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005話 アイリス師匠

前回までのあらすじ

・主人公は転生者。第三王子も転生者で、転生前の親友。

・理術という能力バトル物の体系がある。

・お姉ちゃんズと一緒にお風呂入った

クゥリ・クライネの朝は早い。

日が昇り始めた頃に活動をしだす。

季節によって変わるが、基本的に6時には起床をしている。


王都は街頭の灯りがある分、夜も賑やかではあるが、明かりを灯すには魔石を消耗させるか油を使う必要がある。

子供にそのようなものを渡されるはずもなく、朝日と共に起き、夕日とともに活動を終えるのだ。


朝起きたら、カーテンを開けて顔を洗い、そして瞑想をする。

外気のマナを取り込み、体内を循環させて自身の魔力へと変換させる意識で呼吸をする。

この魔術基礎訓練が終わったら、光魔術での操作・精度訓練を行う。

最初に教えてもらった魔術が、この光魔術で明かりを灯すものだった。

習い始めは夜に練習し、か細い光を出すのが精一杯だったが、今では朝の日の光があっても分かる程度には光量が上がった。


色を変えたり、浮かしている光を移動させたり、様々な操作を行っていく。

教えてくれたのは、我が家クライネ商会の馬車を護衛する冒険者の一人、アイリスだった。

クロスファイアという冒険者チームで、17歳の若さで魔術師としてチームの柱を担っている。

今日は朝食後にアイリス師匠に会いに行く予定だ。


一通り魔術の練習を終え、7時になったら新聞配達で街中を走り回って体力作り。

そう一応新聞があるのだ。大きな一枚の紙に版画で印刷され、発行部数は2000部くらいだと思われる。

自分の家の近くの分を配達して、月に銅貨1枚のお駄賃程度だが今年から親公認でやらせて貰っている。

中世ヨーロッパというよりは、近代に近いのかもしれない。まだ蒸気機関は発明されていないようではあるが。


配達が終わって家に帰る頃には、8時手前になっており、母親が家で朝食の支度をしているので少しだけ手伝うことになる。

手伝うと言っても、シャロンとポーレットが調理の手伝いのほとんどをしているので、せいぜいお皿を並べる程度だが。


家族みんなで朝食を取る。

父親がさきほど自分が持ってきた新聞を読み終わると、二人の兄を連れてお店の営業準備を始めた。

それを合図に雑談を交えていた朝食は終わり、シャロンとポーレットはお店を開けるまで母さんの家事のお手伝いをし、自分もそっちのお手伝いをする。


「クゥリは二人と一緒に洗濯物をお願い。」

「分かったよ母さん」

「母さん、だって、フフッ☆」

「ママじゃないのかなー?お姉さんたちと一緒に居るから大人ぶってなーい?」


軽口を叩きながらも、二人はしっかりと手は動かしながら洗濯の準備を進めて行く。


「シャロン姉さん、洗濯物分けたらこっちにも頂戴」

「クゥリくんはしょうがないなぁ〜!そんなにシャロンお姉さまのブラジャーが気になるのかい☆」


シャロンはブラジャーをこれ見よがしに見せてくる。

その後ろでポーレットが慌てていた。


「シャロン、それ私のブラじゃない!」

「……父さんと兄さんたちの洗濯物を早く取ってね。」

「ポーレットったら、またサイズ直ししたみたいでね……」

「シャロン〜〜!」


昨日、一緒にお風呂入ったのに、そんな話されてもという気がしないでも無いのだが、そろそろ不味い気がする……。


「あんたたちー!遊んでるんじゃないでしょうねー!声だだ漏れだからね!!」

「「はーい、すみません。」」


おふざけをしつつも、無事洗濯を済ませ、バルコニーへ干しておく。

しかし、この世界の家事って重労働だな。洗濯機とか開発したい。



お店の開店準備が整ったので、お姉ちゃんズは店子としての手伝いに行った。

本来なら自分も何がしかのお手伝いをしないといけないが、王子の一件もあり、割と自由に過ごさせて貰っている。

今日はお昼前にアイリス師匠のところへ行く予定だった。


「クゥリ、クロスファイアの所に行くのかい?」


家を出ようとしていたところ、母さんが目線を合わせて自分に聞いて来た。

母さんは、俺が冒険者たちとの交流するのをよくは思っていないようだった。

嘘も付くことはできるが……。


「うん」

「……そうかい。じゃあ、アイリスちゃんたちにこのパンを届けてあげてやって。たくさん貰っちゃってねえ。」

「分かった!ありがとう母さん!」


子供には少し大きめの編み籠だったので、抱えるようにしっかり持って家を出た。

それを見送る母さんの顔には、しょうがない子だねえという言葉が張り付いているようだった。


道中、西門で外に出る手続きをする。

と言っても、常連なので書類のやり取りをするような事もない。

サッと敬礼をすると、子供である自分に笑顔で敬礼を返す衛兵のおっちゃんたち。

ここ数十年の平和さを物語っていた。

一応貴族街や一番街にもそれぞれ城壁があり、そちらの方はチェックが厳しいそうだ。


壁外に出て、路地を進む。壁外にも街はあるのだ。

市民権がある訳ではないが、有力の冒険者は壁外に拠点を持っている。

宿屋などもあり、王都の中の物価に対応できないような、流れ者には有難い場所となっている。


「クロスファイアの皆さん〜お届け物ですよ〜」


ゴンゴンと扉を叩いて声をかける。


「はいはい、どうしたのかにゃー」


猫獣人のミィナがドアを開け、自分を見下ろしてきた。


「クゥにゃー!そのパンは何にゃ?」

「お裾分けです!入っても良いですか?」

「どうぞどうぞですにゃー!」


ミィナがぴょこんと猫耳を動かし、笑顔で招き入れてくれる。

クロスファイアのギルドホームに入る。

1階は広いリビングとダイニング、奥にはトイレと洗面所に風呂場もあるというB級冒険者なだけあり、かなり良い物件だ。

1階にミィナ以外誰も居ないところを見ると、今日は休日でほとんどのメンバーが惰眠を貪っているのだろう。


「今日はまだ皆さん寝てるんですかね。早く来過ぎちゃったかな……」

「実は予定が2日もズレて、昨日戻ってきたばっかりなんだにゃー」


パンが詰まった編み籠をテーブルに置きながら言うと、ミィナがすかさずパンを物色しながら答えた。


「あ、そうなんだ。父さん教えてくれれば良かったのに……」

「着いたのも夕方くらいだったにゃー。なので、終わったあとすぐ酒場で飲んだ結果、こうなったにゃー」

「皆さんお疲れで寝てるんですね。」

「ただの二日酔いだにゃー」


酒豪のミィナは、旅の疲れも見せずに元気に一番柔らかそうなパンを見つけてかぶりついていた。


「アイリス師匠もお酒飲むのは珍しいですね。」

「アイにゃーは、あたしが少し飲ませちゃったにゃー。クゥにゃーが来るの知らなかったから、悪いことしたにゃー……」

「ミィナは相変わらずお酒強いんだね。アイリス師匠が酔っ払ったところは見てみたい気持ちもあるけど。」


ミィナにさん付けは不要と厳命されており、呼び捨てで呼ぶことにしている。

アイリス師匠は17歳だが、この世界では15歳が成人で、お酒も基本的には15歳から飲むことが多い。

基本的と言っているのは、お酒の年齢制限がこの世界ではないからだ。

ただ子供には少々お高いものなので、基本的には成人のお祝いから飲み始めるのが通例だ。


「それだったら、お酒で乱れた後のアイにゃーの寝顔でも見に行くかにゃ?」


ムフーと、楽しそうな顔をミィナがしている。


「酔い覚ましくらいは作って、持って行きましょうか」


キッチンを借りて、昨日買ったばかりというリンゴを4分の1ほど貰い、ナイフで薄く切って煮沸したお水に攪拌する。塩を追加し、魔法で冷やして酔い覚ましは完成。


ギルドホームの1階の奥には階段があり、そこから2階・3階とそれぞれギルドメンバーの個室になっていて、3階が女性メンバーの部屋になっていた。


「一番奥がアイにゃーの部屋にゃ。こんなに可愛いお弟子さんを待たせるなんて可哀想だから、起こしてあげるしかないにゃー。」


ミィナは非常に楽しそうな笑顔で、ノックするも早々に部屋の扉を開けた。


「鍵閉めろって言ったのに、不用心だにゃー」


部屋はベッド、机、衣装箪笥とこじんまりとした部屋で、部屋端には冒険の荷物であろう袋と外套などがまとまって置かれていた。

ベッドには丸まったアイリス師匠が、割とあられもない姿で眠っていた。


「アイにゃー、昨日お風呂に連れてった後に、あたしが穿かせたパンツとTシャツのままにゃー……」


窓を開けて空気を入れ替える。

涼しい風が入り込んで、アイリス師匠はふみゃ〜とか言いながらベッドで蠢いている。


「師匠、今日は出直した方が良いですか?」


僕がそのように声をかけたら、アイリス師匠はうすら目を開けてボーッとした顔でこちらを見て来た。

そして段々と焦点が合い始めると、慌てふためき始める。


「えっ、えっ、クゥリくん!?」

「あ、ミィナ!あんたでしょ!」

「アイにゃーその格好であんまり暴れない方が良いにゃー」

「えっ、あっ、きゃあ」


少し涙目なアイリス師匠が可愛い。

色白なアイリス師匠が、耳まで赤くして慌てていた。


アイリス師匠の耳は、通常の”僕ら“エルフよりやや長い。

ハイエルフの血を引いている、先祖返りなんて言い方もされたりするが、血統主義のハイエルフを崇拝しているようであまり良い言葉とは個人的には思っていない。

自称ハイエルフは森に引き篭もり、血統主義を貫き、耳が短いエルフたちを毛嫌いしている。ただ本当の自称ハイエルフたちは、アイリス師匠よりもっと耳長らしい。


酔い覚ましを持ってきたことを伝え、机に置くと一旦部屋から退避してアイリス師匠の着替えを待つ。


「クゥリくんの酔い覚まし美味しいよね。師匠としては鼻が高いですよ。」


謎のお褒めの言葉をいただいたが、師匠が喜んでくれて何よりだ。

ミィナはというと、十分にアイリス師匠の痴態を楽しんだので、すでにお暇していた。


「ごめんね。全然準備出来てなくて。」

「いえ、昨日遅くに戻られたって聞きましたし、逆に押し掛けてしまってすみません。」

「クゥリくんは大人だなぁ。ミィナだったら絶対駄々こねているのに。」


クスクスと笑うアイリス師匠は、それだけで絵になる可愛らしさを持っている。

今みたいに笑いながら、ストロベリーブロンドの髪をたくし上げて耳にかける動作が個人的にイチオシだ。


「それじゃあ、外に出て修行をしますか!」


笑顔でアイリス師匠が告げた。



裏庭に出ると、木陰で剣の素振りをしていた男が居た。


「あら、ガゼルは昨日遅くまで飲んでたと思ったのに、早いわね。」

「ああ。隣の部屋の、リーダーのいびきがうるさ過ぎてね。起きてしまった。」


ガゼルは青いバンダナをした、筋骨隆々の寡黙そうな大男で、クロスファイアのメンバーだ。


「ガゼルさんこんにちは」

「うん」


ガゼルが首で会釈で返してくれる。寡黙そう、というより寡黙だった。

ただ非常に優しい性格をしており、クロスファイアの男連中では一番仲が良く、また構ってくれる人だ。

他のメンバーはリーダー含め、取引先の息子ということで、それなりに、子供騙し程度に付き合ってくれている感があった。


2年前から交流があり、子供ながら色々と話を聞かせて貰ったり、教えて貰ったりしたのは主にアイリス師匠とガゼルの二人だった。ミィナは気が向いたら相手してくれるという感じで、何とも猫獣人族っぽかった。


「ではクゥリくん、修行の成果を見せて貰いましょうか」

一年ぶりの投稿になってしまいましたが、少しずつ進めたいと思います。

面白いと思ってくれたら、評価いただけると励みになりますので、よろしくお願いします。

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