55話 みんなが俺を応援してくれてる……
「やぁ、来たのかい……山田海人くん」
俺がアンカー待機場所に到着すると、四乃森にそう話しかけられる。
「ああ……あんなに今手に頼みこまれたらな行かないとだろ……」
「ふふ、君は相変わらずかっこいいね」
もちろん今手にあんなに頼まれたからという理由は、嘘である。
本当は、四乃森……お前に勝つために……
すると、リレーを終えた、ゲームのヒロインが俺のところにびっくりした表情でやってきた。
「山田くん……リレーに出るの?」
「ああ……」
「……その……私はこのぐらいしかできないけど……頑張ってね」
すると彼女は俺の両手を握ってきた。
「私の力を少し分けてあげるよへへ」
「ありがとう……なんか少し力が出てきたよ」
すると、彼女は俺の両手から手を離して……
「頑張ってね……行ってらっしゃい!!」
「ああ!! 頑張るよ!! 行ってきます!!」
俺と彼女は俺がバイトに出かける時のような日常の挨拶を交わす。
今は六番目の走者が走っている……現在赤団三位……一位は、白団か……
そして、七番目の走者にバトンが渡った時、俺たちはテイクオーバーゾーンに横並び並ぶ。
赤団の七番目の人が追い上げのおかげで現在赤団二位だった。相変わらず白団は一位
続々と赤団のバトンが俺に近づいているのが見える……
「君と戦えるのを……ずっと待っていたよ……俺は嬉しい……また君とあの時のようにこうやって競うことができて……」
横で四乃森が俺に向かってそう言うけど俺は四乃森の話があんまり頭に入って来なかった。
それほど俺は今の状況に怯えていたのだろう……
当然だ……いきなりアンカーやってくれだなんて……怖気つかない方がおかしい……
だが、今の俺には応援してくれているゲームのヒロイン|《中川さん》がいる……俺はもう君をゲームの外から見ているプレイヤーじゃない……君のとても仲がいい……とても仲の良い友達だ……
そして、七番走者がテイクオーバーゾーンについて、俺にバトンを渡す。
順位の関係性で四乃森が先にバトンを受け取ってスタートしていたが、俺はそんなこと考えずにかけだした。
俺はある一定ペースをキープして、四乃森の後ろに喰らいつく……
アンカーは、グラウンドを一週半走らなきゃ行けないため、ペースを配分を考えての結果だった。
「いけー! 山田!!」
「山田ー! おせおせ!!」
赤団のテントから俺の応援が聞こえてくる。
だが、四乃森との差は、縮まることなく、逆に離れていく……
後ろの三位の青団の人も俺を抜かせる射程位置につこうとしている。
「くっ! やっぱり……無理なのか……」
俺は走りながら……必死に喰らいつく……すると
「頑張って!! 頑張って!!」
そう一人の女子生徒の声がこのグラウンドに響き渡る。
そう中川さんである……
彼女は喉が枯れそうな勢いで俺のことを応援すべく声を出していた。
そして、俺は走馬灯のように中川さんと初めて会った時のことを思い出す。
「ふふっ! これからよろしくね! 山田くん!」
「カレーライス! 私それにする!」
「ふふ、山田くんも、そんな美味しそうに食べるんだね!」
「ねぇ、山田くん……ここのプールってお魚さん泳いでないの?」
「ねぇ! 山田くん花火!! また一緒に来ようね!!」
「ありがとう!! 山田くん!! 大好き!!」
これは夢なんかじゃなく……現実だ……
ありがとう……中川さん……君と……出会ってから俺も知らない事をいろいろ経験させてもらった。
だからありがとう……
「頑張ってー!! 海人!!!」
「っ!? ……!!」
中川さんが今日一番の声を張り上げて俺の名前を叫ぶ。
俺はそれを聞いて思いっきり地面を踏み込みそして、ける……
「うおおおおおおーー!!」
俺は叫び声をあげて、加速した。
もう、ペース配分なんてどうでも良かった……
そして、みるみる四乃森との差が縮まる。
「おいー!! 行くぞー! 山田コール!!」
赤団応援団長がそう赤団の人たちに呼びかけて、俺の応援がさらに大きくなる。
気づけば……後ろの三位である青団の人とは差が開いていて、俺と四乃森との一騎打ちになっていた。
「いけー!! 山田くん!!」
「頑張れ!! 頑張れ!!」
最初は赤団の生徒たちだけだったが、気づけば団関係なく全ての団の人が俺を応援してくれていた。
「頑張れ!!」
「頑張れ!! 頑張れ!!」
「頑張れ!! 頑張れ!! 頑張って!!」
俺は走りに集中していて、あまり聞こえなかったがこのグラウンド中に頑張れが響き渡っていた。
俺は泣きそうになるのを堪えて、走り続ける。
「……頑張って!! 海人!!」
「行けーー!! 山田くん!! ファイト!!」
「山田!! 必ず勝てよ!!」
「海人!! 見せてやれ! お前の力を四乃森によ!!」
そう、中川さんと月野さんと橘さんと正孝が叫ぶ。
俺は走っている背中を中川さん、月野さん、橘さん、正孝に押されていような感覚に至った……
「海人!!!」
「山田くん!!」
「山田!!」
「海人!!!」
みんな……ありがとう……
……俺……勝つよ……必ず……
俺はそれをきっかけにさらにスピードを上げた。
気づけば四乃森との差はあと少し……
そして、リレーはあと半周を突破していた。
「あと……少し……少しで……」
俺は限界が近づいていた。
「頑張れ!! 山田!! お前ならできる!! 騎馬戦を俺と一緒に駆け上がった!! お前ならな!!」
すると、俺の近くに走ってきた北原がそう言ってきた。
……北原……!?
「よく聞け!! お前を応援する声を!! お前の名を呼ぶ声を!! いいか!! お前は一人じゃない!! みんなついている!! 頑張れ!! 頑張れ!!」
北原が泣きながらそう言ってきた。
応援の声……応援……
よく、耳をすませば俺を応援するあまたの声援が聞こえてくる。
……みんなありがとう……力をくれて……
俺は最後の力を振り絞り、さらにスピードを上げた。
「うおおおおおおおおおーーー!!!」
そして、遂に四乃森を抜かした。
「おおおーーー!!!」
俺が四乃森を抜かした時……赤団のみならずいろいろな団から声援が上がる。
そして、そのままゴールまで突っ走った。
「これが!! みんなで掴んだ勝利だ!!」
俺はそう言ってゴールの旗を一位でくぐる。
「おおおおおおーーー!!!」
俺がゴールをすると、体育祭会場のボルテージは、MAXとなり、歓喜の叫びが聞こえてきた。
ゴールをすると中川さんは、俺の元に駆け寄ってきた。
「海人ありがとう!! 頑張ったね!! 海人は私のヒーローだよ!」
この時、彼女が何かを喋ったが……声援で聞こえなかった。




