79話 余計なお世話だバカやろう!
俺たちは家に帰っても未だこの沈黙は晴れない……
俺はソファに座りスマホを見ながら沈黙を過ごす、そして俺が座るソファの右にあるテーブルには中川さんが何かを悟った様子でただテーブルの一点を見つめて……そこに佇んでいる。
いつもは元気に俺に話しかけてくる彼女が今日はなんだか様子がおかしい……いや、今日ではない……さっきの下校時からおかしいのだ……
今の彼女からはどこか寂しげな……そんな感じがした……
俺はスマホをポケットにしまいテレビのリモコンをつけてテレビを見始めた。
そしてテレビの番組表を流し見する。
すると……深夜一時から、イチサカが再放送されると番組表に書いてあった。
まったくなんてタイムリーなんだ……
俺はそう思うと同時に今日のある出来事を思い出す。
「後で見せてあげるよ……俺持ってるから……漫画」
これは中川さんに俺が言った言葉だった。
俺は約束通り彼女にこの漫画を見せてあげなきゃ……そう思い、彼女に言葉をかける。
「中川さん……そういえば、さっき言ってた劇の演目になった漫画なんどけどさ、今、俺持ってくるからぜひ読んでみてほしい……」
俺はそう言ってその沈黙を破った。
「……うん……読んでみるよ……」
そう言った彼女の話し声はとても凍っているように……冷たかった……
そして次の日の朝……
俺がベットから起き上がりリビングに行くと、彼女が制服姿のまま通学カバンを背負って玄関に向かうとしていた。
「中川さん……もう行くの?」
「うん……ここに朝ごはん用事してあるから食べてね……それと……今度からもう一緒に登下校するの……やめよう……」
「え? どうした……」
「……そういうことだから、ごめんね……」
彼女は俺が話す声を遮り、ごめんねと言って、家を出て行った。
ほんとにどうしたんだ……彼女は……
「おはよう、海人!!」
「ああ、おはよう……」
俺は学校に到着してクラスに入ると正孝と朝の挨拶を交わす。
俺はその後、彼女の方をチラ見したが、彼女は普通に橘さんと月野さんと仲良くおしゃべりしていた。
俺が自分の席に座って筆記用具を机に置くと、月野さんが俺の先にやって来て話しかけてくれた。
「おっは! 山田くん……そういえばさ、今日は鈴音と一緒に学校来なかったの?」
月野さんが中川さんの方を見ながら俺に言ってくる。月野さんは俺と中川さんが毎日登下校を一緒にしていることを知っている……
「……うん……」
「……もしかして、鈴音となんかあった?」
「……え?」
「だって、鈴音……いつもの感じじゃないからさ、さっき喋ってたけど、いつももっと元気というか……なんというか……なにか、山田くん知ってる?」
月野さんはそう心配を口にする。
彼女は俺の目から見て普通そうだが……やはり、中川さんは何かあったのか?
「……実はさ……」
俺は昨日の家でのことを月野さんに話した。
家でいつも元気そうに話す彼女が昨日は元気がなかったこと……俺とほとんど会話をしなかったこと……
「…………」
俺がその話をすると……月野さんは何か真剣な顔で中川さんのことを見つめていた。
「……月野さん……」
「え? いや〜どうしたの? あ! 大丈夫! 大丈夫!! 後で鈴音と話をしてみるよ!! 教えてくれてありがとね! 山田くん!」
相変わらず元気のいい声でそう俺に言ってくる、彼女は口は笑っていたが……目は笑っていなかった……
今日はなんだか俺は中川さんに避けられている感じがした。
俺は何か彼女にしてはいけないことを……怒らせるようなことをしたのか考えてみたが……思い当たる節は見つからなかった。
放課後……
「山田くん……鈴音!! そろそろ、会議室行こっか!! 涼風先輩と奏先輩待ってるから!!」
月野さんは俺たちに元気よく呼びかけて来た。
「私は……今日はいい……」
「えぇ!?」
月野さんが中川さんの肩をポンと触ると中川さんは間髪言わずにそう言ったので月野さんは思わずびっくりして声を上げる。
「鈴音来ないの?」
「うん……私、今日は疲れたから帰るよ……」
そう言った彼女は今まで見たことのない顔をしていた。
「……なんで……寂しいよ鈴音……行こう!!」
そう言う彼女を月野さんが彼女の腕を掴んで引き止める。
「もういいの……疲れたから……私は今日帰る……雫……腕を離して……」
中川さんがそう言うと月野さんは吐息を吐き、中川さんから手を離した。
そして、中川さんは教室の外へと歩き出し、教室のドアの前で立ち止まり振り返る。
「山田くん……雫のこと……ちゃんと見てあげてね……雫……とても優しくていい子だから……」
中川さんの顔は、とても優しく……微笑んでいた。だが俺は彼女の顔を一瞬見た感じ……彼女の顔は意味深な顔を浮かべていた。
「……あ……」
中川さんは俺にそう言い残し走って教室を出て行った。
いつのまにか彼女は俺の事を海人から山田くんへと呼ぶようになった。
すると、俺の横に呆然と立ち尽くしていた、月野さんが一言だけ……あ……と言葉を漏らし、何かを悟ったようにその場から走って教室の外に出て
「余計なお世話だ!! バカやろう!!」
そう中川さんに向かって叫んだ。
その声のボリュームはとても大きく……クラスがみんなはびっくりして月野さんを見るほどだった。
かたや俺も月野さんの後を追って、教室の外に出て、月野さんの横に立つ。
「月野さん……どういう……」
「バカやろう……バカやろ……バカ……」
俺は彼女の方を見て話しかけるのを中断した……これに俺は関わっちゃダメな気がしたから……
月野さんは下を向きながら……声にならない声でそう言いつつ……泣いていた……




