表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/6

001話 認識合わせ

「では、まず情報の擦り合わせがしたい。」


王宮の一室で、ソファーに浅く腰を掛け、某指令のように口元で手を組みながらオレは話しかけた。


「その擦り合わせの目的を何とするか、だな。そこの認識合わせからしたい。」


相対してソファーに腰を掛ける、目の前の第三王子があごに指を添わせながら口を開いた。

そのしぐさ、昔と変わらんな。


「どのように生きて行くかを考える為、かな。抽象的になってしまうが、あまりに情報量が少なすぎてな。

 特にアキラが王位継承権がどのくらいで、どうしたいかっていうのも、ある程度オレの人生に関わって来そうだし。」


オレはおどけたように手を広げてそう話す。


「なるほど。まあ確かに、私も自分自身決めあぐねている所はあるよ。

 第三王子で文字通り王位継承権第三位、第一位と第二位は17歳と13歳で年も離れているし、お鉢が回ってくるとも思えないからな。」


第三王子が頬杖をついて、深いため息をつく。7歳がするしぐさではない。


「そう、目的や目標を定めるのに、情報が足らないんだ。王子の立場で知り得る情報というのに期待をしたい。

 議題はまず三つかな。 

 一つ、話の前提を整理する為の地理歴史。

 二つ、現状で長期的な目標・目的が互いにどのように設定しているか。無いなら無いで構わない。

 三つ、現在の魔法および技術レベルについての確認。」


「先に言っておくけど、地理的な話はざっくりと口頭だけで良いか?

 地図は戦略物資だから、現物見ながらの話だとシンイチの危険度が増す。

 あと恐らくここの会話も聞かれているから、地理の固有名詞が日本語でも発音でバレると思うぞ。」


第三王子は金髪碧眼の出で立ちに沿わない、日本語でしゃべっている。

そもそも、日本語で会話出来ていること自体がこの世界ではあり得ないことだ。この世界には無い言語なのだから。


「なるほどなぁ。人払いして貰っても、そりゃあアキラは王子なんだし、隠密みたいなのが付いてるのかな。

 先に確認しておくけど、魔法的なもので話してる内容や思考の情報を読み取るような技術はさすがに無いよね……?」

 

オレは頭をがしがしと掻きながら、そう返した。


「私が認識している限りは無いな。魔法関係の話を先にした方が良いか?」


「いや、それなら先に現在地を知りたい。

 オレはこの国の場所が、大陸なのか、島なのかがまず知りたい。隣国がある等の基礎情報はさすがに知っている。」


「私は地図と距離的な規模から推測するに、島だと思っている。大陸というには、小さいだろう。」


「どのくらいの大きさの島なの?」


「想定だが、イギリスくらいだと思う。固有名詞はアルファベットに置き換えよう。頭文字から取れば、ちょうどABCDだ。

 ダイヤモンドのマークを思い浮かべてくれ。東方領域はA国、つまりうちだ。

 西方領域にB国、北方領域にC国、南方領域にD国で、西方領域のB国と南方領域D国の合間に諸国連合という小さな国々がある。

 南方領域のD国の先には諸列島があり、国に属している訳ではない。

 あとは知っていると思うが、B国とC国の間にエルフの自治区がある。」


「大陸との国交は結んでいるとかある?」


「一応、あるにはある。ただうちは貿易をしているというレベルではないな。

 少なくとも我々の国が付き合っているのは都市国家群で、大陸がどのような情勢にあるかの把握は私は出来ていない。航行ルートがなかなか危険なようで、直接うちの国に来ることはまずない。

 貿易はD国の方が強い。

 海洋国家であることと、航行ルートが開拓されているようだ。

 D国から我が国であるA国へのルートを辿ると、戻る際に危険なルートを通るから理由が無いと直接は来ない。」


「大陸の方が工業的に進んでいる、なんてことは無い?」


「技術が一部違うとは聞いたが、工業についてはどちらかというと北方領域のC国が強い分野だ。」


「大陸間航路って現状の技術でどのくらい掛かっているか分かる?」


「いや、さすがにそこまでは把握していないな。1か月は少なくともかかるようだが。」


「そうなると、思ったより離れていないのかもなぁ……。」


「何を気にしている?」


「うーん、一言で言えば、地政学的に気にしている、かな。

 現状の平和がどの程度続くものなのかの予測を立てたいっていうのが目的になる。」


「ふむ。どういう文脈で言っている?」


「そもそも文明の発生源って普通は乾燥地帯になるんだよ。そして温帯や湿潤気候の間にステップ気候が挟まれるんだが、そこは遊牧民の地域になる。地球の歴史的経緯は、この遊牧民が実質文明破壊の原動力になっていて、そのステップ気候から大分離れた所が高度文明圏として確立しやすいという経緯があるんだ。

 地球の西欧と日本がそれに該当する。

 日本でも蒙古襲来ってあったと思うけど、遊牧民族って巨大な国を作って、広範囲に攻撃仕掛けるからね。

 なんだかんだで、この世界には馬も居るし。

 戦争要因がどのくらいあるかは、今世において非常に重要なんだよ。」


「なるほど。ただその話を聞く限り、場所的にはイギリスや日本の位置に近いのでは?」


「可能性は高そうな気もするけどね。

 正直この話は、アキラが王子じゃなきゃ、気にしてもしょうがない話だったし、分かるなら教えて貰いたいレベルの話だから、また情報が分かったら共有して欲しい。」


異世界転生ハックアンドスラッシュの感覚で居たら、いきなりストラテジー要素出てきた感じでこっちもビックリなんですよ。

まあ政治介入とか、あんまりする気はないんだけどね……。


「私からも一応言っておくが、この王子の立場でも、全ての正しい情報が手に入るとは限らないし、情報が古い場合もあるしな。

 ましてや年齢的にまだ伏せられている情報もありうる。割と聞き出している感触は持ってはいるけどな。」


第三王子が腕を組んで、ソファーにもたれ掛かる。

しかし、7歳の子供が腕を組んでも可愛らしいだけだな。


「そりゃそうだ。情報の精査はどの時代でも必要だ。ただこの世界は根拠が科学的でないものも多いからなぁ。

 情報通信手段がどの程度かも分かってないし……、技術レベルの話は後でいいや。地理的な話で言うと、隣国の動向は?」


「戦争の兆候って意味でか?」


「その通り」


「今すぐって話は無い。中長期で言えば、どこもうちの国の穀物地帯は欲しいだろうから、戦争はしたいだろうな。

 北は昔の戦争で不落砦をこっちのものにしてからは、相手側も動き辛いまま。

 西は歴史的経緯が色々あるけれども、現状は友好国としてやっていけている。

 南は流通が盛んだが……、一番面倒な所だな。海からも陸からも攻めようと思えば攻められるから。」


「北も頑張れば攻められるだろう。港あるって聞いた事あるぞ。」


「島をぐるっと一周すればできるがね。まあ日数を考えると、到着前に作戦はバレるだろうが。」


「うーん、50年平和が続いているから、そろそろ平和ボケして戦争しないかっていうのがちょっと怖いんだよなぁ。」


「私も十分あり得ると思う。50年あれば、2~3世代は変わってしまう。

 私たちも元の世界では戦争を知らない人間だしな。」


戦争の悲惨さを訴えるものは沢山溢れていたが、実感としては無いのがオレらの世代だ。


「そういえば、今日ってどのくらい時間が取れるんだ?」


迂闊だった。知りたいことが多すぎて、最初に時間配分を考えてなかった。

王子だと習い事の時間とか、時間割がきっちり決められていそうだし。


「街に居たのを早く切り上げたからな。一時間くらいは取れる。

 ただ王宮に戻ったことで、横やりが入るかもしれない。」


横やり?さっき侍女とか下がらせたじゃないか……。


「いや、妹がな。」


オレの表情を読み取って、すぐさま返してくれた。


「好かれてるんだ。良いお兄ちゃんだな。」


オレは笑って返す。


「私からすれば、子供みたいなものだけどな。」


前世ではアキラに子供が居たな。男の子だったから、女の子だと違いに戸惑ったりするのだろうか。


「よし、横やりが入る前に要点だけは確認したい。

 現状の目的・目標はある?

 オレの家は商家だけど、オレは三男坊で使い潰される可能性あるから、独立して商売でそこそこ儲けて早期引退して学者とかやろうかなって思ってた。まあ、アキラに会ってしまったので再設計中。

 あとは魔法とかの件で少し相談したい内容がある。」


「私は現状、王位に就きたいとかそういう気持ちは無い。兄さんたちが居るしね。

 ただ王族である以上、婚姻の道具として使われるだろうし、選びようがない部分もあるから。」


優秀な第三王子は街でも噂になっている。本人にその気がなくても、周りがアキラを神輿に担ぎ出す

なんていう事も十分にあり得る。オレはアキラが無事で、気に食わない事にならなければそれでいい。


「何か相談に乗れることはありそう?正直、王族や貴族の事とかさっぱり分からないけどね……。」


「はは、今度愚痴くらいは聞いてもらうさ。今はどちらかというと、知りたい事の方が多いだろう?」


こういう気遣いが上手いのは、相変わらずだな。


「すまない。魔法のことで、少し相談があってね。」


一息をついて、オレは切り出した。


「魔術の源である魔力(マナ)と、法術の源である気力(イド)を掛け合わせたら、世界が壊れかけた。」

気長に書いていきます。

会議シーンの多い某映画みたいになりかねない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ