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第70話 第二皇子の逃亡②

 ペルダンとエクシルは、家が数個分の空き地に着くとその場を埋まるほどの兵士が待機していた。二人が到着すると、全員がペルダンにむけて膝をついた。


 その場に集まった人種は様々で獣人、ドワーフ、人間などが混在していた。


「これより、オパール選帝侯領まで向かう。総員、ペルダン殿下を護衛する。急いでここを離れるぞ」


 エクシルの低く落ち着いた声で指示を出すと、兵士が2列になって移動を開始した。この場で急いで馬を乗り換えたペルダンとエクシルは列の中段に入った。


「城門から出るのか?」


「はい。すでに手を回しております」


 馬で進む中、ペルダンの質問にエクシルは一つずつ丁寧に答えた。質問の回答を聞くたびにペルダン少し安心した顔を見せたが、後ろから詰め寄る護衛を見てすぐに顔色は険しくなった。


「報告です。後ろからかなりの速度で()()()が王かけてきています」


 報告を聞くとエクシルが素早く後ろを振り向いた。その先には銀色の仮面をつけた者が馬よりも速い速度で追いかけてきていた。


「絶影か、流石に早すぎる。だが、それも想定通りだ。手筈通りに動け」


 列の後ろにいた者達は、エクシルの命令を聞くと、トカゲの尻尾を切るかのようにその場で止まり反転した。追撃に来た絶影を正面から迎えうった。


 絶影は持っていたナイフを一人に投げるのを合図に次から次へと兵士を虐殺し始めると、護衛を倒しながらペルダン達が逃げる方向を確認した。


「簡単に進めると思うなよ」


 一人の男が絶影の視界に入り込んだ。不敵な笑みを浮かべながら絶影に斬りかかった。絶影が軽々と避けたところに見計らって複数の矢が飛びんでいくが、余裕のある足取りで回避した。


「なかなか面白い。これが俗に言う鬼ごっこか」


 絶影は大きな声で笑いながら仮面を押さえた。絶影が引いた笑い声を出しながら笑っているのとは対象的に、兵士が激昂しながら絶影に剣を突きつけた。


「ふ、ふざけるな!」


 絶影は激昂する兵士を無視して奥にいるペルダンが逃げる方向に目線を送っていた。


「さあ、この私からどれほどまで逃げられるのだろうか」


 絶影は突き立てられた剣を素早く避けてから、兵士の喉を掻き切った。そして、次々と兵士を殺し出した。


 一連の光景を見ていたペルダンは苦虫を噛み潰したような顔をしながら目に涙を浮かべた。


「………すまない。こんな時のためにお前らを救ったわけではないんだ」


 ペルダンの様子を見たエクシルが真剣な顔で力強い大きな声をあげた。


「殿下、貴方が居なければ私たちは、帝都の路地裏でもっと早くに野垂れ死んでいました。ここにいる全員が殿下に救われたものばかりです。我々が死んでも、殿下が帝国を世界を変えてくださると信じております」


 話を聞いていた周囲の兵士たちはペルダンを見ながら力強く頷いた。城門に着くとエクシルが大きな声で指示を出した。


「城門で半数を足止めとして使う。できる限り時間を稼ぐんだ」


 エクシルの指示に、半数の兵士たちが城門を越える前に反転した。ペルダンが城門を越えると、門が徐々に締まり始めた。


 涙で滲んだ目をペルダンは拭ってから兵士たちに向けた。城門が閉まり切るまで兵士たちの力強い背中を見届けた。


「お前たちことは忘れない。………ありがとう」


 ペルダンは正面に向き直り、振り返ることなく帝都の外へと駆け抜けていった。




 ペルダンたちが帝都から出てから、かなりの時間が経った。


「ひとまずは撒けたみたいだな」


 ペルダンは後ろを振り向き、絶影が迫ってきてないことを確認した。


「そのようですね。今のうちに休憩しておきましょう。全員止まれ、しばし休息を取る」


 ペルダンの話を聞いたエクシルは号令をかけて、全員を休ませた。


「エクシル、城門を抜けた時にはもっと人数がいた筈だ。残りはどうなった」


 エクシルは周囲を見ると、20人ほどしかいなかった。城門を抜けた時には50人ほど居たのをエクシルは覚えていた。


「今、最短ルートでオパルス選帝侯の領都に向かっています」


 ペルダンはエクシルの報告を聞いてから、顔を歪ませたが、自分の顔を軽く叩いて大きく深呼吸した。


「そうか………、この後は?」


 エクシルは周囲に目をやってから、小さくペルダンの耳元で囁いた。


「わかった。予定通り領都を目指すのだな。それならば、安心だ」


 ペルダンは内容を聞くと、納得したように頷いた。エクシルはペルダンの声に対して慌てて周囲を再度確認した。


「殿下、少し声が大きいです。聞かれていればどうするのですか」


「追っ手は撒いたのだから問題ないだろう」


 ペルダン達はその場で小休憩を取り始めた。




「絶影様。報告を申し上げます」


 帝都とオパルス選帝侯の領都を結ぶ街道の少し外れた場所に、たくさんの死体が溢れかえっていた。その中心に絶影が佇んでいた。


「なんだ?」


 絶影は報告に来た部下の方へとゆっくりと振り返った。


「もう一つの部隊にペルダン殿下がおりました」


「そうか。報告はそれだけか?」


 絶影は報告を聞くと、部下に鋭く静かな声で問いかけた。


「そうか。いえ、話を聞いたところ、予定通り()()に向かうと言っておりました」


 報告に来た部下は急いで次の報告をすると、絶影は仮面に手を当てて考え出した。


「………なるほど。急いでヤーデ選帝侯領の領都に急いで向かい領都周辺で待機するように、帝都にいる部隊に伝えてこい。オパルス選帝侯領にいる部隊はそのまま待機だ」


「かしこまりました」


 報告したものは絶影の命令を聞くとすぐに行動に移し、その場から離れていった。


「面白い。だが、この俺からは逃げられんぞ」


 絶影は軽く笑ってから、ヤーデ選帝侯領に向かって駆け出した。東の空が徐々に明るくなってきていた。

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