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3話.人工知能の召喚魔法

魔法陣が消えて、代わりに真っ暗な場所に出た。

人の気配は感じない。

マリア以外は。

マリアは心細いのか、そっと俺のTシャツの裾をつまんだ。

う~ん、もう少し何かこう密着的ななにかがあってもいいけど、有事の際に危険だから仕方がない。

泣く泣くライトの魔法であたりを照らした。

ここは無機質な四角い部屋になっていて、大きな機械が鎮座している。

そして、ライトの明かりを覆うように部屋全体が光った。


「ひっ、何?」


マリアは一旦離した裾を再度つまみ直した。

ここは抱きつく所。


「私はKS305588。人類が最後に生み出した人工知能です」


どこかにスピーカーがあるのか電子音のような声が響いた。


「私は貴方に要望を出しました。救うべき人類は死滅しているかもしれませんが、どうか私の創造主の人類の敵を討っていただけませんか?」


「死滅している可能性があるのか?それやばくね?」


「人類は科学の力でこの星に繁栄してきました。

ですが、科学の力は実験結果から新技術を開発するものが多く、実験の際に何が起きたのか記録されてはおりませんが、どこかの異界へとつながる穴が開いてしまいました。」


通り◯けフープ、いや、『ワームホール』かな?


「そこから悪魔だとか魔物だとか呼称がいくつもあったようですが、異形のものたちが現れ残忍に、残虐に人類を虐殺していったということです。

魔法という未知の技術に科学はあっさりと敗北してしまいました。


未知の魔法に対抗しうるのは同じく未知の存在。

私の人工頭脳はシュミレーションを繰り返してゲームに着想を得て、勇者召喚を行うことにしました。

魔法は未解明の技術ですので形だけ真似てみた所、何度かの試行の後、あなた方が召喚されるに至りました。

勇者様、この世界を、人類の敵を討ってください。」


魔法を初めて使った機械ってちょっとかっこいいな。

帰るだけならいつでもできるし、魔王か邪神軍か他の何かなのか、科学が負けた以上核兵器も効かないとかそういう物かもしれない。

俺はようやくレベルアップの機会が訪れたと喜んだ。


「どんな感じか見て回って、とりあえず、何とかしてみるよ。

じゃあな」


「お待ち下さい。私に残された電力は発電設備が破壊されたらしく、1週間も持ちません。

私のUPSはメンテナンスをされておりませんでしたので最大容量の70%しか蓄電されておりませんでしたので。

出来ましたらそれまでに、敵をお願いします。私は創造主である皆様方に最後のメッセージを一斉送信する役目を担っておりますのでどうぞ6日以内に元凶の排除をお願いします」


あ、、、またこのパターンか。

俺、いっつも制限時間ついてないか?

できる限りやってみるけど。


声を返さずに俺は部屋を出た。

マリアとともに。


「あなた、毎回こんな無茶な願いを聞いてるの?」


「できるだけ、だぞ? 出来なくて仲間が死ぬ直前に俺だけ元の世界に戻される。

その時の仲間の笑顔がずっと残り続けてるから何とかしてやりたいんだよ。」


「ふぅん。そっか。でも、私のことも守ってよ?

聖女とか言われてたって言っても戦う力なんてないんだからね」


「わかっておりますよ、聖女様。

聖女様のお役目は協会に不審を抱かないように防波堤になるという理由だけでしょうからね」


ぐぬっと言葉に詰まった後、マリアは


「そうかもだけど、どう考えても言いすぎだからね、それ」


そう言って俺の背中をグーパンした。


部屋を出て、長い廊下を歩き、一周したところで出口が見当たらなくて、時間がない俺は面倒だから上から見るかと天井よりも更に遥か上へ転移を試みた。

二階への階段らしいものもないならそれしかない。

空に投げ飛ばされても良いようにマリアをお姫様抱っこで抱えて

(やっぱこの体制癖になるな。)

柔らかくスベスベの肌の感触が直に触れている場所、衣服越しに触れる場所

その全てから熱が伝わってくる感覚。

これからも、事あるごとにこうしていこう。


転移後は地下何十回とかの秘密基地なら地中だったかもしれないが、まさか本当に空中だとは。

重力に引かれて空を自由落下している俺は浮遊魔法でその場にとどまった。

下には施設など何も見当たらなかった。

おそらく出入り口だけ塞いだ地下施設なのだろう。


ゆっくりと地上に降りていくとそこかしこに瓦礫の山が見えた。

徹底的に破壊されてるな。


「ちょっと怖いですね。下に降りたら死体とゴーストの群れがいてそうで」


確かに、その発想はなかった。

人類の滅亡が頭をよぎる。

何とか行きている人がいる場所がないか、そのまま空を飛んで世界を回る。

時々、斥候なのかよくわからないけど、徘徊しているゴブリンのような凶悪な顔の種族を見かけて、こいつが人類とかって可能性がないかな?と交渉した所、全て攻撃的だったので瞬殺した。

数回繰り返して知能が皆無だろうと結論づけて科学文明を発展させてきた種族ではないと通りすがりに屠っていった。

世界を回ってみても集落は発見できなかった。

あるとしても地下施設なのだろう。

食料の備蓄がどれほどかわからないけど、早めに元凶を始末しよう。

元凶の場所は目星をつけている。

大勢のゴブリンもどきが集まっている場所が数か所あったのでそこは後回しにしておいた。

せっかくなら修行のチャンスはしっかり活用しておきたい。


一応ホーリーを使って効くか確認してみよう。


狭い範囲にホーリーを放つと魔力が消費されて10体ほどを囲む範囲で光の壁が発生して光の奔流が降り注いだが、ゴブリンは混乱はあったものの平然としていた。


「げひゃ、げひゃひゃひゃひゃ」


気持ち悪い笑い方で何がおかしいのか笑いが伝播していった。


「あの、ホーリー効いてないようですけど?」


聖女様からすれば神聖魔法最強と言われるホーリーが効かない生物が多くいることに疑問をいだいているようだ。


「まぁ、ホーリーって悪霊とか邪神系にしか効かないっぽいからな。あまり使い勝手はよくなさそうだ」


「そんな・・・」


マリアの板世界でもホーリーが効かなければお手上げであれば滅亡していてもおかしくなかったわけだから、死滅目前だったとゆっくり理解していくだろう。


「どうするのですか?」


「え?どうするも何も焼くだろ」


「そんな平然と・・・。」


「破壊の跡を見ただろ?死体までは見てないけどさ、こいつらは人類にこれ以上のことをしてるわけだから因果応報ってもんだ」


「因果応報?」


協会所属ということはキリスト系のような宗教なのだろう。

仏教系の用語は理解できないようだ。


「因果応報とは善行も悪行もやった本人に返ってくるって意味だな」


「それでしたら私の今後の人生はバラ色ですね」


いい性格をしているようだ。


「とりあえず見える範囲の敵は倒していくぞ」


俺はマリアを取り出した家に避難させて結界で包んだ。

絶対出るなと言いつけて。

知能がなさそうだから人質みたいなことにはならないだろう。


聖剣を取り出すと切りかかっていった。

残念ながら、ここの敵に強さを感じることは出来なかったのでやっぱり広域魔法で殲滅した。

は~、またこんな感じか。

こんな事してたら邪神にはいつまで建っても手が届かない。

一人で剣を振っても強くなれる気がしない。

何とかしないとな~。


その調子でいくつかの敵が集まってる場所を焼いていった。

ワームホール的なものは発見できなかった。

これで地下施設の秘密実験とかだと笑えない。

まして、科学技術によって生み出されたものなら魔力感知は無意味だ。

これ、もしかして詰んでない?

数カ所の敵を難なく殲滅してから転移で家に戻ってマリアの無事を確認すると状況を説明した。


「それで、世界を救ったけど原因を取り除けていないからどうしようって悩んでる感じ?」


もし、仮にだけど地面を全て硬化魔法で封じてしまえば原因は無力化できる。

だけど、もし生き残りの人類がいた場合外に出られなくて結局死んでしまうし、俺が殺したことになってしまう。」


「そう、それはできないわね」


「だろ?」


「だけど、人のいる場所を探すことはできるんじゃない?」


「いや、どうやってだよ。」


「貴方って賢いのに抜けてるのね。

召喚された場所の上には廃墟があったじゃない。

つまり、地下施設があるとしても廃墟の下でしょう?

そこを掘ってみたら原因なり生き残りなんかの発見はできると思うんだけど」


「お前天才かよ!」


そういうわけで、残りの日数を生き残りの捜索と原因を封じることに費やしたわけだが、結果だけ言うと原因の穴は科学がどういうわけだか複雑に魔法陣をたまたま形成してできた空間魔法が発動していた。

自動で魔力を吸引するおまけ付きで。

魔力で干渉して吸引の紋を消し去り、放置していくと勝手に閉じた。

捜索の方はと言うと意外と結構地下施設に逃れた人類が大勢いた。

中には孤児となった男の子が悲しそうに体育座りしていたのが目を引いた。


地上を開放したし、原因も取り除いたから地上に戻りましょうと声をかけてその男の子以外の全員が地上に戻ったのだが、男の子は動かなかった。


「どうした?」


「帰る場所もないし、お父さんお母さんも死んじゃったから僕もここで死ぬんだ」


うつろな目でそう語った。隣に犬?なのか角の生えた犬のようなペットが寄り添っていた。

仕方ないな。

俺は彼を無理やりおんぶして犬を抱えると家に転移した。

マリアが驚いていたけど、事情を聞くと甲斐甲斐しく世話を焼き始めた。

その姿は正しく聖女様だった。

わんこは男の子のそばを離れなかった。


寂しいと言っていたマリアに仲間ができたわけで色んな問題が解決した。

俺は世話を任せると人工知能の元へ一人で戻った。

詳細を報告するとその内容を一斉送信すると言い、その後、残り僅かな電力を温存するために休眠に入るそうだ。

地上に人が戻ったのだから、破壊された発電施設を復旧させるだろう。

そうすればこの人工知能も息を吹き返すだろう。


家に戻るとすでにマリアに甘える男の子の姿があった。

いや、さっきまでの虚ろな目は何だったんだよと思わなくもない。

しかも、マリアに近づこうとすると間に入ってマリアを守る。

これは、恋かな?

何となく微笑ましいけど、敵意を向けられるのは結構ウザい。

わんこは俺にすり寄って頭を擦り付けてくるけど、角が痛い。

それでも、マリアが嬉しそうにしてるからとりあえず良しとするか。

全員家から出るように言って収納すると全員と手を繋いで実家に転移した。


復興には時間がかかるかもしれないけど生き残った人達には頑張ってもらいたいと願いながら。


実家に戻った俺たちはさっさとマイスペースに移動して家の使い方を説明していく。

トイレやキッチン、風呂なんかも説明して食べ物を買い込んで冷蔵庫に入れた。


次の異世界が少し待ってくれると良いな。

俺に懐かない男の子

名前さえまだ知らない状況では気まずいから、少し頼れるお兄さん風を吹かせて懐かれるまで待ってほしい。

マイスペースから出た俺は何食わぬ顔で自室に閉じこもってました感を演出した。

親には学校には行きたくない。知ってる人もいないし留年なんて恥ずかしいからと言い訳をして扉にホームセンターで買ってきた鍵を取り付けた。

これで、引きこもりライフをエンジョイしつつ、日本でのアリバイを作れるってものだ。

引きこもりはだいたい昼夜逆転生活だから、返事がなくても寝てると思われるはずだしな。

早速マイスペースに戻るとわんこもまとめてみんなでお風呂だった。

俺はちょっぴり男の子とわんこに嫉妬した。


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