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12話 現在……ヒロインと食パン咥えて走ってます!

「ねぇ、山田くん! これ、似合ってる……?」


 お風呂から上がってきた彼女が聞いてくる。

 彼女は今、先ほど俺たちが行ってきたショッピングモール、モオンの中に入っているサニクロという服屋で買った、パジャマを着ている。


「うん、とっても似合ってる……」


 そう、これはお世辞でも何でもない、本当に似合っていたのだ。

 中川さんは本当になんでも似合うな。


「えへへ!! よかった!」


 彼女は嬉しそうにそう言葉を漏らした。

 彼女と会話をしていると、今日ずっと、疑問だったある事を思い出して、彼女に質問した。


「そういえばさ、中川さん、今日も昨日も学校大丈夫だった? その、中川さんの世界とこちらの世界、授業内容が違うんじゃないかだと思って」

「そんな事は、なかったと思うよ、普通に授業ついていけてたし! 勉強内容が全然違うー! なんてことはなかったよ……」

「そうなんだ、それは良かった」


 俺にしても、彼女にしても、この情報は一安心だ。


「ありがとね、心配してくれて……」


 そう、彼女は俺の目をじっと見て感謝をした。


「じゃあ、俺もちょっとシャワー浴びてくるよ」


 俺は彼女にそう、例を入れて、洗面脱衣所に向かった。

 そして俺は、シャワーを浴び終わり、ドライヤーを手に取って、髪を乾かす。


 ドライヤーを回してる時。

 洗面台に置いてある、歯ブラシと歯磨き粉が入った。二つのマグカップが目に入った。


 一つは、俺が前から使っていたもの。

 二つ目は、中川さんに家の中で使っていなかったマグカップをあげたものだ。


 これは、いわば夢物語だと思うかもしれないが。

 実際、中川さんはこの世界にいるのだ。

 俺の好きなゲームのキャラの中川さんは、俺の洗面脱衣所の先にあるリビングにいるのだ。


 このいわば、漫画や、小説みたいなそんな空想みたいな話が現実に起こっているのだ。

 時々、これは夢かと思う事もあるが、そうではない。

 現実なのだ…………。

 今顔をつねったって痛みを感じるし、水を浴びてもなんともならない、もう一度言う。そうこれは夢じゃなく現実なのだ……。

 俺はドライヤーをしつつ二つの並んだマグカップを見てそう思った。


「上がったよ……中川さん」

「おかえり、山田くん! このテレビ番組とっても面白いね!! 私、めっちゃくちゃ笑っちゃった!」

「あっ、この番組今、とても人気なんだよ〜!」


 彼女が今見ているのは今人気沸騰中のお笑い番組だ。

 俺は、リビングのソファの前にある空間に彼女と横並びになって座ってこの番組を鑑賞した。


「うーん、面白かった!! やっぱり、この世界って面白いね」


 そう、中川さんが背伸びをしながら言った。


「あっ、もうこんな時間……明日も学校だし、早く寝なきゃ……」


 俺はこの番組を見終わった後、ふとリビングにある時計を見た。

 すでに、時計の針は午後十一時を迎えていた。


「そうだね、じゃあ、そろそろ寝ようか! 山田くん」

「そうだね、それで、寝るとこなんだけど、やっぱり俺ソファーで——」

「別にいいじゃん、昨日と一緒で」


 やっぱり、そうなりますよね。

 まぁ、ある程度予想をしていたが。


「その、中川さんはさ、男の俺と一緒のベットで寝ててその……なんとも思わないの?」


 普通なんとも思わないなんてことはないのだろうが、中川さんはゲームの世界からやってきて女の子だ。そこらへん俺たちの世界との価値観の相違があったってなんら不思議ではない。


「そりゃ、私だって女の子だよ、なんとも思わないなんてそんなことあるわけないじゃん……山田くんのばか」


 彼女はとっても可愛いバカを俺に向かって言い放って逃げるように寝室の部屋に向かって行ってしまった。

 俺は頭をポリポリかいた。

 やっぱり中川さんは女の子なんだな。


 俺はその後恐る恐る俺のベットがある、寝室へと足を運んだ。

 寝室へ着くと、彼女は先ほどのことがなんのもなかったかのようにそこにある、ベットに腰掛ける。


「今日は疲れたね〜〜山田くん!」

「本当だね……」

「あれ? 山田くんは腰掛けないの!?」


 そう言って、中川さんがベットをトントンしてくる。


「じゃあ、遠慮なく……座らせてもらいます……」


 俺は照れながらそう言った。


「ふふ!! 山田くん、おかしなこと言うんだね! ここは君のベットだよ、遠慮なんてする必要ないよ」

「それもそうだね」


 俺は、そう言って、ベットに腰掛ける。


「…………」


 しばらく沈黙の時間が続く。

 やっぱりこの空間にまだ慣れないな……。

 俺の横には変わらず可愛い女の子がいる……。

 俺はボーと床を眺める。


「じゃあ、そろそろ寝よっか、」


 すると、彼女はそう言ってベットに横になった。


「ほら、山田くんも横になんなよ、疲れ取れないよ!」

「っ! うん、そうします」


 俺は胸の奥がドクドクと波打つ感じがした。やっぱり俺はまだこの生活に慣れていないな。

 それから俺はできるだけ彼女に近付かないように、ベットのはじで横になった。

「ねえ、山田くん?」

「どうしたの? 中川さん」

 俺が中川さんに名前を呼ばれたのでどうしたのか聞き返すと。


「山田くん、私最初、この世界に来た時。すごく不安だった。いきなり、一人、知ってる人がいないこの世界にやって来て、不安で押しつぶされそうだった……」


 中川さんは突如俺に本音を語り始めた。


「だけど、今日一日、もちろん昨日の夜もだけど。山田くんと出会って、雫と出会って! 私の知らない事、この世界の事いろいろ、たくさん教えてもらって、今やこの世界に来てちょっと良かったと思う自分もいる」

「中川さん」

「だから、感謝を言いたくて、ありがとう! 山田くん」


 中川さんは、そういう風に思っていたのか。

 俺も彼女と出会ってから、まだ、ほんの二日にも満たないけど彼女と接していくうちに、日常が花開いていく、そんな感じがした。


 感謝を述べるのは、こっちだよ、中川さん。

 そう思っていると急に抱きしめられた感覚に至った。


 これは!? 今日の朝と同じ体制!? 俺はまた今、中川さんに後ろから抱きしめられている。

 俺はいきなりの事態に困惑した。


「ちょ、ちょっと! 中川さん? いきなりどうしたの!?」


 俺はそう、彼女に聞いたが、返事がない。

 その代わり聞こえてきたのは彼女のとても可愛い鼻息だった。


 そう、彼女は寝ていて、寝返りを打った関係でこうなってしまったのである。

 これは、しばらく眠れないな。

 全く、こんなに可愛らしい寝息が存在するのだろうか。


 ***



 そして、次の日の朝。


「やばいよ! 遅刻しちゃうよ! 山田くん起きて〜〜」

「へっ? 一体今何時?」

「もう、七時半……回ってるよ!!」 


 ……ん、やばい!?


「本当だ!! ありがとう中川さん起こしてくれて、中川さんが起こしてくれなかったらやばかったよ」

「いや、今も十分やばいよ!!」


 そう、彼女に言われ、急いでベットから身を乗りだし、学校へ行くための準備をする。


 てか、何で目覚ましが機能しなかった? 

 いや待てよ、そもそも俺昨日目覚ましかけたっけか? いや、かけてないな、昨日のこともありすっかり忘れていた。

 まぁ、終わってしまった事は、今はいい。


 それよりも、俺はともかく、彼女だけは遅刻させるわけには行かない。


 それから俺と彼女が足早に支度を済ませ、学校に行く準備が済んだ。


「……よし、行こう、中川さん!」

「ちょっと待って! 山田くん!」


 俺は靴を履こうと玄関に向かおうした所、彼女に静止された。


「これ、食パン焼いたから、はい!」


 ……はい? とは?

 俺は食パンを持った彼女が俺に食パンを手渡そうとしてきて体全身ではてなを表した。


「えっ……どういう事?」

「もう時間ないから、この食パン! 咥えながら、走って行こう!! 途中、お腹空いたら困るでしょ!」


 く、咥えながら!? 少女漫画の冒頭みたいに!?


「ほらほら、いくよ! 山田くん」

「え? ちょ!?」


 そう言って彼女は食パンを口に咥えつつ、玄関に向かう。

 俺も後に続いて、食パンを咥えて玄関に向かう。

 それから、俺たちは、エレベーターを使って、一階に行って、マンションの外に出た。


 そして、食パンを口に咥えたまま、学校に向けて走り出した。

 さっきからなんか妙に視線を感じる。


 それもそうだ、なにせ、制服を着た男女が口に食パン咥えて走っている。

 そんな、異様な光景が広がっているのだから。

 てか、食パン咥えて走るのきついな、なんだからたかから他に食パン咥えて走ってる人がいないせいかすっこぐ目立つな……なんで俺たちの他に誰も食パン咥えて走っていないんだよ!!


 それになんだか、少女漫画の冒頭部分みたいだな。

 これが、中川さん一人だけだったら、少女漫画が始まるのだろうか?

 中川さんのことだきっととってもかっこいい王子みたいな人と出会って、いやいやいや、俺は何を考えてるんだ全く。


 俺はそんな事を考えながら食パンを食べつつ、学校へと足を進めた。

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