

 今は……一緒に住んでいるのにこのままどうしよう……私は不安が頭をよぎった。


 次の日……

 私は海人が起きてくるよりも早くに起きて……朝ごはんを作り置きして、今日も昨日同様早めに家を出た。


 なんだか今日の朝の風はいつもより冷たく感じた……


 学校が始まると今日もいつも通りガス文化祭の話し合いが始まった。


「あたし!! 脚本……明日にはプロトタイプだけど、大まかな流れが書いたもの! 持って来れると思う!!」


「おおーー!! そうか!!」


 私たちのクラスがする劇の演目の脚本担当になっている大塚さんが俺たちにそう言ってきた。

 それに対して、北原くんがとても嬉しそうな声でそう言う。


「じゃあ! 明日には劇の配役! 決められるな!! ということで! みんな! 明日までに劇の配役何するか考えていくように……とは言ってもまだどんなキャラがいるかわからないんだけどな!!」


 そう北原くんが言って、これにて今日の文化祭のクラスの話し合いは終了した。


「……鈴音……後でちょっといい? 昼休み……ワタシ……あなたに話がある……」


 一時間目の話し合いが終わると、雫が私のところにやって来た。彼女の顔は真剣だった。


「……うん……」


 私は静かな顔を見ずに下を向いてそう彼女に言い放った。


 そして昼休み……

 私は静かに連れられて今は使われていない空き教室へと連れて行った。


「……鈴音さ……山田くんの事避けてるよね?」


 誰もいない空き教室の中に二人で入ると、雫が教室の扉を閉めてそう言った。


「……避けてるって……別に……」


 私は動揺しつつそう答える。何故動揺しているかは、雫に避けていることを当てられたから……さすが……雫、なんでもお見通し……


「そういえばさ、鈴音もこういう真剣な感じで話すのって初めてだよね……」


「……うん」


 雫はなにか後ろめたさそうに空き教室にある机を見たがらそう言ってくる。


「……ワタシ……山田くんの事が好きなの……」


 すると、彼女にいきなりそんなことを言われて私は固唾を飲む。


「……へ、へぇ〜、雫が海人を……まあ、海人優しいからね……」


「……ほんとは、知ってるくせに……嘘ばっかり……」


「……っ!!」


 雫は自分の髪の毛をいじりながら私に言ってくる。かたや私も何故雫が海人の事が好きなことを知ってるのにそんなよそよそしい知らなかった態度をとったのかわからなかった……


「ワタシは打ち上げたよ!! 鈴音は?」


 すると雫は机の上に座り始めて私にそう聞いてきた。


「私は……海人の事なんて嫌いよ……」


 私はそう言い放った。


「……なんで……なんでなの!! 鈴音!! ワタシ知ってる!! あなたが山田くんの事好きなんだって!! どうして!? あなたは!!」


 雫は勢いよく立ち上がり私の方を思いっきり掴んでそう半ば叫ぶような声で言って来た。  


「……どうしてって……私は彼の事が嫌いになっただけ……」


「嘘ばっかり!! だったら! なんで……泣いてるの?」


「……え?」


 気がつけば私は、目から涙を出してした。


「ほんとは嫌いじゃないんだろ? 自分の気持ちに正直になれよ! ワタシに変な遠慮なんてすんなよ!」


「嫌いよ……」


「なにが! 山田くん……雫のこと……ちゃんと見てあげてね……雫……とても優しくていい子だから……よ!! ワタシは! あなたなんかの助けなんかいらなくても! 山田くんの特別になって見せる!! あなたは!!」


「海人なんか嫌いよ……」


「逆に迷惑なのよ!! あなたが余計な気を回されても! そんなんで山田くんと特別になれても! ワタシはひとつも嬉しくないし! 誰も喜ばない!! いい!! 鈴音!! あなたの気持ちはどうなの!?」


 雫は耐える間も無く私に泣きながらそう自分の気持ちをぶつけてくる

 

「海人なんか嫌い…………好き……」


 私は溢れん涙の中……そう口を開いた。


「好きならいいじゃん!! なんでワタシなんかに遠慮するのよ!! 山田くんの事が好きなら! ワタシと正々堂々勝負しなさい!! どっちが山田くんの特別になれるか勝負よ!!」


 そう私に言い張る雫の顔は……覚悟に満ち溢れていた。

 私もその覚悟に応えなきゃいけない……

 もう、私は海人を諦めようとしたりしない……


「……負けないから……雫……」


「うんうん!! それでこそ! 雫!!」


 そう二人で笑い合った。


 そして、私たちは教室に戻った。

 教室に戻ると真っ先に海人が席で田中くんとご飯を食べているのが目に入った。

 なんだか、さっきとうって変わって海人の顔を見た瞬間居ても立っても居られなくなった。


「海人!! お昼ご飯! 一緒にご飯食べよう!!」


 私はそう言って自分の弁当を持って馬人の席に向かった。

 そんな私を後ろで雫が私を追いかけて


「あ! 待て! 抜け駆けするな!! 鈴音!!」


 私はそう言って笑って私の事を追いかけてくる雫に微笑みながら思った。


 負けないからね……雫……

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