4人で服屋へ行こう
「あの、ほんとごめん。不用心に入ったのは悪いと思ってる。だから許して欲しい」
「いや……俺らも別に、そう言う展開にしたいわけないんだがな」
茶髪の女の子が瞬きしながら顔を逸らす。ぶかぶかに大きなシャツを着て、腰にはベルトをキュッと縛っている。縛ってるおかげでくびれた細い腰の形がわかってしまう。他の3人も同じ服装。
服装と言っていいのかわからないが。
「なんでそんな格好を?」
「ここに来るまでにあの格好は街の人らに見られて目立ってたからな。新しい服を調達するまで急拵えで、俺の昔使ってた服を代わりにな。しかし久しぶりに来たのに、こんなにブカブカでデカく感じるなんてな……まるで他人の服を着ているような気分だ」
まあ今は他人の体なんだがな、とシーダは付け加えた。
他人と聞いて俺は疑問に思いついた事をそのまま聞いてみる。
「ところでその体って別人の体って事なのか?」
「そうだね。ボクらが女体化してもこんな風にはならないでしょ。服装も見た事ないものだし……多分着ていた服そのままに姿が変わったのかも、誰かと———誰かというか、この子に」
ナゲットは脱いだ服を撫でながらそう語った。
この子って事は、もしかすると元となった人物が存在して、そして彼らと姿が入れ替わったという事か?
「だとしたらこの世界のどこかに、タウロスやマーリン達の姿をしたその女の子達がいるかも知れないな」
「だとしたらとんだハズレくじ引いたな、俺達みたいなおっさんになるなんて。まだ若いだろうこの子達は」
前髪をうざったくかきあげながらシーダは同情するように言った。
しかしそれにマーリンは首を横に振った。
「いや僕の予想だと多分違う。どこへ行ってもモンスター蔓延るこの世界で、こんなか弱い体のままでいられるか?」
「戦いに無縁だったとか」
「だとしたら低確率を引いたな。モンスターがどこにでもいると言うのは冒険者である僕らに取っては思い知っている事実だ。それなのにこんな細い腕の女の子になるなんて」
「……どーするレッド。次の行動は?」
タウロスがそう聞くと、みんな俺の方を見てきた。
まだこの顔達に、いつもの仲間のように頼りにされるのは、少し慣れない。
「ここに来るまでに考えておいた。俺1人じゃ原因究明も解決方法も探せない。だから4人が動けるように……ああ、そうだ。ちょうど新しい服が欲しいんだっけ、服屋に行こうか」
「俺らは動いていいのか? この街に馴染んでいない身元不明の人間だぞ」
「この件は不思議な事だ。不思議な事は魔法か聖術。てことで調べるために魔法組合にはマーリンが、聖術使いのいる教会にはナゲットがいけるよう、先に各方面に協力してもらえるよう言っておいた。問題ない」
「ふふっ、ずいぶん手際がいいな」
「流石、ボクらのリーダー」
「と言ってもまずは服だろう。この一張羅で出歩くのは気が引けるが、これしかないしな」
「それじゃレッツゴーってことで!」
最初は4人が動けるように服を買いに行く。服屋に向かう途中、街の人たちからは奇異の目で見られた。まず見たことない顔の女の子達だし、何より王女様の婚約者が4人の女の子を連れて歩いている。街の人たちが気になるのも仕方ない。
ジロジロ見られて4人はどこか居た堪れない様子。けど我慢してもらうしかない。1人2人ならまだなんとかなるが、4人だと庇いきれない。
ずいぶん時間が長く感じたが、ほどなくして服屋に辿り着いた。
「さて、先に話はつけてある。中で店長が———」
「あらぁ! あなた達ね! レッド君の女の子になっちゃった仲間達って言うのは!」
店から出てきたのはガタイの良いエプロン姿の店長さん。話し方はちょっと特殊だが、悪い人じゃない。
「あの店長さん、話は店の中に入ってからでいいですか」
「あらごめんなさい。ほら中に入って入って!」
テンション高めな店長さん。店の中に入ると試着室となる仕切り板のそばに、色んな服が用意されて置いてあった。頼んだ通りいくつか見繕っていてくださった。
店長さんは4人にどの服がいいかを聞いた。難色を示す彼らは、若い女の子が着るような服を見て指で摘んだりして、そして自分の女となった身体を見下ろす。
「うへー」
「本当にこれを着るのか」
「着れる体はしてるんだけどね」
「サイズには問題ないが、やはり抵抗感があるな」
「さあさあ! ちゃっちゃと着てみなさい!」
店長さんの押しの強さから、彼らはもう迷ったりしていられなかった。店長さんに仕切りの奥へ連れられて行き、そして着替えた姿を俺の前に披露して行く。
茶髪の少女であるタウロスは明るめのシャツや、丈の長いズボン。
パサついた肌をしたマーリンは化粧などで誤魔化しつつ、無難なロングスカート系をチョイス。
ナゲットも落ち着いた長い丈のスカートで、袖も長めだ。
黒とピンクという特徴的な髪色をしているシーダは、服の方は落ち着いたアクセントで調和しつつアクセサリーなどで緩和。
奇抜な服装は無く、女の子になってしまったという特殊な状況のところを店長さんは足を隠すタイプのズボンやスカートを選んでくれていた。それでいて派手めでないため目立って女の子を主張してたりしない、気遣われた選服だった。
「ねぇねぇ! 似合うでしょう? 私のファッションセンスごと褒めてくれたっていいのよ?」
「褒めると言ってもですね」
「おや、恥ずかしいかい」
「俺の服の知識では気の利いたコメントが出なくてですね。ただ店長さんの心意気と、アイツらの不満無しの顔から大満点です。ありがとうございます」
ぐっ、と親指を立てる。それに店長さんも同じように親指をぐっとして拳を突き合わせる。
「さてそれじゃあ次の衣装に参ろうか」
「次の衣装?」
予想してなかった言葉を聞いた俺と、もう満足しきっていた4人はきょとんとする。それに対して店長さんは大きく胸を張って、鼻息荒くしてパチンと指を鳴らした。
次の瞬間には次々と店の店員さん達が現れて、仲間達を着替えさせていく。
「ちょ⁉︎」
その服装達はさっきとは違い、とんでもなくハレンチな物もあって慌てて目を隠す。
「あの! ここには俺こと王女の婚約者がいてござれるのですが!」
「いいじゃないの別に。ハイレグやノースリーブ、胸元開いたものから、ヘソの見える腹出しのものまであるわよ」
「いいんです⁉︎」
「いいんですわよ。経験よ経験。人間抵抗していればいるほど、一度受け入れた時の虜なり具合は尋常じゃないわ。何であんなに嫌がってたんだろうってね」
「それは、そうかもですが」
「いつまで目を瞑ってるの?」
「俺の忠誠心が折れるまで」
なんとか着替えや、ハレンチな服装をしている仲間達の姿を見ないまま終わることができた。はしゃいでいる店長さんの声でどんな服を着ているのかは聞こえてきて、それを頭の中で想像してしまっていたが、まあそこは仕方ないと思う。
「またきてね〜」
何着か服を買い、そのうちのいくつかは格安で売ってくれた。
これで街中を出歩いていても問題はなくなった。目を開けて仲間達を見てみると、さっきの無難な服装に戻っていて見られる格好だ。
安心しきって店を出ると。
「あー! ルーシェ王女殿下の婚約者が4人の女の子と浮気をしているぞー! これは一大事だなぁ!」
貴族服を着た男に指を差され、街中の人がたくさんいる中で大声で叫ばれた。




