70話 その子の名前は山田海人くん…… 月野雫視点
ワタシ……月野雫には好きな人がいた。
その子の名前は山田海人くん……
ワタシが彼を初めて認識したのは去年の文化祭だった……
去年の文化祭準備の時……ワタシのクラスは劇の内容を決めることで揉めていた。
ワタシはその時学級委員長だったために……みんなをまとめなきゃ……そういう思いが先走って空回りを起こし今の状況をさらに悪化させてしまった……
ワタシはお昼休憩の時一人屋上で泣いていた。
こんなみんなをまとめられない自分が……とても情けなかったから……
その時だった……
ある一人の男の子が屋上へとひっそりやって来た。
「……たまにはこうして一人で飯を食うのも悪くはないな……」
彼はそう独り言を呟いて屋上にひっそりと座った。
あいにく彼はワタシには気づいてなかったから……
ワタシはひっそりと屋上から出て行こうとした。
だってこんな顔誰にもみられたくなかったから……
すると運悪くワタシはつまずいてその場でずっこけてしまった。
「いっててて……ほんとについてないな……」
「あの……大丈夫ですか?」
すると屋上でご飯を食べていた彼がワタシに手を差し伸べてきた。
ワタシの目は今涙でぱんぱんに腫れていたのでワタシは思わず彼から目を逸らした。
「いや……大丈夫! 大丈夫!! エヘヘ! これくらい痛くないから!」
「それもそんなんだけど……その目……あの俺も今さっき気づいたんだけど……さっきからずっと泣いてたからなんかあったのかなって……」
!?
やっぱり彼は気づいていたか……
でもこのことを誰かに話せば気が楽になるのかな……
「あの……ちょっと聞いてくれるかな?」
ワタシはそれから見ず知らずの彼にワタシが泣いていた原因をいろいろ話した。
「それって……あなたが全部自分一人でやらなきな行けないことなのかな……」
「……どういうこと?」
「いやだって……クラスにはさ……三十人以上の人間がいるわけでさ……それを一人でまとめるなんて普通できることじゃないよ……」
「でもワタシ学級委員長だし!! ワタシがしっかりしないと!!」
「少しはそう一人で抱え込まず友達を頼ってみたらどうかな……」
「!? ……友達……」
なんでワタシは一人でやろうと……もっと周りを頼ろうとしなかったんだろう……
ワタシは彼にそう言われて少し肩の荷が降りた気がした。
「あの……あなた名前は?」
「……山田海人……」
ワタシは彼の助言どおり友達を頼った……
すると文化祭は大成功を収めることができた。
ワタシはずっと彼にお礼が言いたかった。
……思えばこの時からワタシは彼の事が気になっていたかも知らない……
するとあれから一ヶ月した時……
ワタシは買い物をしようと道を歩いていると
一人の子供が木の前で慌てていた。よくよく見るとその木には一人の男の子が登っていた。
「お兄ちゃん!!」
「大丈夫だぞ! 俺が取ってやるからな!」
ワタシがみた話だと男の子が持っていた風船が風で飛ばされて木に引っかかってしまったらしい……それを男の子……山田くんが木に登って風船を男の子に返したという話……
「ありがとう……お兄ちゃん!!」
「もう! 飛ばされるなよ! ニシシ!」
「優しいな……なんだかかっこいい……」
は! ワタシなに言ってるんだろう……
ワタシは二人がそう話す会話を聞いて咄嗟に口に出たかっこいいという言葉……
思えばさっきから胸の奥がドキドキした。
こんな感情は初めてだった。
気づけば彼のクラスに用があって行く時も思わず彼のことを探してしまった。
ワタシは彼の事が山田くんが好きになった。
それから二年生になって彼と同じクラスになった。
「だーれーだ!!」
「月野さんでしょ? どうしたの?」
同じクラスになったことでワタシと山田くんは話す機会が多くなった。
そして鈴音がこの学校に転校してきてワタシは山田くんと話す機会もとても多くなった。
山田くんとは鈴音と友達になってから買い物やプールなど一緒にいろいろ体験した。
二人を見ているとなんだかお似合いって感じで羨ましかった……
ワタシの大切なお友達……鈴音……
最近……彼女が山田くんを見る目はワタシと一緒の目をしているような感じがした。
極め付けは鈴音と山田くんが一緒に住んでいること……ワタシは鈴音がこの世界の人間じゃないことに驚いた。
それよりもワタシは一緒に住んでいる……その事実にちょっとずるいと思ってしまった。
ワタシは鈴音のことも大好きだけど……
山田くんも好き……
でも……もし……願いが一つ叶うのなら……
……ワタシは山田くんの特別になりたい……




