表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

最後の夜に。

処女作!!(笑)


本当は、もう少し濃くするつもりが…割と爽やか15禁位にまとまってしまいました。

難しいです。

揺れるロウソクくらいに弱い、間接照明。

柔らかいオレンジは、作る陰すらあったかい。


栗栖先輩のアパート。

大好きな人の空気。


心地いい、時計の秒針の音をききながら、まどろむのが私の、週末の楽しみ。



けど今日は、小さな駆動音がずっと続いてる。


だから私はかわりにひとり、毛布をかぶるの。


大好きな先輩は、真剣な表情で、パソコンのディスプレイをみつめてるから。


邪魔したらいけない。


邪魔したら、いけないの。


「…ごめんな、緋織。まだ、かかりそうだ。眩しいか?」


液晶画面の冷たい光を受けて、先輩は気遣わしげに、ベッドの私に振り向く。


眩しい。

先輩、まぶしいよ。


その無機質な光が、先輩を連れて行っちゃうと思うと、悔しいよ。


「ううん、大丈夫。大事な連絡なんでしょ?しっかりと打ち合わせして下さい」


「悪いな。…ったく、現地時間でお構いなしにメールして来やがる。少しはこっちの時間も考えろっつの。しかもギリギリで。ホント…頼むぜ」


そう言って髪をかき混ぜる先輩は、それでも嬉しさを隠せてない。


私は笑って、枕に顔を押し付けた。



邪魔しちゃだめ。


ごそごそと、毛布をたくしあげて背を向ける。


涙が、止めどなく溢れた。


お腹が熱い。締め付けられてるみたい。

喉が痛かった。


きつく閉じたまぶたは、真っ暗な筈なのに、優しい、沢山の残像が押し寄せてくる。


決意を壊そうと、襲ってくる。


怖い。


耳なりがひどくて、なにも聞こえなかった。


駆動音が、荒い呼吸をかき消してくれてることをただ信じて、私は毛布の中で丸くなった。


涙は、とめどなく溢れた。


少しでも動いたら、細胞さえもが悲鳴を上げて、押し殺したはずのワガママが、情けなく溢れてしまいそうだったから。

身じろぎさえもできなかった。

「どうした?」


それから、どのくらいたったのか。


気づくと私は毛布をどけて、体を起こしていた。

「おトイレに…」


無意識に口は、葉を紡ぐ。


「先輩は、寒く、ないですか?」

「うん?あぁ。大丈夫。もう少しで終わる」

「あんまり、根詰めすぎないで下さいね」

「…サンキュ」


無防備な裸足に、フローリングの冷たさが染みる。

先輩の視線は、相変わらず液晶の文字の上。


少し眉根を寄せて、目を眇めてる。

ボールを蹴りながらゴールを睨む、あの一瞬と同じ顔。

なんて、精悍な表情。


私はそっと部屋を出て、トイレに入って扉を閉める。


途端に、涙が溢れた。


その勢いで、声まで零れてしまわないように、嗚咽を飲み込むと、

それだけで精一杯だったみたいで、簡単に膝が折れた。


涙が。涙が、溢れて止まらない。


静かに静かに、心掛けてきたこと、みんな薄っぺらく思えるくらい、ひどく溢れて止まらない。


軽薄なくらい明るいライトに、浮き彫りにされたまま、膝を抱えた。

いたたまれない。


こんな風に泣くために、こんな所に逃げてきたなんて。

なんて、情けない。



その時だった。


「…緋織?」


突然、先輩の声。


嬉しい、なんて、思った自分。馬鹿。


「なっ、どうしたん、ですか?」

「どうって……中々戻ってこねぇから、心配したんだよ」


怒ったような声。

知ってる。

こういうとき、先輩は、怒ったみたいな声で、困ったみたいな顔で、でも、返事を促すように、優しく、笑う。


「あ…大丈夫です。ちょっと、考えごと…してて…」

「考えごと?やめとけよ。トイレで考え事とか、おっさんになるぞ」

「ふっ。なんですか、それ」


あ。今あんまりうまく笑えなかった。


気づけば、余計に喉が詰まった。


「すみません、もうちょっとで、出ますから」

「下ネタ?」

「もう。違い、ますよ」


もう、いい。

いいから、やめて。

早く。あっち、行って。

「廊下は、冷えます。早く、あっちに…戻ってて、ください」


先輩の言葉は、冗談すら優しい。

立ち上がろとする先から、視界が滲んでく。



「冷えます、ってなぁ…お前の方が、寒いだろうが」


え?


「お前、ホント……頼むよ」


ぼやけた視界。

耳朶を、声が貫いた。


「せ…んぱ…」


私は、縫い止められたみたいに呆然と、見つめるしかなかった。

ぼやけた、白々しい光の個室をきりとって。

柔らかい闇を背に、先輩が、立っていた。


なんで…


「っや!勝手に、開けないで、下さいよ」


慌てて立ち上がって、背を向ける。


「鍵なんか、してなかったじゃねぇかよ」

「っだからって…っ」


ドア越しだった声が、毛布ごしだった声が、直接私に響いてくる。

だから、だめ。

それだけで、また、涙が。


「そういう、問題じゃ」



いいかけて、抱きしめられた。


強く、強く。



「……枕、濡れてた」


息を、することさえ忘れた。


「泣いてたろ…独りで」


その声は、強く。

強さのあまり、かすれていた。


「なんで…ひとりで泣くんだよ…どうして、こんなとこで…」


かすれた声は優しく。

溢れる優しは、あまりに切実で、切迫してて。

私に対して、あまりに無防備で。

私の息一つで、傷ついてしまいそうで。


私は、動けなかった。


「一体、何が問題なんだよ!?なんで、隠れて泣いたりするっ…」


あぁ…。

あぁ


全身で、全てで。

求められてるのがわかった。


私は、これから、何を、言っても…この人を傷つける。優しい先輩を、苦しめる。


こんなの…。


「だって…っ」


だから、こんなの。


こんな風に、なりたくなかったのに。


「だっ…てっ…先輩、夢、叶って…のに、私…邪魔…したく、なかった…」


「緋織…」


「背中…押して…がん、ばってっ、て…言う、つもりで…」


あぁ、こんなのやだ。


喜ばしいことなのに。

夢が近づいたのに、笑えないだなんて。

なんて情けない。


だからした決意も、みっともなく露見して、簡単に崩れて。

ただの押し付けになりを呈して、優しい先輩を傷つけて。


それなのに先輩は、情けなく泣く私を、抱きしめてくれる。


「…めん、なさ…」

「緋織」

「ごめん、なさい…こんな、じゃ、マネージャーも…彼女も…失格」


顔を歪めると、今度は、力無く、あっけないくらい、簡単に笑えた。


「…馬鹿ヤロウ」

「…っふ」


突き崩すような激しさに、感情さえ消えてめまいがした。


「失格って…なんだよ、それ。ゲームか何かか?」

「んっ」

「…なんも、無いだろ。俺らの間には。まだるっこしいルールも、問題も、何も」


後ろに感じる、硬い壁の感触。

骨ばった、大きな腕に閉じこめられて。

吐息混じりの囁きが、唇にこぼされる。


何か言おうと口を開くもけど。

黙らされるように、もう一度。

唇を、奪われた。


「何もきかねぇ」

「ーっや」

「……隠すなよ…頼むから」


空気と一緒に、思考まで奪われる。


先輩、唇…熱い。


かわりに熱を注ぎこむみたいに、口移しで言葉を紡ぐ。


「お前が…ドイツ行き、喜んで、くれてんのも…」


苦しくて、少し唇が外れる度に喘ぐ、私の吐息も。

震えも。


「離れたく、ないって…思って、くれてることも」


悲しみも。

消し方がわからなくて、くすぶり続けてた、冷たい熱も。


「ぜんぶ…わかってる」


痛みさえ。

全て。


奪っていって、包み込む口づけ。


「……あ」


痺れる。

痺れて、真っ白に、焼き尽くされるみたいな、幸福感。


瞼の下の先輩の、鮮やかだった残像さえも焼き尽くす、爽快感。


「だから、無理すんな…俺には、ずっと素直でいてくれよ」


「…せん、ぱい」


私は、先輩の首にしがみついた。


「先輩ぃっ」


もう、先輩しかみえてない。


「緋織」


全て奪って、払拭して、与えてくれた先輩は。

優しく、不敵に、堂々と、笑った。


「緋織、愛してる」


百獣の、王様みたい。

気高く強く、優しく。


「私も…愛して…」


言い終えないうちに、噛みつくようなキス。

食べ尽くすように、深く。

生きてくために、必要なんだって、叫んでくれてる。


「…ひ…おり」

「…んっ、ぱっ…い」


先輩。

先輩と一緒にいたい。

もっと一緒にして欲しい。

食べ尽くして。

ひとつにして欲しい。

欲しい。

だから。


「っはぁ…せんぱい…私…わ、たし」


全てを奪って。

何もかも、捧げさせて。


三つ目のキーワード、なんて書こうか迷いました。

初めての夜?

初夜…はちょっと奥ゆかしすぎるし。

だって、初エッチって…なんかちょっと、爽やか指向のこの作品には、少し下世話かな〜、と。

まぁ、結局書いたんですが。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ