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キーを鍵穴に差し込みロックを外す。すると突然、背後から声が掛けられた。
「おい、このダセェ日本車、手前らのかよ」
コウとレイは同時に振り返り、声の主の方に顔を向ける。背後には黒いスーツを着た三人の男が立っていた。ニヤニヤと下卑た笑みを口元に浮かべている。
「聞いたぜ。手前ら、殺しも出来ない甘ちゃんのくせにアウトロー気取りらしいな」
三人組の内、真ん中の太った男が鼻を鳴らしながら言葉を続ける。
「ファッキンジャップが、一丁前に銃なんてぶら下げてんじゃねえぞ。撃ったことあんのか?」
太った男は、明らかに見下した表情をこちらに向けていた。だが、コウは安い挑発を軽く受け流しつつ、にっこりとした営業スマイルを口元に浮かべて言った。
「問題ありません。依頼はすぐに達成されるでしょう。あなた達は連絡を待っていてください」
コウの言葉に、太った男は肩をすくめながら、背後の男を振り返る。
「どうやらこいつらファッキンジャップも分からないらしい」
太った男の言葉に、背後の男二人は肩を揺らして笑いだす。その様子に、コウは苛立たしさを覚えつつも、笑顔を崩さず言葉を続けた。
「私達は大丈夫です。私達は多くの危険を解決してきました。この依頼もそうなるでしょう。絶対にあなた達は満足するでしょう」
コウの言葉を聞き、三人組の表情が一瞬固まる。やがて声を上げて笑い出した。
「何だこいつの英語!? 教科書みたいな喋り方しやがる! ワタシタチハダイジョウブデス~だってよ!」
「ここはハイスクールじゃねえんだぞ! 宿題は他所でやりな!」
三人は腹を抱えてゲラゲラと笑う。その態度にコウも我慢の限界が訪れ、無意識にホルスターに手が伸びる。
「コウ」
コウの行動を察知したレイが低い声で言った。顎で車をさしながら運転席に乗り込んでいる。なおも笑い続けている三人組を尻目に、コウも車に乗り込んだ。激しい揺さぶりと共にエンジンがかかり、車が発進する。
脇を走り抜ける際、三人組はこちらに中指を突き立てていた。その様子にコウは眉根を寄せながら、大きく舌打ちした。
「クソッタレ、あいつらの全身をケツ穴まみれにしてやりたいぜ」
コウの言葉に、レイは淡々とした口調で言った。
「いつも言っているだろう。クライアントに手を出すなと」
レイの言葉に、コウは大きくため息を吐きながら、レイの方に顔を向ける。
「なあ、おっさん。俺の英語ってそんなに変?」
「ん?」
レイはちょうど耳栓型のイヤホンを装着しようとしているところだった。その手を止め、顔をコウに向ける。そしてしばらく視線を宙に彷徨わせた後、ゆっくりと口を開いた。
「まあ、確かに言い回しが丁寧すぎるきらいはあるな。常に、ですます調で喋っているような感じだ」
「……クソッ、どうせ学校で覚えた教科書英語だよ」
「意味が伝わっていれば問題ない。ネイティブと会話していれば、いずれ不自然さも無くなるだろうさ」
コウは不満そうな表情で頭をぼりぼりとかく。そしてポケットからニックから受け取った写真を取り出した。
「しかしおっさん。こいつ一人に一千万まで引っ張るとはやるねぇ」
写真をひらひらと振りながらコウは言った。
「ああ、ジャックな」
レイは写真を一瞥してそう言った。
「あれ、おっさん知り合い?」
「いいや。だが裏の世界では有名な奴だ」
レイは正面を見据えたまま言葉を続ける。