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「あいつが死ぬつもりだって分かってたんだろ。おっさん」
レイの運転する車の中、助手席に座るコウは、ニックの館を遠巻きに眺めながら言った。
「何で止めなかったんだ?」
「死にたい奴は死なせておけ」
コウの言葉に、レイははっきりとした口調で返す。
「無理に生き永らえさせたところで、生きる目的の無い人間などまともに働くことは出来ん。死人と変わらん」
「……それじゃあ、おっさんは何の為に生きてんのさ?」
「犯罪者どもを金に換える為さ」
「そこは正義の為とか言っておこうぜ」
「俺達は正義の味方じゃない」
「そんなことは分かってるよ」
コウは呆れたようにため息を吐きながら、再びニックの館を見る。そして静かに口を開く。
「リベンジ、果たせなかったな。勝ち逃げされちまった」
「言っただろう。生きてるものが勝者で、死人は敗者だ。俺達は未来に進めるが、あいつはここで永遠に立ち止まる」
「全然勝った気がしねぇ……」
「お前もいずれ分かるさ。死ななければな」
ニックの館から目を離し、コウは大きく深呼吸する。そこでふとポケットの中に何かが入っていることに気付く。それは依頼を受けた際にニックに渡されたジャックの写真だった。
「首狩りジャック。恐ろしい男だった」
写真を見ながら、コウがポツリと呟く。その言葉にレイはすっと目を細めて言った。
「あぁ。だが悲しい男だ」
レイとコウを乗せた車は大きなエンジン音を立てて走り去る。あとには生気のない顔をした男の写真が一枚宙を舞い、そして地面に残されていた。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
今回は流行りのAIで作成した挿絵を使ってみました。bingのImage Creatorでベースを作成し、Stable Diffusion WebUIで綺麗に整えるといった工程で作成したものです。
理想の1枚を出すのがなかなか大変でしたが良い経験になりました。その内レイとコウの挿絵も作る予定です。
全く関係ない話ですが、作中でコウが要求したジーマ。これはアメリカ産でありながらアメリカで売ってないという面白い経緯を持つお酒です。日本でも発売終了の憂き目にあいましたが見事今年(2023年)復活しました。やったね。
それでは余談はこの辺で。
また縁があればお付き合いいただけると幸いです。




