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7話.所持金を考慮した賢いお買い物

あれから一週間が経過した。

結局ネットオークションは2日間サイトダウンのまま終了してしまったようだ。

念のため普段使っていないフリーメールにアクセスするとネットオークション会社から連絡が来ていた。


「この度貴方様の出品された商品へのアクセスが集中しました結果、サーバーがダウンしてしまい、お客様には多大なご迷惑をおかけしたことを深く謝罪いたします。

つきましては当該商品に付きまして、専用サーバーを立ち上げ、当社が代理出品する運びとなりましたことをご報告いたします。

専用サーバーにて出品いただく際の諸費用に付きましても不要とさせていただき、お客様の安全のためにも当社で代理出品した当該商品の落札金額につきましては貴方様の口座に手数料無しで全額お振込させていただきますのでご安心いただければ幸いでございます。

つきましては、当該商品を下記の住所までお送りいただけますようお願い致します。

落札者様の安全と匿名性の維持の為にもご協力をお願い致します。」


という内容で送られてきた。

普通なら怪しいと思うところだが、魔法の世界のものだし、何かしら地球上で存在し得ない何かだったのかもしれない。

一応送り先住所を確認した所、間違いなくネットオークションサイトに記載の住所と同じだったことから、俺はその依頼を承諾した。

そして、今日、銀行口座をネットで確認した所680億という馬鹿げた金額になっていた。

どこの石油王が買ったんだ?

ありえない金額にビビりすぎてどうしていいかわからないが、お風呂どころか家まで買えるので、とりあえずどうするか考えることにした。

税金についてはどうして良いのかわからないので、その税金についても代行してくれるか確認した所。手数料をいただければ可能ということだったので全て任せて、手数料と税金を抜かれた上での振込額が680億。


こんな金額だと警察とか税務署とか何かややこしいことになるのかな?と思ったが、税金は納め済みなら問題ないのでは?と開き直った。


それでも、大きな問題が横たわっている。

それが、未成年であるということ。

父親に変身したところで税金とか何とかや書類のあれこれがあると簡単にバレそうなので諦めた。


ではどうするか?

人を雇って不動産会社を興す。

しかも、俺は表に出ることなく、金、土地、建物を買えるだけの金を渡して会社名義で貸出と集金を行う。

しかし、人脈なんてものはない。

どうするか・・・。


募集広告を出して、元経営者を募集する。

そして、全てを丸投げしてしまおうと考えた。

言ってみれば自社ビルを用意してあげるから不動産の貸出とテナントで収益を上げる。

会社は元手を回収した後は完全に手放して経営者に任せてしまえば、俺が全く関わらずに金の回収も全て無関係になる。

いや、登記の問題があるらしい。

名義貸しではなく、最初からその経営者に全て任せて俺は土地、建物の権利だけを握って全面的に任せてしまおう。

惜しい気もするけど、目的は住める場所を確保することであって、利益を稼ぎたいというものではないので金に目がくらんで目的を見失うような事にならないようにしよう。


会社を売りに出すようなものだな。


賃貸経営をする権利を寄付する。

これならいけるだろう。

俺は早速WEBをメインにした求人媒体に申し込んで金を払った。

応募者数は膨れ上がった。

こんなご時世だから経営に失敗したりすることも多いだろう。

黙々と面接を繰り返した。

こんなタイミングで異世界に呼び出されたらやばいけど、まぁ、何とかなるだろう。


そして、何とかなっちゃいました。


めぼしい人は数人いた。

執事のように丁寧で腰が低い60代の男性が私は個人的に気に入って、全てをお願いしようと思った。

彼は矢嶋 源太。

元不動産会社社長で部下に金を持ち逃げされて不払いになり、生活資金は残ったが、路頭に迷うことになったらしい。

ものすごく説得力がある穏やかな口調で話しやすく、人を大事にしすぎたあまり、借金を返せない部下を稼がせてやりたくて裏切られたと言っていた。

利益は出さないと意味がないけど、小規模でなら問題なさそうだった。

私は彼に会社を立ち上げてもらうことにした。

もちろん金はこちらからの持ち出しで、初期投資と思うことにした。


会社の登記を行ってもらったら、そこから問題がなさそうな信頼できる人材を確保してもらった。

会社名義で土地、マンション建設その他を受け持ってもらった。

30階建てのマンションにはテナントも入れて、会社のオフィスもそのマンション内に構えるそうだ。

商業利用は1階から3階のテナントと5階から上の住居に分かれており、住居への入り口は商業エリアと別になっている。

エレベーターとエスカレーターも別々になっており、商業施設に入るためには住民も1階まで降りないといけないわけだ。

住民用のエレベーターはなんと6基も設置予定とのこと。

30階はオーナーの専用フロアとなっているが、実質俺の住まわせたい人達を住まわせるためのフロアになっている。

しかも、別々の部屋ではなくてそこが一つの家になっている感じで、部屋割りはいくらでもどうとでもなる。

部屋だけで30部屋もあるからな。

さらに風呂は大浴場のみ・・・にすると男が来た時に見たくもないものを見せられても嫌なので一応2箇所、トイレは全部屋に設置となっている。

その計画書の通りの建物に50億ほどかかり、その他諸費用と会社の元手等で80億程あれば問題ないらしい。

早速俺は司法書士立ち会いのもとで契約書を交わし、80億を振り込んだ。

入金確認できてすぐに矢嶋さんから連絡が来て彼と会社は動き出すことになった。

早速マンションと言うよりもはや商業ビルの建築業者の選定に入り、有望かつ信用できる元部下を集め始めたようだ。

イニシャルコストは純利益から徐々に返してくれるそうだ。

誘致するテナントなんて俺に聞かれてもわかるわけないので全て任せることにした。

大したランドマークもないこんな土地でそこまで大風呂敷を広げて良いのだろうか?と思わなくもなかったが、彼には確信があるのだろう。

経験則ってやつかな?


完成までは何年もかかるだろうけど、それまでの仮宿は中古マンションを購入するそうだ。

それも見越した80億だったのか?

もちろんそこにも俺たちの家を確保してくれている。

とりあえずの仮オフィスを構えて、人材確保と育成などを精力的にするらしい。

まぁ、頑張ってくれ。

中古マンションとはいえ、マイスペースより格段に住みやすいのでマンション購入と同時に鍵を郵送されて、受け取り次第マリア達の引っ越しとなった。

商業施設にはスーパーなども入る予定だということだが、中古マンションには近隣にあるだけで、家の1階にあるとかいう立地ではない。

しかも、獣人が外に出られるわけではないのでマリアが買い物を引き受けることになるだろう。

可愛いからストーカーには注意してもらいたいな。


意外なことに他の世界からの召喚はなかった。


ある日、テレビで会社の金を持ち逃げしたという犯人の裁判の話が出ていてどこにでもある話なんだなと思っていたら、持ち逃げされた元社長の矢嶋さんが、身の潔白のためにもと言って探偵を雇い、犯人を見つけて裁判にかけたことが紹介されていた。

何らかの問題のある社長だったから裏切られるんだという視線にさらされて、仕事にもありつけないことが苦しかったとインタビューで答えていた。


80億の一部は探偵や裁判費用なんだろう。

犯人から金を回収できたとしても一度ついた汚名は消えないから社長として社会を見返したいと語っていた。

売名の意味もあるのだろうが、メディアを利用して身の潔白の照明と今後の商業施設誘致へのはずみにもするんだろう。

穏やかな見た目の割になかなか強かだった。


それに、このタイミングで裁判になり、勝訴すれば賠償金で商業ビルを作ったように思われるから俺が隠れるにももってこいだった。

それでも、目的以外の用途の金を使うなら事前連絡は必須じゃないかと思わなくもなかったが、絶対に勝てるし、盗まれた金額もデカかったんだろう。

全部丸投げする気なので何をしようとも構わない。

俺はみんながこっちの世界で暮らせる場所を提供できるならそれでいいから、後は任せて自分のレベルアップに全力を注ぐぞ。

ついでにラッキースケベイベントが起こりやすそうないい感じの家を作ってくれたらそれでいいし。

あれから、それとなくマンションの寄って、必要そうなものを買い揃えたり、レシピ本を渡したりしながら召喚を待つが、待てど暮らせど召喚(レベルアップの機会)は訪れなかった。

日本で生活する中で素振りしようとレベルアップできるわけもなく、俺は早々に諦めて、どうせなら可愛い娘がいる所に足繁く通ってしまう。

紳士な俺は困ってることがないか御用聞きに訪れるためであって下心なんてものはない。

ちなみにラッキースケベに遭遇はできていない。


「今日も来たの?」


マリアから辛辣なお言葉を頂いた。


「俺、ここの家主。つまり我が家」


「貴方の家は別にあるじゃない」


「ここも、俺の、家」


「何でカタコトなのよ」


「お兄ちゃんいらっしゃ~い」


ミャンが走ってきたので抱っこした。


「ものすごい早業ね」


マリアは呆れている。


「もしかしてヤキモチってやつ?」


「普通に怖かっただけだけど?」


「何で?」


「女の子を抱き上げるのに躊躇しないからよ」


ジト目で言われたが数%のヤキモチは入っていてほしい。

奥からヤルンさんも現れた。エプロン姿が超似合ってる。


「何か困ってることとかあります?」


「困る前にハルトさんが来てくれてるので大丈夫ですよ。

うちの子が走り回るから、それくらいですね」


「あたしいい子だもん」


「ハルトさんの前でだけね」


「もう、やめてよ~」


あ、照れてる感じちょっとかわいい。

みあたらない子がいたので聞いてみる。


「リュードとシャーライは?」


「お昼寝してる」


答えたのはマリアだった。

続けてミャンが


「あのね。あの子いっつも寝てるんだよ。

シャーライは夜の方がいいからって暗くなってから起きるの。

変わってるよね」


シャーライは夜行性なのか?

不自由なく暮らしてるなら良いけど。


ここにいるとほんのり甘い香りがする。

女ばかりの空間だからなのか?

リュードとシャーライが問題なければいいけど。


いや、女の子限定の家に変更してもらうか。

矢嶋さんに頼めばまだ、変更は効くんじゃね?

男子寮と女子寮みたいな感じで。

そして男子禁制の秘密の花園に出入りできる男は俺だけとかときめいちゃう。


アホなこと考えてないでマイスペースで自主練でもしますかね。


自室に戻ってマイスペースの扉を開けようとすると召喚陣が見えた。

やっとお呼びがかかったか。

今度こそまともな経験値がいてくれよ。

そんな期待を胸に躊躇なく魔法陣に飛び込んだ。



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