表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/76

第74話 粛清

 声を上げた人物は旧シメオンの貴族だったディメント侯爵だ。元々はシメオンで公爵の地位だったが、シメオンが併合された時に領地管理不備により降格処分をされていた。この待遇に不満を持っていた。


 旧シメオン貴族は二つの派閥に別れていた。シメオンが併合された事が気に食わないシメオン派と併合を肯定的に捉えているヘルト派。


 その中で、ディメント侯爵はシメオン派の筆頭。そもそも急激な併合により、シメオン派がほとんどの割合を占めている。

 現在のシメオンが降伏したことに納得がいかないものが大多数いた。


「若様! 恐れながら進言させていただきます。今が絶好の機会です。ここにいるヘルトの連中を始末し、シメオンの独立を示し、覇国軍と共にヘルトを挟撃いたしましょう」


 ディメント侯爵の発言にレイジは顎に手を当てた。レイジがしばらく黙っていると鎧を着た大男が鈍い大声をあげた。


「おい! 貴様! どうゆう事だ?!」


 その様子を傍で見ていたガイルが頭から湯気を出しそうなほど顔を赤くながら大剣を構えて睨みつけた。


「元平民が偉そうにでしゃばるな」


 ディメント侯爵はゴミを見るような顔でガイルの事を睨み返した。


「!?」


 ガイルとディメント侯爵と睨み合いが始まった。しかし、長くは続かずにガイルが自分の大剣を振り上げディメント侯爵に向けて歩みを進めた。


「取り押さえろ」


 自分の周りにいた兵士にディメント侯爵が指示を飛ばしてガイルを取り押さえようしとした。しかし、取り押さえにきた兵士を軽くあしらうかのように斬り飛ばした。


「この程度でおれを止められると思うなよ」


 ガイルが暴れ出すと、陣地の外にもその騒ぎは広がり、それが混乱となり動揺が広まった。孤軍奮闘するも、後から来たグランツの加勢もあり取り押さえられた。


「全く、これだから平民はダメなのだよ」


 ディメント侯爵はグランツによって取り押さえられたガイルに対して嘲笑うと、ガイルは今すぐにでも射殺すように睨みつけた。


「おい、何しやがるグランツ。今すぐに話しやがれ!」


 ガイルは視線をすぐに自分を取り押さえているグランツに視線を送ったが、目が合うことはなかった。レイジは取り押さえられたのを確認してからその場にいた旧シメオンの貴族を集めた。


「ディメント、この提案はここにいる旧シメオンの貴族の総意か?」


「そうでございます。そしてこれが覇国からの密書でございます。成功すればルーデンス地方の安堵が示されております。我らがシメオンへの忠義にお答えください」


 レイジがディメント侯爵に確認すると、その場にいた旧シメオンの貴族はディメントの返答とともに力強く頷いた。


「そうか。ご苦労だ。交渉は難航しただろう」


「はい。相手も最初は渋っていましたですが、私が直接交渉し現地を取って参りました」


 労いの言葉を掛けられたディメント侯爵は今すぐにでも飛び跳ねそうな衝動を抑えてゆっくりと頭を下げて礼をした。


「とのことだ。皇王陛下」


 しかし、ディメント侯爵の喜びはすぐに絶望へと切り替わった。素早く顔を上げてレイジの顔を見ると、その顔は軽い笑みを浮かべているだけだった。

 そして、馬の蹄の音ともに颯爽とディメント侯爵の前にカインが現れた。


「よくやったシメオン卿」


 前線に行ったはずのカインが乱入してきたことにより、旧シメオン貴族の表情は凍りついた。



 

 昨日の夜、会議が終わり各々明日に備えるため解散した後、


「カイン。入るぞ」


 レイジはカインの天幕に一言言うと返事を待たずに無断で入室をした。


「どうした? レイジ」


 カインは突然入ってきたレイジに驚くこともなく体の向きを変えた。


「明日の朝食配給準備を完了させておいた。それより提案だ。旧シメオン貴族に内通者がいる。そこで、本営に俺の言った人物とガイル、周辺にグランツを配置しておいてくれ。戦争中に粛清する」


 レイジは報告を軽く済ませると、要件だけを簡潔にして伝えると、カインは納得したように頷きすぐに返答した。


「いいだろう。お前を信じよう。作戦は?」


 返事の速さにレイジは驚いた後に笑みをこぼしたがすぐに笑いを抑え淡々とした様子で話を始めた。


「まず、本営には俺たちがいてカインが聖剣を使いに前線に行く時に兵権を俺に任せるように言う。そして、お前は前線に行かずに近くで待機し、その場所で指示を飛ばしてくれ」


「あとは、俺がうまくやる。お前は最後に合図を送ったタイミングで本営に乗り込んでくれればいい」


「わかった。合図は?」


「外の警備をしてるシメオン貴族を中に招集する。そのタイミングで動けばちょうどいいだろう」


「うまくやれよ」


「ああ」


 話が始まるとトントン拍子で話は進み、ほんの僅かな時間で話が決まった。周りから見れば報告をして、終わったように感じるほどの僅かな時間だった。







 ディメント侯爵達は状況がわからずにその場で立ち尽くしていた。そして、気づいた頃には旧シメオン貴族はその場でヘルトの兵士にその場で包囲されていた。


「なぜですか若様? 折角、ルーデンス地方の主人になる機会を!」


 青筋を立てて大きな声でディメント侯爵が叫び出した。しかし、すぐに周りを囲んでいた兵士が裏切りに加担した旧シメオン貴族を取り押さえていった。

 レイジは捕えられた元配下達に近づいて呆れた顔で見下ろした。


「それは良くて3日だけだろうな。この地方は誰もが狙っている。覇国、帝国、王国この三つを同時に相手取ることはできないだろうな」


「ならば、なぜヘルトは?」


 なおも食い下がるディメントに対して、首を振って答えた。


「勇者、英雄の血筋。ヘルトの軍が強いのは英雄の一族ヘルトの民という自負。その誇りが強さを生んでいる。お前が家族であることを誇りに思う。それが民全員に及んでいる。これでわかるな?」


「………」


「そもそも、シメオンの時に俺の親父の方針に難癖つけてたやつが偉そうに忠義を語るな。これ以上は時間の無駄だな。陛下どうしますか?」


「全員殺せ」


 カインの号令とともに囲んでいた兵士が一斉に剣を振った。反乱に参加した貴族を有無も言わさず切り裂かれていった。


 カインはすでに命令書を待った伝令を昨夜送っており、速やかに粛清ができる手筈を整えていた。


「ったくよ、人が悪いな」


 取り押さえられていたガイルがカインに対して軽く悪態をついた。


「まぁ、仕方ないだろ。おまえが暴れない方がおかしいからな」


「………、それもそうか」


 カインの説明を聞いてガイルは納得したように頷いた。


「ああ、だが呑気にそんなことを話してる場合ではない」


「今度こそ、出るぞ。レイジ指揮を取れ」


「了解」


「カール伯爵とヴァイス伯爵はレイジ卿の補佐をしろ」


「「はっ」」


「後は任せた。ガイル、騎士団を連れて付いて来い。仕事だ」


 カインは馬に乗り、一人で前線へとかけていった。


「おい、一人で行くな! リッター男爵、騎士団を連れて早く追いかけろ」


 一人でかけていったカインを見て慌てて、ガイルに指示を送るが、カインの後を追うようにガイルが単騎で飛び出していった。二人の行動にレイジは驚愕した?


「………。くそ、騎士団半分は入り口で集まり、走って追いかけろ。指揮は副騎士団長に任せる。リッター男爵に追いつき次第、その場で指示を仰げ。残り半分は急いで馬を集め、先行した騎士の分の馬を連れて急行しろ」


 取り残された騎士団に指示を送るが、そのあと息をつく暇もなく、粛清の際に止まっていた前線の確認、各部隊の指揮、敵軍の動き、物資の備蓄管理などの指示を素早く行った。


 一通り指示を飛ばし終えて、落ち着くと、葉巻を懐から取り出して一服しながら悪態をついた。


「主人も主人だが、部下も部下だな。これから、先が思いやられるな」


 前線が急激に光に包まれ始めた。レイジはその光を見て感心したように頷いた。


「さすがは伝説の剣だな」


 カインが聖剣を使用した事により戦局は大きく動き始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ