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56話 本当にありがとう……海人……

海人が一位でゴールした後、二位でゴールした一人の男子はその場でたたずんでいた。


「……俺は……負けたのか……」


ーーーーーー


 俺の名前は四乃森亮しのもりりょう

 俺は昔……隣の家に住んでいる男の子によく遊ぼうと声をかけていた。


 その俺の家の横に住んでいる男の子の山田海人は、こんな俺の唐突な誘いも嫌な顔せずに付き合ってくれた。


 よく、海人とはけんけんぱや宝探しゲームをして遊んだっけな……

 俺はその中でも海人とのかけっこ勝負がたまらなく好きだった。

 俺は昔……とても足が遅くいつも海人に負かされていた。


「次は! 次は絶対負けないからな!!」


「うん! またかけっこしようね! 亮!!」


 あいつは、何だ俺が勝負を挑もうとしてもなんだかんだ付き合ってくれた……


「海人!! 次が最後の勝負だ!!」


「え? 最後……? どういうこと?」


 俺はある日、海人にそう言った。

 それは、俺が転校してしまうからだった……


 そして、最後の勝負、俺は全身全霊をかけて挑んだがやはり勝つことはできなかった……


「海人……君は強いよ……」


「ねぇ、亮……転校しちゃうって本当なの?」


 そう海人は悲しそうに俺に聞いてきた。


「うん……親の都合でね……」


「そっか……寂しくなるね……」


「俺……絶対足早くなるから!! さしたらまた勝負しよう!!」


「うん!! 約束!! 亮!!」


 俺と海人は、そう約束をした。

 約束したのに……


 俺は何年か経ちこの高校に入学をした。 

 入学してしばらくすると、別のクラスに山田海人という名前のやつがいることがわかった

 俺はあいつの顔を一目見に行ったが俺はあの山田が昔よく遊んだ海人だということを一瞬で理解した。


 それから、去年の体育祭前……俺はリレーの選手に選ばれた……そして、帰るために廊下を歩いているとある二人の話し声が聞こえてきた。

 一人は先生……もう一人は海人だった……


「なぁ、山田……お前やっぱり……リレーの選手出てくれないか……」


「ごめんなさい先生……やっぱり俺は……そんなたまじゃないっすよ……」


 俺は二人の会話を廊下の柱の影にかくれて盗み聞きした。


「そうか……わかった……先生もあまりしつこくはしたくないからな……まぁ、気が向いた入ってくれ……」


「はい……ごめんなさい……先生……」


 なんだよ……なんでだよ……小さい頃俺を負かしていたお前が何で出ないんだよ!!


 俺は一つの喪失感に襲われた。


 そして、一年後……

 俺はどうしてもあいつともう一度戦いたい……

 そう思い……体育祭を利用して一組のクラスに出向いた。


「ふふ、大したことではないよ……もうすぐ体育祭があるだろう……それで一組に宣戦布告する……」


 一組のクラスに着くと俺はそう言い放った。

 とは言っても俺は1組そのものに喧嘩を売るつもりはなかった……でも、これも全て海人との再戦をするために……


「君に姫は相応しくない……姫に相応しいのはこの俺だ……」


 そして、宣戦布告の後に俺は海人本人にそう言い放つ……

 こう言えば海人が出てくるだろうとふんだからだ。


「山田海人……時期にわかる……俺の方が暇に相応しいと……」


 これで彼との勝負のお膳立てはすんだ……

 あとは……


「頼む!! 今手!! お前リレーのアンカーに立候補して棄権してくれ!!」


「はぁ? お前なに言ってるんだ?」


 俺は親友の今手に頼み込んだ……


「はぁ〜お前の頼みだしな! 仕方ねぇーな! でもよ体育祭終わったら肉でも奢れよ!!」


「ああ! すまないな……」


「てか、お前なんださっきの宣戦布告とかなんやらは! お前そんなキャラじゃないだろ!!」


「あはは、ちょっと張り切っちゃって……」


「そんなに山田と戦いたいなら正直にいえばいいのにあの時の亮は、俺だ! って」


「それは俺が海人に勝った時にしたいな……」


「へへ、それは、プライドか?」


「あぁ……プライドだ……」




 ーーそして、体育祭のリレーが始まって、今手のおかげで本当に海人がリレーのアンカーとして、やって来た。


「君と戦えるのを……ずっと待っていたよ……俺は嬉しい……また君とあの時のようにこうやって競うことができて……」


 俺は、バトンを受け取る前に彼にそう言ったが、

海人は聞こえてなさそうだった。

 ……絶対に君に勝って……あの時の約束を果たす……


 そして、俺はバトンを受け取って海人よりも一足先に走り出した。


 そして、無我夢中で一週走っていると……俺の後ろから海人がみるみる近づいてきていた。


 俺は一瞬後ろを向いた。

 俺を泣かそうとする君の瞳はまさしく昔のあの俺と遊んでいた時の瞳そのままだった。


 俺は何だか嬉しくなった。



 ーー結果は海人に負けた。


 勝負に負けて悔しい気持ちはある……でもそれ以上にこの勝負が楽しかった……


 俺はリレーが終わるとテントへと歩いて行こうとした。

 すると、海人が俺の元にやって来て


「とっても速かったよ……亮……」


 そう言った。 

 彼は今確かに俺のことを亮と昔の呼び名で言ったのだ


「お前!? 俺のこと気づいて……」


「気づくって……今さっき気づいたんだけどね……久しぶり亮……」


 ……っ!?


「全く……亮! 昔と全然違うんだもん!! 印象が!!」


「海人……」


「ありがとう……亮……」


 俺は海人と握手を交わした。


 あぁ……俺は負けたのに何だこの気持ちは……

 俺があの時の亮だとあいつに気づいてくれていたこと……あいつが俺のことを覚えていてくれていたことがこんなにも嬉しいなんて……


 本当に……ありがとう……海人……

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