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第6話 襲撃③

 すぐさまカインの懐へとアサシンのリーダーが飛び込んだ。カインは飛び込んでくるタイミングに合わせて剣を振り応戦した。


 アサシンの武器はナイフに対してカインの武器は長剣なので、懐に潜り込まれると分が悪い。その上、室内なので思う存分振るうことができない。


 カインは躊躇いなく相手に剣を突きつけた。


「全く聞いてた話より全然強いじゃないか」


「誰からその話を聞いたんだ?」


「言わなくてもわかってるだろ」


 2人で軽口を叩きながら一進一退の攻防を繰り返す。リーダーが懐に潜り込もうとするのに合わしてカインは剣を振りそれを防ぎ続けた。


「そうだな。少し話でもしようか。ひとまず、お前の名前でも聞こう」


「俺の名前か……。名前は無い。そうだな、じゃあクロと名乗らせてもらおう」


 クロは低く踏み込み、カインの長剣をいなした。そして、勢いのままナイフでカインの腹に突き刺そうとした。


 カインは狙っていたかのようにクロの踏み込んだ足を蹴り、バランスが崩れた所を殴り飛ばした。


「痛えな。いいところの生まれだから騎士みたいに綺麗な戦い方をするのかと思ったのによ」


「まあ、いろいろあってな」


 クロは殴られた頬を押さえながら、マスクスカーフ越しでもわかるような薄笑いを浮かべながら立ち上がった。


「お前、ブルートが雇った暗殺者だろ」


「なぜそう断言できる? 帝国かもしれないだろ?」


 カインの問いに、クロはすっとボケたような声で反応した。


「帝国ならいちいちこんな弱小国家群を気にしてるわけないだろ」


 カインは、クロの反論に対して真面目に答えた。カインの反応に突然クロは構えをやめて、大声で笑い始めた。


「間違いない確かにそうだな」


 クロは少し黙ってから、カインの目を見た後にカインに向かってナイフを構えた。


「それを知って結局お前は何が言いたい?」


「今から俺の部下にならないか?」


 カインの突拍子もないセリフにクロは目を見開いた。


「はあ? 今俺はお前を殺そうとしてるんだぞ?」


「それがどうした? お前はあの害虫に雇われただけだ。俺ならお前をもっと上手く使える。今、俺の部下になると決めたなら俺を殺そうとした事は不問にしてやろう」


 クロが周りを確認すると、連れてきた暗殺者はすでに制圧されていた。


「お前の部下は精鋭ばかりだな。2倍も人数がいたのに負けるとはな。それとお前は何するつもりだ? 弱小国家でも束ねるつもりか?」


 クロは苦笑を浮かべながら武器を捨て、両手を挙げるとその場に座り込んだ。


「笑わせるな。ここら辺を統一すれば強くはなれるだろう。その程度で俺が止まると思うな。世界統一だ。そこを間違えるんじゃねえぞ」

「「「うぉっーーーーーー」」」


 カインが自分の夢を語ると外からは大歓声が聞こえて来た。カインは慌てて窓の外を見るが、満足したように笑ってからクロを再びみた。


「で、どうする?」


「いいだろう。お前に従ってやろう」


 クロはカインにほくそ笑むと膝をついて頭を下げた。




 ーーーーーー




 レオンはカインと別れた後、すぐに地下室への通路を見つけると、躊躇いなくその通路に入った。レオンは通路を進んでいったが全く警備兵がいなかったが、連なる牢屋には大勢の人が入っていた。


 牢屋の中にいるのは亜人が中心であった。獣人やドワーフ、エルフと亜人が多かった。このことからここにいる人は帝国に送られるのだと、レオンは容易に想像できた。


 理由は簡単で、覇国は亜人至高主義で人間が奴隷として使われているのに対して、帝国は人間至高主義で亜人が奴隷として使われているからだ。

 しかし、ヘルトでは初代国王ハヤト・タカダ・ヘルトが奴隷を禁止を法律として定めている。そのためこの国では亜人だけでなく、少数だが魔族なども暮らしている。


 この中に共通しているのは、全員が身体中に傷を負っており、全員が痩せこけていた。レオンは湧き上がる怒りを落ち着かせるために一回ゆっくりと深呼吸してから声を出した。


「今すぐ全員牢屋から出せ。捕まった人達は兵士の指示に従って逃げるんだ」


 レオンの指示通り傭兵たちは牢屋の扉を壊していき、中にいる人を一人ずつ外に出していった。


 その後、レオンはすぐに奴隷の保護を終えると、全員を連れ出して屋敷の外を出た。屋敷の敷地から出ようと門を目指すとそこには男が一人立っていた。


「おい、待て。貴様らどこに逃げるつもりだ」


 宝石をたくさん付けて丸々と太った騎士のような男がレオンたちが敷地の外に出るのを阻止した。救出した人達は全員顔が蒼白になり体を震わせ始めた。


「生意気にも脱走なんかしやがってこれは罰を与える必要があるな」


 太った男が怒った顔で救出した奴隷たちに近づこうとするところをレオンが前に立ちはだかり、鋭い眼光でその男を睨みつけた。


「お前は誰だ? 誰の命令でこいつらを逃してる」


「ブレイド侯爵家長男レオン・ブレイドだ。ヘルト四法を反した罪で貴様を殺す」


「小僧!」


 レオンが名乗ると、豚のように太った騎士が怒りをあらわにした。そして、その男は剣をレオンに向けて、高らかに声を上げた。


「俺はブルーノ家の騎士長フォアだ。騎士として貴様に一騎討ちを申し込む」


「いいだろう」


 フォアが一騎討ちを申し込むとレオンはすぐさま応えた。二人が構えると時が止まったかのように静まり返った。


「行くぞ!」


 フォアの掛け声に、レオンが応える形で二人の一騎打ちが始まった。


 フォアは体格を生かして、レオンへスピードをだんだんと上げていきながら突撃した。レオンは避けるそぶり見せずに相手の突撃を正面から迎え撃った。


 フォアは間合いに入ると全力で剣を縦に振るった。レオンは剣を斜めにして、渾身の一撃をいなすと、フォアが振り下ろした隙に、剣を振りフォアの首を打ち切った。


 あっという間の決着に誰もが静かになったところをレオンは剣を高らかに上げた。


「このレオン・ブレイドが、ブルート家、騎士長フォアを討ち取ったぞ」


「「「うぉーーーー」」」


 レオンが一騎打ちに勝つ事により、その場にいた大鷲の剣が一斉に雄叫びを挙げた。


「撤退するぞ」


 レオンは騒がしくなりそうな場を素早く制して、次の指示を飛ばした。その命令を聞き、大鷲の剣は奴隷を連れてすぐに撤退を開始した。


 後を追うように、カインもクロを拘束してからブルート公爵邸を後にした。

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