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第68話

 ルーデンス地方の西部に陣取っている覇国軍の天幕に伝令が駆け込んだ。報告を聞くとライオンの獣人は、牙を剥き出しにして笑った。


「そうか」


 リカルド・ホードは椅子から立ち上がり、手を前に突き出した。


「動かせるだけ兵を集めろ、ここで迎え打つ。ヘルト軍に向けて、準備しろ」


 リカルドの号令とともにその場にいた将官達は一斉に天幕から外に出ていった。そんな中、鹿の獣人がリカルドに近づき膝をついた。


「殿下。今蛮族討伐に向かおうとしている部隊は?」


「そうだな。いいことに気づいたな、本隊に編入しろ」


 リカルドは将官の質問にすぐに答えた。主人の答えに質問した将は驚きを隠さず目を見開いて重ねがけに質問した。


「殿下! それでは蛮族に襲われている民や村はどうするのですか?」


 鋭い目つきで部下を睨みつけた後に、リカルドは目を閉じてゆっくりと横に首を振った。


「そんな奴らより戦いだ。この戦いに勝たねば、そいつらは手に入らん。手に入るかどうかも分からんようなものを守る必要はない」


「ですが、殿下」


「くどいぞ。貴様はヘルトに勝つことだけを考えろ」


 食い下がる部下に大きな声でリカルドが一喝した後に、大剣を勢いよく振り下ろし首元で止めると、鋭い眼光で睨みつけた。


 鹿の獣人はそれでもなおリオードを見ていた。リカルドが目を覗き込むと閉じる事なくリカルドを見つめていた。


「ふん、いいだろう。ならば、500人だけ貴様にやろう。それで好きにしろ」


「……あ、ありがとうございます」


 予想外の言葉に鹿の獣人は驚き声を失ったがすぐに取り直して感謝を述べた。


「そうだな。副官はあそこにいるフロガを連れて行け」


 リカルドは天幕の入り口で立っている狼の獣人に指を指した。


「かしこまりました。それでは行って参ります」


 急いで天幕の外へ出て行く鹿の獣人を見ながらリカルドは冷ややかな笑みを浮かべながら見送った。


「リカルド様、なぜ私を?」


 指を刺された狼の獣人はリカルドに近づくと、頭を掻いて首を傾げながら尋ねた。


「万が一、ヘルトに負けた際にはこの紙に書いてある指示通りに従え。あとは、この勅書を見せればあいつも黙るだろ」


 リカルドは一枚の紙を渡した。フロガは内容を見るとゆっくりと口角を上げ邪悪な笑みを浮かべ膝をついた。


「さすがはリカルド様」


 リカルドはフロガの反応を見て、満足そうに頷いた。


「それと反乱軍討伐隊を指揮しているルブラを呼び寄せろ。その代わりとしてウォルドに行かせるように伝えとけ」


「かしこまりました」


 覇国軍の行動は早く、兵士を展開し、ヘルト軍への迎撃体制を整えた。瞬く間に整え始めた。




 ーーー




 覇国軍に向かっている最中にカイン、レオン、レイジのは馬車で作戦を考えていた。


「奴らはこの前燃やした森から少し離れた場所で陣取っている」


 カインがバツが悪そうに地図を見た。レイジは地図に目を向けると目を閉じて頭を抑えた。

 馬車の進む音だけが響いている。眉を顰めながらレオンが二人の肩を叩いた。


「まぁまぁ。まずはどうやって勝つかでしょ」


 カインは笑い掛けてきた青年に笑い返すと、力強く立ち上がった。


「そうだな。まず、兵の損害はなるべく減らす。減りすぎると帝国と王国がこっちに攻め込んでくるからな。あと同じ理由だが、時間をかけるのも無しだ。今俺たちが要求されてるのは素早く圧倒的な勝利だ」


「簡単に言うな。今までの敵は所詮雑魚だったが、今回は訳が違うんだぞ。少なかず今までの奴らとは一線を画すぞ。軍の質、指揮官の数、大軍の経験、固有軍どれをとっても俺たちより高い」


 簡単に言うカインに向かって、葉巻を咥えた男が嗜めるように言い聞かせる。


「それだけか? 余裕だろ。俺にはお前らがいる」


 レイジの言葉を聞くと、カインが嘲笑いながら自信満々に答えた。他の二人は、驚いた顔した後に、互いに見合うと不意に笑い出した。


「ああ、任せろ」

「はぁー、しょうがねーな」


 カインの言葉に対する二人の返答は様々だが、二人とも面白そうに笑っていた。


「じゃあ、戦略を練るぞ」




 ーーー




 3人が戦略を考えている馬車の後ろで二つの騎士団が追従していた。グリフォンに乗っている者が前に馬に乗っている者が後ろに分かれていた。その先頭に二人の男が並走していた。


「おい、グランツ。グリフォンに乗れてるのは5人しかいねぇのか?」


 ガイルは後ろに振り向き残念そうな顔で見ていた。


「まったく、これでもよくやった方だぞ。この一ヶ月前は誰も乗れてなかったんだからよ。まぁ、ブレイド公爵様なら100人はいたかもな」


 グランツは騎士団の創設を任されてからは毎日のようにグリフォンとコミュニケーションを取りしっかりと信頼関係を築いた。


 ある程度意思疎通ができるようになるとその後は毎日、日が登って日が暮れるまで部下の指導を行なっていた。カインから送られた人員は貴族の次男や3男以降が多く、爵位を継承でき無い者がほとんどだった。


 彼らの殆どは平民になる予定だったが、騎士団に入ることで今と同じ暮らしができるのだからやる気はあった。しかし、簡単にグリフォンを手なづける事は出来ず、本当に才能のあるものしか期限まで間に合わなかった。


「じゃあ、今回は後ろで俺が活躍するのをしっかりと見てろよ」


 ガイルが枯れた笑い声を上げながら、グランツの肩を叩いた。急に叩かれたグランツは大勢を崩しそうになるも何とか体勢を保った。


「そんな簡単に行くと思うなよ。俺はこれだけでも十分に活躍する」


「そうか。楽しみにしてるぞ。我が親友(ライバル)よ」


 ガイルは、グランツに向けて拳を伸ばした。グランツは体勢を立て直すと、伸ばされた拳に拳を合わせた。


「ああ、お前こそな」

 現在、第1話から順に添削しています。この添削で物語は変わりません。少しでも読みやすいようにしていこうと思っています。


 ここ最近は、投稿していませんでした。以前のような投稿スピードで投稿はできないですが、これからはなるべく間が開かないように投稿していきたいと思います。


 ここまで読んでいただきありがとうございます。これからも楽しんで頂けたら幸いです。

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