62話 中川鈴音と中川鈴音
「海人! 今日は付き合ってくれてありがとね!」
「いや、俺も暇だったから……それよりも中川さんの気に入った服が見つかってよかったよ!」
中川さんの風邪完治からの三日後……今日は日曜日……最近寒くやってきたということで中川さんが服買いに行くというので、俺がお供して今に至る。
俺たちはいつもの「モオン」を出て近くにあるカフェに行こうと歩いていた。
「ねぇ! あそこ、すごい人じゃない?」
道を歩いているとひらけた場所にある広場に人が集まっていた。
集まっている人の中にはカメラを持っている人がいた。
「ねぇ! 海人! あれ見に行こうよ!」
「そうだねせっかくだし!」
俺は彼女の提案で人が集まっている広場へと足を運んだ。
よーくカメラを手に持ってるカメラマンさんの方を見ると何か人を撮影してるようだった。
俺は撮影していると思われるその人を見ると。
……こ、これは!?
なんと、そこには、あの有名コスプレイヤーみれいさんがなにやらイベントをやっているようだった。
俺はみれいさんを一目見ようと近づいた……すると、みれいさんのコスプレをしているキャラは中川鈴音だった……
まじか!! みれいさんが中川鈴音を!?
中川さんをコスプレする人は少ないのにまさか有名コスプレイヤーの人がコスプレしてくれるとは……
いや、そういえば……俺がみれいさんを知ったのは確かSNSで私立金森学園の中川さんとは別のヒロインのコスプレをあげていてそれが俺の目に入ったからだったな……
「海人! あの人! すごく私に似てるね!」
中川さんは、驚いたようにそう俺に言ってきた。
ええ、それりゃあなたのコスプレをしているからね……本人さん……
「てか、すごい完成度だな……」
俺は最初にSNSで彼女を見た時から思っていたが完成度がえげつない……みれいさんをみているとまるでゲームのヒロインがゲームから出てきてここにいるかのような感覚に陥る。
まぁ、横に本当にゲームから出てきたヒロインがいるんだけどね笑
「私! もっと近くで見たい!!」
そう言って彼女は近くでみれいさんの事を撮影してるカメラさんたちにまじってみれいさんの事をみていた。
俺もすぐさま彼女の後を追って一緒にみれいさんを見た。
やはり彼女はすごいな……私立金森学園の中川鈴音の表情……仕草を完璧にトレースしてカメラマンさんたちを魅了している。
すると、みれいさんはこちら側を向いて満面の笑みを浮かべてきた。
その笑顔は中川さんの笑顔そのものだった。
俺はそんな笑顔にしばらく心が奪われていた。
そして、コスプレのイベントが終了した。
みれいさんを撮影されていたカメラマンさんたちは続々と広場から帰っていく。
「ねぇ! すごかったね!! あの人!」
「そうだね! 俺もびっくりしちゃったよ……」
俺はさっきの中川鈴音のコスプレをしていたみれいさんのことを思い出していた。
あれはまさに圧巻というか……本当に中川鈴音が二人いるかのような感覚だった。
「ねぇ! あなたももしかしてレイヤーさん?」
「え?」
すると、中川さんに一人の女の子が話しかけてきた。
「レイヤーってなんですか?」
中川さんは小首を横に傾けてキョトンとする。
「え? ごめん違った?」
「はい! 私レイヤーじゃなくて女子高生です!」
「え?」
中川さんがその女の人に意味のわからないことを言ったので女の人は困っていた。
「中川さんレイヤーというのはコスプレイヤーの事だよ……」
俺は中川さんにレイヤーの説明をした。
「コスプレイヤー?」
そっか……彼女にはそこから説明をしなきゃか……
「ごめんなさい、あなたが私の好きなキャラにそっくりだったからてっきりレイヤーさんかと……」
するとその女の人は中川さんにそう言って謝った。
「そうなんだ! その私に似てるっていうキャラは、一体誰なの? 知りたい!!」
いや……あなたの事ですよ……多分
中川さんは女の人にそう聞き返した。
「その……中川鈴音って言うんだけど……知ってる?」
「へぇー! 私と同じ名前のキャラがいるんだ〜! あ! 私の名前も中川鈴音って言うんだよ!!」
「え?」
中川さんが女の人にそう言うと女の人はひどく驚いたような顔を見せた。
そして……ちょっと……何かを考え込むようにフリーズしていた。
てか、それは好きなキャラと同じ顔で尚且つ同じ名前が目の前に現れたらフリーズするわ……俺ももしかしたら転校してきたのが中川さんじゃなく三葉さんとかだったりしたら……うん、きっとすげー叫んでると思う……迷惑にならない範囲で
「そうなんだ!! すごいね! 私の好きなキャラと同じ名前でしかも見た目まで似てるなんて!! これはもう運命だよ!!」
すると、その女性は中川さんの顔をよく観察してそう言った。
「あ! 紹介遅れたね……私名前……みれいって言うの! 一応中川鈴音ちゃんとかでコスプレやらせてもらってるの!」
「コスプレ? 中川鈴音ちゃん?」
「あ、もしかしてコスプレしらない? コスプレっていうのはねアニメや漫画などの登場人物の衣装を身にまとい、心身ともにそのキャラクターになりきるコスプレイヤーのことを言うの! 私さっきそこで撮影会してた時にあなた見に来てくれてたでしょ……」
「え? さっきの人ですか?」
「そうよ……」
俺は横でそんなことを話す二人の会話を聞きながら目の前にあのみれいさんがいる事実にひどく驚いていた。
え? あのみれいさんですか!?
「私さ、あのキャラにはずいぶん助けられた……」
「助けられたって……」
「私……昔仕事で失敗してひどく落ち込んでる時にさ……私立金森学園のゲームの中に出てくる中川鈴音ちゃんを見てると心が癒されてまた明日から頑張ろう……そんな気分になったの……だから……ありがとうって言いたくて……」
「なんで私にありがとうって?」
「ううん、なんでかわからないけど……ありがとう……」
そうみれいさんは中川さんに感謝を口にした。
もしかして……みれいさんは目の前の彼女が……あの中川鈴音と気づいて……?
いや、それはないだろう……でも彼女は中川さんに感謝を言いたいのだ……たとえそれが本物でも本物じゃなかろうとも……
「さて、ねぇ、鈴音ちゃん……一緒にツーショットでもどう?」
「え? ツーショットって?」
「一緒に写真撮ることだよ……だめかな?」
「いいよ!!」
そして、みれいさんと中川さんは笑顔でツーショットを撮った。
そして、広場を出てカフェにむかっている道中
「中川さん……なんだか嬉しそうだね……」
「……うん!!」
そう嬉しそうに言う鈴音のスマホの写真フォルダーにはさっきのみれいさんとの写真が大切に保管されていた。




