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4話.真の漢は紳士であるべきだ

俺は自分のことを紳士の中の紳士だと思っている。

紳士とは女性への愛情を素直に表現しつつも悲しませない男の事を言う。

女性の柔らかい肌の感触に興奮しないものは紳士ではない。

つまり、大きな欲望を理性で抑えつつ、少しの触れ合いに感動できるのが紳士だ。

この姿勢において、俺は英国紳士が絶賛する紳士の中の紳士だと思う。

だから、お風呂は覗かない。

その時が来て、相手からの同意があって初めて狼になれてこその紳士だからな。


そう自分に言い訳しつつ血涙は流れ続ける。

子供はずるい。


まぁ、俺のような紳士なら風呂上がりの甘い香りを吸い込むだけで柑橘系の果物のような清涼感を味わえるのだから、今はそれで満足しておこう。


マイスペースは完全に別の空間で、俺の魔力で作った世界なので意地に魔力は必要ない。

作る時に膨大な魔力が必要なだけだ。

だから、俺に何かあったとしても消えたりすることはない。

完全に安全な場所だから実は邪神と戦う時も最悪逃げられるように準備をしていたのに、仲間には伝えていなかった。

そこまで伝えて俺の空間魔法に嫉妬される不安があった。

魔法については世界最強だったケルビンでさえ、俺が加減しなければならなかった。

彼はプライドが高く、世界最強の魔法使いであることを誇りに思っていたのだから。

それがあんなことになるなんて思ってもいなかった。

実際今でも後悔しきりで、だからこそ早めにマリアには伝えた。


そのマイスペースを活用できるのはある意味において俺の懺悔の気持ちでもある。

そのマイスペースではお風呂から聞こえる水音や子供のはしゃぐ声とわんこの悲しげな声が響き渡り後悔の念が薄れていくのを感じる。

紳士の理性によって上書きされてハッピーな思い出に塗り替えられていく気がする。

マリアをさらってきてよかった。

そう思った。


俺は瞑想を始め煩悩を退散させようと集中していく。

そんな中風呂から上がった子供の走る音が聞こえた。

集中すれば雑音など聞こえなくなるものだ。


音を意識の外に追いやり魔力を体内で動かしていく。

自分を無にし、般若心経の空を体現していく。

色即是空空即是色

自らの扉を開け広げ、自然と同化していく。

そう、自室の扉を開き闖入者が入ってきても俺の心は俺という自我を持たない。

悟りを開く用にカッと目を見開いた。

男の子を追ってきたバスタオル姿のマリアがいた。

元々キリスト教は偶像崇拝を禁じた宗教だった。

つまり、神像作成や十字架のような物を信仰するのを禁じていた。

いつしかわかりやすさを求めて偶像を作成して信仰は一気に拡大した。

閑話休題。


仏教の世界からマリア様というキリスト系の聖女様が降臨された。

自我を廃した私の目はそのバスタオルを押し上げている凹凸を全神経を集中して記憶するように空の心に情景が焼き付けられていく。


やがて、きゃーーーーと雑音が響くが私の心は空だ。

何も聞こえずただただ煩悩を廃して全神経を集中した目で大自然の脅威を目に焼き付けた。


「瞬きもせずに見てんじゃないわよ!」


すぱこーんと頬を打たれた衝撃で俺は無の境地から悟りを開いた記憶を飛ばされた。

ステータスは高いはずなのに、とんでもなく痛かった。


バスタオルを押しのけるお尻の曲線の美しさに俺は煩悩が支配したが、頬は痛い。


「まずは、納得できる説明をしてもらおうか」


「はぁ?」


「ここは俺の部屋で、俺は今迷走中だ。いや、瞑想中だ。

そこに突然乱入してきて叩かれるのは納得行かないのだが、この紳士オブ紳士の俺に何か問題でもあったか?」


「いや、意味わかんないし、ってか見るな」


「ふむ、バスタオル姿の痴女が俺の部屋に来て叩いてくる。

なるほど、そういうプレイなのか?」


「変な説得力で変態発言しないでよ。今のあんた本当に怖いよ」


「さっさと着替えることをおすすめするが、先に俺に手を上げることを優先する辺り、見せたい欲求でもあるのかと」


そこまで言うとカァーーっと真っ赤になって出ていった。


男の子は全裸で俺の視界を遮り姉ちゃんをいじめるなという。

いじめてるのは姉ちゃんの方だぞ?と諭す。

そう、俺は瞑想していただけだ。

勝手に飛び込んできて勝手に殴って走り去るのは人として良くないことだぞと教えていく。


「君は突然自分の部屋に来て殴られても平気か?」


「う~ん・・・」


「じゃあ、今度俺が君の部屋に突然入って殴るけど怖くないか?」


「怖い」


「だろ?今、俺はそういう事をされたんだ。いじめてるのはどっちだった?」


「姉ちゃんの方」


「そうだな。それがわかるだけ偉いぞ。

今度からはどっちが悪者なのかちゃんと確認しないと駄目だぞ」


「わかった。ごめんよ、兄ちゃん」


よしよしと頭を撫でておいた。

悪は滅びるのだ。


ここで、生活を始めてひとつ屋根の下の共同生活も悪くないかもしれない。

紳士の俺を好いてくれるまで俺はマリアを守り続ける。

危険な所にあえて連れていき、無駄に守ってやるから安心しろよ。

俺の空の心は、煩悩以外は空っぽだった。


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