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車を走らせて約三十分。レイとコウを乗せた車は、彼らの事務所である柏木ハンター事務所の前に到着していた。レイはガレージの中に車を止め、車から降りた。コウも車から降り、その場で大きく背伸びをする。
「それで、事務所に戻ってきて、これからどうするんだ? もう残り時間、二時間切ってるけど、海外とかに逃げられていたらどうしようもないんじゃ?」
あくび交じりにコウは尋ねた。レイは事務所の扉を開きつつ、肩越しに振り返る。
「実はもうある程度、目星はついている」
レイはそう言って、二階への階段近くに設置されたコートハンガーからコートを手に取ると、それを脇に抱え、二階へと上がっていった。パソコンルームへ向かうのだろう。コウもそのあとに続く。
「相変わらず寒いなこの部屋」
パソコンルームに入るなりコウは呟く。透明なアクリルで覆われたその空間は部屋というよりはそういったオブジェのようにも見えた。巨大なサーバーと無数のモニターがあり、それらの冷却の為に、二十四時間冷房が付けられている。その為、真夏でも肌寒い場所なのだ。
レイがコートを羽織りながら椅子に座り、キーボードを叩く。目の前の大きなモニターに様々なウィンドウが表示され、何かのプログラムを走らせている。
「写真を」
レイが後ろ手に催促する。コウは言われた通り、写真をレイに手渡した。
「目星ついてるって言ってたな。どういうこと?」
コウは尋ねた。レイは受け取った写真をスキャナーで取り込みながら答える。
「あぁ、大っぴらにニュースにはなっていないが、二週間程前に、中華街近くの廃墟で西洋人の死体が発見された」
レイはモニターに顔を向けたまま言葉を続ける。
「被害者は二人。身元は不明。どちらも鋭利な刃物で首を一刀両断されていたとのことだ。警察のデータベースに上がっていた被害者の顔写真を調べると、ラングファミリーの人間と分かった」
「なるほど、首を刈られたって訳ね。だけど、二週間もあればどこにでも移動出来るんじゃねえの?」
「さらにその一週間後、中華街近くの別の廃墟で似たような死体が上がった。今度は一人だが、同様に首を切り落とされている。おそらくこれも奴の仕業だ。追われる身でありながら、ほとんど場所を移動していない。おそらく今も奴はそこに留まっているはずだ。確かあの一帯のカメラ映像は……」
レイがそう呟きながらキーボードに指を走らせると、モニターに次々と監視カメラの映像が並んでいった。さらに別のモニターには日付や場所の記載が入ったデータが表示されている。
「いつ見ても気持ち悪いハッキング技術」
コウは半ば呆れたように言った。