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9話.また、人が増えた。

「ねぇ、いつの間にか人が増えてるんだけど説明はないわけ?」


最近マリアのお怒りが常態化している気がする。

やっぱヤキモチか?


「召喚された。人間が敵だった。魔人を助けたら保護しないといけなくなった

おーけー?」


「だから何なのよその話し方は」


呆れたようなため息をつくマリア。

何というかFF8のOP開けのムービーを思い出す。


「元気なお嬢さんね。エリナも負けないようにしないと」


「だからやめてってば」


連れてきてすぐに俺はマリアに捕まった。


さらっと置いて帰ろうとしたら

いや、待ちなさいって

と首根っこを引っつかまれた。

そして今に至る。


「私も説明してもらいたいわね。ここにいらっしゃるのは貴方が保護してきた人達なのかしら」


アマンダの声にお叱りの感情が見えた気がした。


「俺がそれぞれの世界で保護してきた人達です。

マリアは聖女だったんですよ。あの頃は可愛かったのに」


「知り合ってからそんな経ってないでしょ、何言ってんのよ」


最近怒りっぽいし。あの頃の聖女様に戻ってきてほしいと思わなくもない。


それから全員が自己紹介していきザガニが自己紹介したところでマリアがちょっとビクッとした。

聖女様だから纏うオーラが気になるのかもしれない。


そのうち慣れるだろう。


隠れて日本で生活できる準備は整ったけど、俺の扱いはどんどん悪くなっていく気がするのは何でだ。

知ってるか?

あいつら俺の金で生活できるんだぜ?

嬉し恥ずかしハプニングでプラマイ0ならまだわかるんだけどそれもないってどういうことだよ。

しかも、あいつらを生活させたところで、邪神討伐には関係ないってのが徒労感を増幅させるよな。

野良の犬猫を拾うように人が増えていく状況だけど、邪神のような奴の被害を受けた人達だと思うと諦めもつくってもんだ。

俺に対する態度は改めてもらいたいけどな。



何となく足が遠のいてマンションに近寄らずに少しでもヒントがないかと空想世界に潜っていた。

もちろんゲームやラノベの話だ。

こういうのも意外な発想が自分の技に消化できたりするので馬鹿にできない。

そんな数日を過ごしていた時に矢嶋さんから連絡が来た。


「申し訳ないのですが、ネット回線工事を行いますので1時間ほど工事に立ち入らせてもらえませんか?」


大いに焦った。

マジでこれはまずいだろ。

俺たちの部屋にも回線工事をしてくれるのはありがたいけど、流石に家に入られるとなると退避しておく必要がある。

マイスペースへの扉をマンションにつけるしかないか。


「ええと、ネット回線は引いてませんでした?」


「あるのですが、会社としては貧弱すぎて使えないのです。

ISDN回線なんて未だに残ってたんですね」


え、ISDNってなんだ?


「お若いからご存知ないかもしれませんね。

わかりやすく言うとスマホの回線が5G回線だとすると

その前が4GLTEと呼ばれるものでその2つ前といったところでしょうか?」


何となくスピードが遅いことだけはわかった。


「それを工事したら早くなるんですか?」


「そうですね。単独回線で光ファイバーをマンションまで直通させる予定です。

全ての部屋には同意がないと工事に入れませんのでお伺いをと思いまして」


「わかりました。いつでも良いですけど工事の日時が決まったら連絡もらえますか?」


「それはもちろんですが、よろしいのですか?平日になりますが」


「大丈夫です。よろしくお願いします。」


そして3日後に工事が入ることになった。


存在するマイスペースへの扉を作るだけなのでそこまでの魔力は必要としないと思い、早速マンションに向かった。

数日間訪れていなかったマンションに入ると


「何で毎日来ないのよ」


とマリアが不満を漏らしていた。

ツンデレか?


工事があることを伝えてマイスペースに対比してもらうことを了承してもらう。

全員が1時間位なら問題ないと言うことで、寝てる可能性が高いリュードとシャーライは前日からそちらで生活することになった。

ザガニが懐かれているそうでザガニが前日からマイスペースに移る。

扉を生み出すとザガニは


「魔王と呼ばれるのも納得の魔法です」


と何度もうなずいていた。

ザガニはリトルファイヤを少し使うだけで魔力が切れたそうだ。

扉を隠蔽しておき扉の開き方を説明した。

工事が終わったら迎えに行くので、それまで出てこないようにときっちり言い含めておいた。


3日後

俺はマンションを訪れたわけだが、何があったのだろうか、泥棒にでも入られたように下着や服などが散乱していた。

下着などが・・・。

ちょっと意味がわからないながらも流石にまずいので全てを一旦回収してゴミ袋に詰めた。

数枚なくなっても仕方がない状況だが、どこにも落ちていないことを確認してるとインターホンが鳴った。

何食わぬ顔で出迎えて工事業者が入ってきた。

数名が壁の中に線を通したり色々してから、パソコンで回線が開通していることを確認して、全部屋にLANコネクタをつけてくれた。

1時間では終わらなかったけど。


だけど、数十分遅れたからと言って今の俺が怒ることはない。

俺には楽園に咲く至上の花をゴミ袋と懐に入れている。

これはカーム(鎮静)効果を永続的に所持者にもたらすアーティファクトだ。


回線工事が終わったことで、PCやテレビの類を一気に買い揃えた。

流石に空間収納に入れるわけには行かないので、リュード、シャーライ、ミャン以外の全員にPCを一台ずつ、大型テレビを2台購入して即配達してくれるそうなのでお言葉に甘えた。

近くの量販店で購入したけど、近くと言ってもそれなりの距離で、嵩張る物を若い人間が持ち運ぶのも不自然だったので購入金額で無料配達をすぐしてくれると聞いて飛びついた。

ついでに俺も案内役という名目で送ってもらうことになってラッキーだ。


玄関からすぐの場所に全ての荷物を置いてもらい、設置や設定もサービスで致しますがという量販店の人のお言葉をありがた迷惑と思いながら断って大量の箱が玄関にある状態のままみんなを迎えにマイスペースに入った。


「それで、工事って何が変わったの?」


興味津々でマリアに聞かれてコンセントのLANコネクトを見せて全部屋に設置されていることを伝えた。

その上でPCの操作とテレビの設置をしていき、それぞれをLANに繋いだ。

このテレビは地上波の見られないネットTV専用だ。

それぞれがこの世界の一般的な知識にアクセスできるようになって料理のレシピだろうと化学の知識だろうと真偽は定かではないがある程度は確認できるようになった。

じゃあ、そういう事でと帰ろうとした俺を引き止める人がいた。


「えっと、その・・・」


マリアとエリナが恥ずかしそうに袖を引く。


「何だ?」


「あの、、、」


うつむいて顔を真赤にした。


「ああ、心配ないぞ、ちゃんと工事の前に回収しておいたから」


そういうと空間収納に無駄に魔力を消費してゴミ袋を取り出した。


「キャーーーー」

「こんなとこで出さないでよ」


むしろ救世主だと思うのだが、俺はまた怒らせてしまったらしい。


「工事に来た人に見られなかったのは俺のおかげだと思うんだけど?」


そういうとありがととぼそっと答えて二人で仕分けに戻った。

2部屋で回収したから二人のものが色々混ざっているのだろう。


回収忘れがあったとしても問題なさそうだ。


「あの子達ね。ここから出られるのを楽しみにしてたみたいなのよ。

それでお気に入りの服とか下着とか選んでいたのに、時間前に決めきれなくてね」


ほほほとアマンダさんが笑う。

何を着ていくか悩んだけど、決められなくてぶちまけたままマイスペースに連れ込まれたって感じか。


挨拶だけしてからマンションを出た。

特に理由はないけど少しの間マンションには近づかないように決めた。

特に理由はない。

大事なことなので二回言いました。


俺は家に戻ると、また深淵を覗く作業を再開させた。

こんなことしててもレベルアップはできないが、俺にはアーティファクト【楽園の花束】がある。

これがあれば、どんな苦境に立たされても落ち着いて対処できるだろう。

そろそろ次の経験値に招待してもらいたいものだ。


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