2話 ゲームの世界から来た俺の好きなヒロイン
どういうことだ? 別の世界に来た?
俺は彼女からいきなりとんでもないことを言われてその場で固まる。
「それ本当の話? 冗談にしては笑えないけど」
「うん、信じてもらえないかもだけど……」
俺はこの子が冗談を言ってるとこの事実を信じることはしなかったけど、今の彼女の苦しいそうな、寂しそうな。どうしたらいいかわからないような表情を見て確信する。
もしかして、突然この世界に突然やってきたことであの昼間の学校での表情をしていたのだとしたら、信憑性は上がる。彼女は決して嘘を言ってはいない、この話は本当だと。
「俺……信じるよ……」
俺は覚悟が決まったような顔で彼女にそう言った。俺は彼女の顔を信じて見ることにした。
「信じてくれるの……?」
「うん」
「そうだ……夜の道でこんな話はなんだし、近くのファミレスでも行かない?」
「ファミレス? ねぇ、君の家は? ダメなの?」
「……え? 俺の家?」
いや、俺の家は……今一人暮らしだけど女の子を家にあげたことないし。しかもなんだか恥ずかしいとはいえ、このままここにこの子を置いておくのもそれは心配だし。
うーん、どうしたものか。
てか、こんな時間にファミレスやってるのか?
「じゃあ、俺の家来る?」
「うん!!」
俺がそう言うと中川さんはとても元気のいい声を出した。
そして、俺は彼女を連れて自分の家に向かった。
中川さんがいた位置は、俺の家があるマンションから結構近かったため、もうマンションへと到着した。
「ここが……君の家? マンションなの?」
彼女は、目の前の高い建物に目を奪われていた。
この子、マンション見るの始めてなのか?
俺高校生でマンションに目を輝かせて見ている人なんか初めて見たよ。
「そういえば、まだ名前言ってなかったっけ! 私の名前は中川鈴音って言うの! よろしくね!」
「うん、俺は、山田海人! って言うんだ、中川さんよろしく」
「山田海人くん! エヘヘ! よろしくね!」
「それじゃあ、行こうか」
「……うん……」
俺は中川さんと一緒にマンションの中に入って、エレベーターに乗った。エレベータに乗ると俺の家は七階にあるため、俺はエレベーターのボタンで七階を押した。
「へぇー山田くんの家って七階なんだ、高いね!」
「そうかな?」
「うん! 私の家、一軒家だから、なんだか新鮮!」
そう会話をしているとエレベーターが七階に到した。
そして、俺の家のドアの前に到着する。
「そういえば、山田くん、親とか大丈夫なの? その、こんな時間に女の子とか上げたらびっくりしちゃうんじゃ」
そう彼女は、頬を明るめて言った。
確かになこんな時間に実家暮らしだったら親がびっくりしちゃうもんな。
だがそんな心配はご無用!
「いや俺、今、一人暮らしって言うか、学校の関係で今親とは離れて暮らしてるんだ」
「そうなんだ……」
俺はドアを開けて彼女を家の中に入れそう言った。
そして俺の家の中に彼女と入ると、リビングにあるテーブルを挟んで中川さんと向かい合った。
「それで、別の世界って? 一体どうしてこうなったの?」
「それが……」
***
ーー中川鈴音視点ーー
私は今日の朝、普通に学校に行こうと家を出た。
そしていつも通り学校の校門に入り、生徒玄関を通って、学校の下駄箱で靴を履き替え終わった時だった。
突如、天井が電気を浴び始め、私はこの事態に困惑した。
そして、私は急に不思議な光に飲まれた。
気がつくと、私は学校の図書館らしいところに飛ばされていた。
「……ここは? どういう?」
「あ! いたいた……吉沢さん! あなた! もうすぐ教室に行かないと!!」
「私……の事?」
「そうよ!」
私が事態に困惑していると、先生らしき人が私にそう言って来た。私の名前は吉沢さんじゃなくて中川だけど、この図書室に私の生徒はいなかった。私はとりあえずその先生について行った。
***
ーー山田海人視点ーー
「それで、先生について行った先が山田くんがいた教室で、私は転校生として紹介されたってわけなの……」
……なるほど。
それで、転校生の紹介の時、彼女の名前を吉沢さんと、間違えたのか。
てか、一体その吉沢さんとは一体誰なんだ? 吉沢? 吉沢? あれ、なんかこの名前聞き覚えがあるぞ?
「私……元の世界に帰れるのかな?」
彼女はそう言って泣き出してしまった。
彼女はおそらく一人この世界に突然やってきたのだろう。
いきなり知り合いも誰もいないこの知らない世界に飛ばされて怖くない、不安がないわけがない……。
今、俺が彼女にしてあげられてること。
それは彼女を安心させてあげること。彼女の力になると伝えてあげること。
「俺が手伝うよ!! 俺が必ず! 中川さんを元の世界に戻してみせる!!」
俺はそう言い切った。
俺は彼女を絶対に元の世界に返せる確証はないのだが、とにかく彼女を安心させるために。
「……ありがとう……」
すると彼女は目にたまる雫を手で拭きとり、とても微笑ましい笑顔を見せて俺にそう言った。
「これからどうするの? 中川さん? その、寝泊まりとかするアテがあるの?」
今の彼女の話を聞くに彼女はきっと一人でこの世界に来たのだろう、今日来たばっかでこの世界に頼れる知り合いはいるのか……俺は気になってそう聞いた。
「ねぇ、私が元の世界に帰るまで…私、この家に、山田くんの家に一緒に住んでいい?」
「……ええ!?」
「だって! さっき山田くん言ったよね!! 俺が手伝うよ!! って!」
「いや、確かにそう言ったけど、俺は別にそういうつもりで言ったんじゃ!」
「お願い!! 山田くんしかいないの!! 山田くんは私のことを信じてくれた!! 今この世界で最も信頼できる人は山田くんなの!!」
「……あ……」
俺は彼女に言われて少し考えた。
確かに、俺は彼女のことを信じたが、他の人はそうだとは限らない。彼女が別の世界から来たというファンタジーみたいな出来事をわざわざ信じる物好きな人は俺を含めてそうそういないだろう。
「わかった、中川さん……そこにある空き部屋。中川さんの好きに使っていいから!」
俺は覚悟が決まったようにそう言った。
もしかすると、この家、俺が一人暮らしをしている家に俺が使っていない部屋、空き部屋。まあ、たまに母さんが遊びに来た時に使っているが、それがあったのはこの時のためだったのかも知らない。
「それって……?」
「うん……元の世界に帰るまでこれからよろしく」
「やったーー!! 山田くん!! ありがとう」
こうして、この世界から来た中川さんとの同棲生活が始まった。