3話 こっちの世界のご飯は美味しいね!!
「そういえば、中川さんのいた世界ってどういうとこなの?」
俺は目の前でテーブルに座ってる彼女を見てそう聞いた。
なんとなく、彼女の世界の事が知りたくなった。
「うーん、あんまりこの世界と変わらないような」
彼女は悩んだような表情を見せてから俺にそう言った。あんまりこの世界と変わらない……?
へえ〜この世界とは別の世界に俺がいる世界のようなものがあるのか。
「そうなんだ、そういえばさっき学校行ったって言ったけどなんて学校行ってたの?」
「私? えーとね、私立金森学園ってとこ!」
「…………っ!? ええ!?」
俺はそれを聞いてとても驚いた。
だって、私立金森学園っていったら、俺の好きなあのゲームの学校の名前だったから。
俺はすぐさま普段ゲームをしている部屋に行って、あのゲームの学校が写ってるクリアファイルを見せた。
「もしかして……こんな見た目してない?」
「え? あ! うんうん!! この学校だよ!」
「…………」
俺は目の前の現実が理解し難いのかしばらく固まる。
てことは、彼女は私立金森学園物語。ゲームの世界から来たのか。
いや、そんなことがあり得るのか?
そもそも……ゲーム? え? なんでゲームから?
俺はしばらく思考をめぐらせる。
「ってか? 山田くん、これなに?」
「え? クリアファイルだけどゲームの……」
「クリアファイル……なんでゲームのクリアファイルに私の通ってる学校が?」
彼女がそういうと、俺と彼女はシンクロしたように同時に首を傾げた。
確かになんでなんだよな……え? ほんとになんで?
「このゲームはさ——」
俺はとりあえず、私立金森学園物語というこの世界のゲームのことを中川さんに説明した。
「てことはさ! 私のいた世界がこの世界ではゲームになってるってこと?」
「いや、まだ、正直わからないけど。もしかしたらそうかも! てか、中川さん今、何歳?」
「私は今……一六歳だよ!!」
一六歳、俺と同じ歳か。
てか、待てよ?
彼女のこのビジュアル。
そして、暫定だがこのクリアファイルのゲームの世界からやって来た中川鈴音……もしかして、あのヒロインか!?
「中川さんって、知り合いに岡村って人いない?」
俺は彼女があのゲームの攻略対象の一人なのか、確かめるためにそう聞いた。
「えーと、私の友達に岡村くんっているよ!」
やっぱり!?
俺はそれを聞いて思わず天井を見上げた。
俺は目の前に中川鈴音というゲームのキャラがいることに大変興奮した。
俺はあのゲームで三葉桃子のことが好きだったが、中川鈴音も一応ゲームのヒロインとして認知していた。
「あの……中川さん……握手してください……」
「え? う、うん……」
俺は彼女に頼んでことにより彼女と握手させてもらった。
俺は今……ゲームの世界のヒロインと握手しているのか!?
俺は驚きと興奮で信じられない気持ちになった。
その後、俺は彼女から向こうの世界のことをいろいろ聞いた。
「そういえば、中川さんって夜ご飯ってもう食べた?」
しばらく時間が経って俺は彼女にそう聞いた。
ってか、そもそも中川さんって、この世界のご飯食べられるのか?
俺はついついそんな事を考えた。
だってそれはそうだ彼女はゲームの世界からやって来たのだから。
「ん? 食べてないよ?」
「てか、中川さん……その……この世界の食べ物食べれるの?」
俺はさっきの疑問を中川さんに伝える。
てか、食べ物じゃなく、ガソリンや石油とか言われたら困るからな。
ガソリンはどうにかなるかもしれんが石油はまあ難しいよな。
いやガソリンも十分まずいか……美少女がガソリンスタンドのガソリン給油口に口をつけてガブガブ飲んでいる絵面を想像しただけで色々まずい。
「うん! 多分食べれるよ!! さっき学校で水道水飲めたから!!」
学校の水道水? なるほどな。
なら大丈夫そうか。
「あっ! そうだ! 何か作ってあげようか?」
「……!? いいの?」
中川さんが何かを作ってくれるというのでワクワクした。
そんな事を思っていると彼女はテーブルの椅子から立ち上がってとことこ歩いて台所にある、冷蔵庫に向かって行った。
あの、ゲームのキャラの中川さんが! 俺の家の冷蔵庫を開けてる!?
俺はもうなんだか感情が追いつかなかった。
「あれ、食パンしかない」
「……げっ!」
しまった、せっかく、中川さんが作ってくれるって言ってくれたのに……。
なぜ食パンしかない! てか俺は元々夜ご飯……何、食べる予定だったんだろう、俺は自問自答をした。
くそ! 今すぐ、スーパにガンダッシュして、買いに行くか? いやそもそもこんな時間にやってるのか?
は! そうだ出前、出前がある!!
「そうだ、中川さん! 夜ご飯、何か出前でも取らない? ハンバーグとか!」
「ハンバーグ!? !?」
おお! 彼女は目をキラキラさせてこっちに食いついてきた。
この子ハンバーグが好きなのか?
俺中川鈴音ルートあんまりやってないから彼女なのかもあんま知らんのよな。
「じゃあ、ハストでも取ろうか!」
ハストとは、ハンバーグをはじめ、洋食、中華、和食など多様なブランドを展開している、国民に愛されているお店だ。
俺はスマホの画面を中川さんに見せる。
「これメニューだから、中川さん! 好きな物頼んでいいよ!」
「本当に! ありがとう山田くん! 私もうお腹ぺこぺこで!」
そう言って、体を左右に揺らして笑顔でスマホを見ている。
「私! デミグラスハンバーグがいい!!」
「了解! そういえばさ、中川さんの世界では、デミグラスハンバーグとかあったの?」
「えっ? デミグラスハンバーグなんて聞いたことはないよ!でもなんだか、美味しそうだから!」
「なるほど! デミグラスハンバーグは、美味しいよ!」
そう言うと、中川さんが笑顔でスマホを俺に返してきた。
「俺は、チーズインハンバーグにしようかな……」
俺はチーズインハンバーグを選んだ。
「あ! それ私の世界にもあったよ!」
「そうなんだ……」
チーズインハンバーグがあって、デミグラスハンバーグがない。
よくわからない、興味深い世界だ。
「そうだ! ポテトも頼もう!!」
「ポテト!! 私〜ポテトも大好き!!」
そう彼女は、笑顔でそう答えた。
「ポテト美味しいもんね!!」
それから俺はハストに連絡をして、出前を取った。
どうやら、配達員さんが来るまで、時間がかかるらしい。
「そういえばさ、中川さんは、スマホとか持ってるの?」
「それがさ、見てこれ……」
そう言って彼女は俺にスマホを見せる。
どうやら彼女のスマホは圏外になっているようだ。
「こっちの世界に来てからずっとそう、ずっと圏外で使えないの」
中川さんの世界のスマホは、こっちの世界の電波を受信しないのか……これは……なかなか不便だな……
それから俺と彼女は、こっちの世界とゲームの世界二つの違いをお互い話したりして、配達員さんが届けてくなるのを待った。
——ピンポーン——
「やっと! 来た!!」
この家のチャイムが鳴ると彼女は、飛んで喜んだ。
「俺……お金とか払ってくるよ……」
そう言って俺は玄関を開けて配達員さんにお金を払い、
食べ物を受け取った。
「ありがとうございます」
そう言って俺は、玄関を閉める。
そしてリビングに行ってテーブルに食べ物を置く。
「きゃー!! 美味しそうー!」
彼女は、そう言ってデミグラスハンバーグを手に取る。
「じゃあ! 食べようか!」
俺はそう彼女に問いかける。
「うん!!」
彼女はそう言ってデミグラスハンバーグが入ってる箱を開ける。
すると、一気にこの部屋がハンバーグの美味しい匂いに包まれる。
「やばい! 美味しそう! いただきますー!!」
そう言って彼女は、口の中にハンバーグを一口頬張った。
「……どう? 美味しい?」
俺はそう彼女に聞いた。
「美味しい……こんな美味しい物食べたことない!! こっちの世界のご飯はとっても美味しいね!」
その時の彼女はまさにニッコニッコの笑顔だった。俺はその笑顔を見てこっちまで嬉しくなった。
「あ! そうだ、ポテトもあるよ! 中川さん」
そう言うと彼女は、ポテトをひとつまみして、口の中に頬張った。
「ん〜〜! ポテトも超絶美味しい!!」
その時、俺から見える彼女はとても幸せそうな顔をしていた。
ご飯が終わると、俺は彼女に問いかけた。
「そういえばさ、中川さん、洋服とかどうするの? ずっと制服って訳には行かないからさ」
俺は彼女にそう聞いた。
「……えっ? 確かにどうしよう………」
「もし、中川さんがよかったら……俺の、もう使ってない洋服使ってくれてもいいよ……」
「えっ! いいの? ありがとう!! 山田くん!」
そう彼女は俺に礼を告げた。
てか、あれ?
俺今さらっと洋服彼女に貸しちゃったけど……俺の洋服をゲームのヒロインが着る!?
俺は急に恥ずかしくなって、その場に正座した。
「あッ! そうだ、中川さん。先、お風呂、入って来ていいから…
「いいの? お風呂まで借りちゃって?」
「うん! もちろん! それに中川さんも! お風呂入らない訳には流石に行かないから」
「ありがとう……借りるよお風呂」
「うん……」
俺は彼女がお風呂に入っている時にリビングにあるソファに座って状況を整理する。
彼女は本当にあのゲームの世界から来たんだ。
まだ信じられないな……本当に驚きだ……。
でも、彼女、この世界の食べ物に興味津々だったな。
もっと……彼女にこの世界のこと知って欲しいな。
そういえば、お風呂場から漏れ出るシャワーの音で気づいたがゲームのヒロインが俺の家でシャワー浴びてるって冗談抜きでやばくね?